毎日遊んで家政夫をいびって。
パプワといつも遊んで、そんな楽しい暮らしを毎日過ごしているロタロー(コタロー)には、現在ちょっとした我侭があった。
それは、パプワの背が低い事で。
別にそれ自体は悪くもなんともないのだが、いかんせん並んで歩くと、ロタローはパプワの頭頂部しか見えないのだ。
友達の顔が見れないなんて、ちょっと寂しい。
パプワがどんな物を見たとき、どんな表情を浮かべるのかが知りたいのだから。
なので。
「リキッドのへそくりで、タケウチくんに体が大きくなる薬を作ってもらったよv」
「2行前のほのぼのした展開どこへ、って発言したなオイ」
「大丈夫。不幸なのはお前だけだから」
ロタローは非常にほくほくした顔で、小瓶を掲げた。それこそ、作ってもらった薬である。
透き通った青緑のガラスで、真ん中が窪んでいた。
リキッドは思った。それ、ラムネじゃねーの?
「家政夫ー。蓋のビー玉取ってよ」
やっぱりラムネじゃねーか!!
「つーかパプワ。お前本当に飲むのか?」
「ボクは別に構わんぞ。ずっと、って訳じゃないんだろう?」
「うん、一日だけ」
パプワの問いに素直に答えるロタロー。
その100分の1でも自分へ向けられたらなぁ、とリキッドは当てにもならない事を思う。
(それにしても、パプワも大概コタローに甘いよな)
同年代だからなのか、シンタローの弟からなのか。
コタローと居る時、明らかに自分には見せてなかった顔がある。
しかしそれを、コタローが客観的に見る事は適わないだろう。そう思うと、なんだか皮肉げな感じすらする。
その事もあり、パプワを多きくしたいロタローの理由もあり、パプワが嫌でないのなら、リキッドには反対する動機はない。
「ほいよ、パプワ」
「うむ」
しゅぽん、と蓋を開け、シュワシュワいってるその薬を手渡す。やっぱり、どう見てもラムネではなかろーか。
パプワはそれを、思い切りよく一気に飲み干した。
リキッドとロタローは少し緊張した面持ちで、固唾を呑んでパプワが大きくなるであろう瞬間を待った。
待った。
待った。
待った。
変化ナシ。
…………………
「……失敗?」
10分くらいして、リキッドが出した結論はそれだった。
ロタローはうーん、と唸り、
「効果が現れるまで、少し時間がかかる、って聞いたんだけど……
どれくらいかかるかはちょっと解んないってさ」
それからしばらくパプワを見ていたが、やがてロタローも「これは失敗だろう」という意見に至った。
「ごめんね、パプワくん」
「別に気にしてないぞ」
そうして、いつもの通りの一日が始まった。
そんな事を、すっかり忘れ、住人の入れ替えもあったある日の朝だった。
リキッドの朝は早い。朝食を作るから。
ふあぁ〜あ、と多きな欠伸を一つして、両頬を軽く叩き覚醒完了。
その後服を着て、これは無意識に寝ているであろうパプワを見やる。
かつてはパプワとチャッピーを、すこし前まではそれに加えてコタローも。
そして今はシンタローが並んで寝ているのを、見る。
掛けた布から、4本の足が出ているのに微笑ましさを覚えた。
……4本?
何気なくスルーした光景に、リキッドはちょっとん?となった。
確かに、前はその光景は見れた。が、それは並んで寝ていたのがロタローだからで。
シンタローの身長に合わせて掛けたのなら、とてもパプワの足は見れないのではないか?
