雨の日には





 しとしとと、景色をまるで薄いベールで包んだかのような雨が降り続く。
 そんな毎日の中で。
「………何だコレは……」
 冷静沈着で無感動な帝月だが、感情が無いかと言えばそうではない。
 そうではないのだが、豊かといえばそうでもない。
 しかし最近はよく感情が表に……表情となり現れる。
 それもこれも、何が原因で出会ってしまったか、この子供のせいで。
「ん?てるてる坊主」
 いつもは屋内に留まる事は少ない天馬。しかしさすがに雨の日となっては手も足も出ない。
 帝月は窓に吊るされている人形が、”てるてる坊主”と呼ばれるものくらい知っている。
 それを飾る事により、晴れると噂される迷信がある事も。
 問題なのは。
 そのてるてる坊主は頭部の半分が黒く塗られ、目も描かれている。そして下の部分は黒一色……
 ……この容貌はどう見ても自分だった。
「……何故、僕の姿を模した」
「え?だって知ってるヤツのにした方が”ゴリヤク”ってのがありそーじゃん」
 そんなのは迷信ですらない。
 どうしてそんな考えが出るのかが不思議だ。
 自分の姿をしたてるてる坊主は外を見ないで室内を向いていた。
 果たして顔(?)はどちら側を向かせるのが正解だったか。
 しかしこのてるてる坊主、例え外へ向けても室内へ向いてそうな気がする(笑)
 帝月は言おうとした。”こんなものは外せ”と。
 しかし天馬はなにやらごそごそやっていて。
「何をしている?」
「なかなか雨止まないからさー、もう一つ作ろうと思って。今度は飛天にしよっかな……」
「………………」
 その固有名詞を天馬の口から聞いた端、帝月は天馬からまだ何も描かれていないノーマルなてるてる坊主を取り上げた。
 天馬がぎゃーぎゃー喚くのを無視して、床に散らばっている文房具の中から黄色いマジックを掴む。
 頭を黄色で染めると今度は黒のマジックで。
「……あ!これ、オレ?オレだよな!!」
 ここで嘘をついても仕様が無いので、帝月はこっくり頷く。
 そうしたらさっきまで自分の物を取り上げられ、ぶーぶー怒ってた天馬はぱぁっと笑う。
 それこそ、彼の待ち望んでいる太陽の如くに。
 ”作品”の完成は静かなもので。
 帝月は出来た、とも言わずに黙って立ち上がり、少し間を置いて自分のてるてる坊主の横に吊るした。
 天馬はててて、と近寄り、とても嬉しそうに楽しげに二つのてるてる坊主を見上げる。
「晴れないかなー。もう随分野球してねーし………」
「だったら勉強でもしたらどうだ」
「……ヤな事言うなー、ミッチー」
 机の上の、真っ白なノートが目に痛い。
 不貞腐れた天馬に、不覚にも帝月の口元が緩んでしまった。


 ……天馬には悪いが、この雨、もう少し続いてもらいたい。
 だってそうすれば………

 雨が遮る風の無い室内。
 その二つは付けた時のまま、寄り添っていた。



 ちなみにこれを見た飛天と火生がひと悶着起こすのだが、それはまた別な話(笑)




6月トップの絵の小説……か?
アレ描き終わった後に”あ〜!てっちん坊主も描けば良かった〜!!”とプチ後悔。
最初の予定では飛天坊主だったのですが、よく考えたらワタシ帝天担当だし(誰が決めた。誰が)
だって飛天馬はちらほら見かけるけどさ……帝月あんましないんだもん(泣)
でも自分だって飛天馬が好きなのであまり強い事は言えないのであった。