なるほどね・2




「ぼっちゃん、符の整理ですか?」
 床にずらっと今まで貯めた符を並べて、その前でぼっちゃんはまるで悩むみたいに腕を組んでいた。
 素人目にはただの短冊にしか見ぇねえそれは、妖怪たちにとっちゃまさに脅威。
 取り込み、従者とさせられるモノ。
 かくいう俺もその1人だけど。結構頻繁に外出てるからなぁ、そんなに窮屈でもない現状。
 俺がそう尋ねたら、ぼっちゃんは少し驚いたような顔をして、「まあな」と言っただけ、符を仕舞う作業は隠すようにも見えた。
 はっきり言って俺は今、非常に暇だ。
 さっきまではそうじゃなかったんだけどな。そう、飛天のヤローが居なくて、ぃよっしゃ天馬で遊べるぜー♪て意気込んでたのに……天馬まで居ないでやんの。
 この2つを結びつけて弾き出される答えは、あいつら”空の散歩”に行ったんだ。
 ちぇー。俺だって、俺のバイクだって空飛べるのに……って、まぁどっちかっつーと”跳ぶ”って感じだけども。
 以前、まさにさあ、今から行くぞ、な場面にあって(曲りなりにも空の魔王に我が儘言えて、しかも叶えてもらってる、つー点に置いて、不動明王でなくても俺の知る限り最強の餓鬼だな、あいつは)、つい悔しさから「何とかと煙は高い所が好きなんだよなー」とか言っちゃったら、当の本人には意味が通じてなかったものの、飛天夜叉王にはばっちり通じてて……
 んまぁ、この事については忘却の彼方に葬り去る事にしよう!
 ふと横見れば飛天が居ない事で静流がぎゃーすか騒がしい。
 うわ、俺今気がついたよ。そこまであのガキンチョに入れ込んじまってんのかい!!
 だって……仕方ねぇかな。
 あいつの側って何かいいんだよ。
 本当はこんな風に思っちゃいけねぇんだけどよ。
 俺は妖怪であいつは不動明王。妖怪の天敵。
 けどそれがどうしたって気持ちにさせるんだよ、これが。
 不動明王に味方するのが何よりも重罪、て事は知ってるけど、俺よく考えたら2回程あいつ助けて、しかもスキルアップに協力もしてる。うーん、皆も気づいてるかどうか……
 ま。それこそどうでもいいか。
 重要なのはあいつが何時戻って来るか、って事だ!
 あ〜ぁ、俺も飛べたら……ってそれだけじゃたぶんだめだろう。
 あいつは、翼で飛ぶのが好きなんだ。
 だからバイクにすぐ飽きちまった訳だな〜あはは〜(涙)
 …………あれ?
 そー言えば、さっきぼっちゃんの出してた符って………
 全部、鳥系だったような……
 まさか………
 いや………
 でも…………
 ……………
 そんな時に天馬ご帰宅。
「たっだいま〜♪」
 おぉ、満足そーな顔ですこと。
「ありがとな、飛天!!また今度も頼むからな!」
「ケッ!誰がオメーみたいな餓鬼の言う事素直に訊くか。今日は暇だったらからたまたまだ、たまたま!」
 飛天さん、飛天さん、口元緩んでますよ。目が微笑んでますよ。
 で、天馬もさらっと聞き流せばいいのに、律儀につっかかったりするもんだから……あーあ、すげー嬉しそう。飛天。
 学習しろよ、ちったぁ。
 あぁ、別に俺に対してはいいから。
 ムー、と頬を膨らまして拗ねてみせて、身体の向きを変えて(この時飛天の表情が固まる。ザマーミロ)ぼっちゃんに散歩での事を逐一報告する。
 あいつ的用語でちっとも要領を得ない話を、ぼっちゃんは止める事もなくただ聞いている。
 そん時のぼっちゃん………ちょっと実は笑ってる??
 …………………

 同じ穴に、ムジナは何匹いるのだろう、と、俺は思った。




火生視野話。帝天馬編でした☆
次は凶門かな……あぁでもうんとてっちんを甘やかすバージョンの帝天馬も書きたいなぁ。
本当、鞍馬山での事が終わってからの帝月って、態度が半端じゃないもん。ナイス・甘やかし(親指グ!)☆