………………
リキッドは妙な悪寒に襲われた。
自分の見えてない所で確実に動いていた時限装置を見つけたような、そんな感じだ。
リキッドは恐る恐る近寄る。
シンタローが寝ていて、隣のパプワは頭の先っちょしか見えない。
そーっとシーツを捲ると。
………………
「ああああぁぁぁぁあああああああ----------!!!!」
「だ-----うっせぃ!!!」
絶叫を上げるリキッドを、間髪目覚めたシンタローが間髪置かずに殴って飛ばした。
一体何なんだ朝っぱらから、と起き上がろうとして、自分の足に何か絡まっているのに気づいた。
「何----足?」
そう、足である。
シンタローは子供と犬と一緒に寝ていた。
犬の足ではなかった。
なので、子供の足だ。
足だが。
長い。
いや。
足だけが長いんじゃなくて。
「朝っぱらから煩いぞ、お前ら」
いつもより、少しだけ低い声。
ギギ、ギギッギ、と壊れた玩具みたいな動きをし、シンタローはそっちを見た。パプワの居る方向。
不愉快な目覚めを迎えたパプワは、少しご立腹の様子だった。
そのパプワは。
コタローと背の高さがあまり変わらない、年相応の10歳の身体付きをしていた。
「あだだだ…………」
頭を強打したが、首は無事だったので、リキッドのダメージは軽く、回復も早かった。
しかし場所が場所だったので、ちょっと混乱している。
え、と、何で俺こんなに頭が痛んだ?
あぁ、そうだ。シンタローに殴られたんだ。
何で殴られたんだ?大声をあげたからだ。
どうして大声をあげかたというと-----
成長したパプワを見たからだ。
………………
「パッ、パッ、パッ、パプワ----------!!!!?」
この雄たけびはリキッドではない。シンタローだ。
「どうした。馬鹿みたいな大きな声を出して」
「すっかり俺好みの美少年に………!!」
「何で南国4巻に戻ってるんだ、おまえ」
冷静なツッコミだ、パプワ。
そのパプワの前で凝固したように動かないシンタローに、これはいかん!とリキッドは本能で動く。
「落ち着いて下さいシンタローさん!興奮しないで鼻血出さないで!」
「バカヤロウ、誰が鼻血を/ドババババ」
「セリフが途切れるほどに大出血!!」
ダメだ。
今のシンタローに、このパプワを置いたらダメだ。
このままではシンパプで18禁になってしまう!
そうしたら某純情度の高い甘栗向けないハブの日産まれの人にシンパプも読めない!と会った早々首を絞められてしまう!!(超内輪ネタだから)
幸い、シンタローの意識も視線も、パプワに注がれている。リキッドは素早く回り込んだ。
「パプ…………」
シンタローの手がパプワに伸びる!!
「ほのぼの路線推薦--------!!!」
よくわからん事を述べながら、リキッドは空中スライディングしつつパプワをがっちりホールドし、そのままシンタローから遠ざけた。
無論それで黙っていたら、シンタローでない。
「テメー!リキッド!どういうつもりだよ!!」
「パプワの貞操とこの島の倫理の為です!」
「何、人を危険人物呼ばわりしてんだよ!!」
「そう言いますが、シンタローさん……そんなにしょっちゅう鼻血を流出する人を常人と認証したら、世界はどうなりますか………?」
「ゆっくり語るなよ。怒鳴られるより腹立つな」
「おい、リキ………」
パプワはシーツに巻かれて攫われた。布の中でじたばたと暴れる。
リキッドはパプワに耳打ちした。
「すまんパプワ、後でどれだけ殴ってもいいから、黙ってちょっと俺に担がれてくれ!」
「…………?」
リキッドが凄い真剣に言うので、パプワもいつもみたいにパンチ一発で事を片付けずに出来ない。
リキッドは(そんなに良くない)頭の中で、必死に策を巡らせていた。
鼻血を出していてもガンマ団総帥だ。どうこの窮地を切り抜ければ……!!
そのシンタローは、ぶちぶちと切れていた。
パプワは掻っ攫われるわ、何か耳打ちしてるわ。
これでもか、ってくらい神経を逆撫でされている。
「リキッド……お前何を--------」
セリフ半ばで、シンタローはばったりと倒れた。
原因は。
鼻血による出血多量で間違い無かった。
次メージに続く!!
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