教えるは易く誤魔化すのは難し






「なぁ〜、飛天」
「何だよ」
 素っ気無い態度で返す飛天。しかし彼が返事をするという時点ですでに……である。
「あのな、オレ、飛天の妾になったから!」
 …………………
 ふ。俺としたことが。
 聞き間違いを犯すだなんて。
 冷静を保ちつつ、飛天は今の台詞をもう一度聞きなおす。
「で、お前が俺の何になったって?」
「だから、妾」
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!聞き間違いがむしろ間違いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
 飛天は悶絶した。
 しかし流石は飛天夜叉王、天の魔王だ。
 内心混乱しまくってもそれを億尾にも出さない。
「……一体何がどうなってそうなったんだ?」
「おう!静流がな、
    『今回の事で特別にあんたも飛天夜叉王様の側に居ること許してあげる。
     でも本妻はあたしだから、あんたは妾って所ね』
 ……って」
 何考えてんだ、静流!!
 こいつ、絶対意味解ってねぇし!!
「ところで”妾”って何だ?」
 ほら見ろ!!
 うにゅん、と首を傾げるてっちんであった。
(何が悲しゅうて第二次成長期も来てるか怪しい子供を妾にせにゃならん……)
 だったら来てたらいいのか、飛天よ。
 妾とはずばり勿論愛人の事だ。
「あのな……」
 その事を説明しようとした飛天の言葉は途切れた。
 さすがの天馬も”愛人”ぐらいの意味は知ってるだろう。
 もし、意味を教え、
 『え〜、オレ飛天の愛人なんかになりたくねぇよ〜』
 って、言われたらどうしよう!!
 飛天夜叉王。生きてる時間は長いが、思春期入ってまだ間もなかった。
「え〜と……」
 言葉に詰まった飛天はまるでガマから油を取ってるが如く汗だくになった。
 天馬はそんな飛天を急かす事無く、じっと目の前で大人しく座って待っている。いい子だな、てっちん!!
 どうする、飛天!!
「天馬!」
「ん?」
「空の散歩すっか!!」
 そう出たか。
「え!するする!!」
 ありがとう、神様!こいつを単純に生まれさせてくれて!!
 思わず神に縋った飛天である。其処まで困ってたのか!
 飛天にしがみ付くべく、胸元に飛び込む天馬。しっかり抱き締めて飛天は空を駆けた。

 で。
 空のお散歩が終わって大満足なてっちんが、部屋に戻った時の第一声は、
「んで、”妾”って?」
「…………………☆」
 飛天の苦労はしばらく続きそうだ。





甘い!飛天が天馬に!!まぁ、それが飛天馬の醍醐味ですけども(え?違うの?)
静流が天馬のおねぇさんぽくなってステキです。ていうか実際そう詐称したしなv
飛天の話題で盛り上がる二人、ってのも書いてみたいです。