ん〜??
おかしい。俺は辺りをキョロキョロした。
括られた俺は術者……ぼっちゃんの許可なく外へは出れない。
って事は、外に出るのはぼっちゃんが俺を必要としているからで……
まぁ、早い話、何が言いたいかっつーと、俺はこうして外にいるのに、側にはぼっちゃんの姿がないって事で。
だったら何で俺は出てるんだ?
まさに俺は首を捻った。
と。
「火車!!」
ド!と足に重量感。
この声はぼっちゃん……ではもちろんなくて。
その側を人間のクセにちょろちょろするちみっこ様だった。
「火車じゃねーって。俺には火生って名前があんの」
「じゃ、火生!!」
ガキは元気よく答えた。
確かコイツ、来年で中学じゃなかったっけか?それがこんな無邪気でいいんか?
別に俺が知ったことじゃねーけどよ。
ガキは俺の脚を攀じ登らんとする勢いでしがみ付く。
「丁度いい所に居た!なぁなぁ、オレもオマエのバイクに乗せてくれよ!!」
「……あぁ?」
俺は一瞬我が耳を疑ったね。
俺はかつてこいつを殺そうとしたヤツで、そいつによりによって殺そうとした道具に乗せてくれときたもんだ。
ガキは目を輝かせてせびる。
「いいだろ!?この前突っ込んで来たとき、おお、スゲーって!!だから乗せてくれってば!!」
……おまえ、それ、あまり理由になってねーぞ……つーか、感情に言葉が付いてないって言うか……
んまぁ、しかし、だ。
俺自身気に入ってるものを褒められるってのは悪い気はしねぇな。
「よーし、どうせ暇だから乗せてやらぁ!」
ガキに向かって親指グー☆
そうしたらまた輝く笑顔。
まるで太陽だな。髪の色といい。
「やった!ついさっき帝月にも言ってたんだ。乗ってみたいって」
ん………?
って事は何か?俺が外にいるのって……
いや、まさか。
あの冷徹非常でクールなぼっちゃんがこんなガキの願いを聞き入れる訳ないしな。
「まぁ、振り落とされないようにしっかり捕まって、俺のドライビングテクニックをしかと……」
…………………………
感じる……
背中にめちゃくちゃ冷え切った殺意を感じる!!
この殺気には感じ覚え(?)が!!しかも前の時とはレベルが確実に違う!!
ギ、ギギギギ、と安物のブリキのオモチャみたく振り向けば……
「飛天……夜叉王………」
「テメ……このたかが地妖で、ガキに褒められた位でいい気になってんじゃねーぞ、コラァ……」
何で。
何でそこまで怒る!!?あぁ!指の関節バキボキ言わせないで!!
「こら、飛天!むやみに苛めるな!!」
いや、ありがたいッスけど、オマエが言ったくらいじゃ……
なんて思ってたのに。
おや?
「……けどよ、天馬……」
……すげ……俺、多分飛天夜叉王の拗ね顔見た生き証人だぜ。
こいつ、こんな顔もするんだ。
ていうか。
今、名前で呼ばなかったか?”天馬”って!
俺の耳は正常だよな……??
呆気になってる俺に気づかず、二人は何やら言い争う。
「おまえな、そいつに殺されかけたの覚えてるだろうが!その無鉄砲な事しか思いつかねぇ頭でもよ!」
「あ!今馬鹿にしたな!?」
「馬鹿を馬鹿っつって何か悪い。馬〜鹿、馬〜鹿」
「クソー!馬鹿っていうヤツが馬鹿なんだぞ――――――!!」
て、殴りかかろうとガキはしたが、長いリーチの腕で額押されちゃあのガキじゃ届かねぇ。
一見互角(?)の言い争いだが。
飛天相手で言い争いで終わってる時点で向こうが劣勢だ。
だいだい、通り縋って邪魔だ、っつー理由で殺傷繰り返したこの魔王が……
……は〜ん。
かつて、ガキを殺そうとした俺から、なんとか遠ざけようとしている飛天夜叉王。
謎は全て解けた!!
俺はまだ殴りかかろうとする(諦めろよ……)天馬をひょい、と抱えて肩に乗せた。
二人のリアクションは最初は同じでも全く正反対。
天馬は驚いて喜んだ。
飛天は驚いて、そして……ま、語るに愚かだな。
「よし!行くか、”天馬”!」
「おう!」
「…………………!!!!」
これ見よがしに名前を呼んで、コイツの笑顔を独り占めしている事実を見せ付ければ、飛天のヤローは地団駄でも踏むそうな顔だ。
かっかっか、愉快だね〜。天の魔王にこの優越感!!
今日の運転は冴えるぜ〜vv
しかし。
このときの俺はすっかり失念していた。
……天馬がいなくなった時に、俺がどうなるかなんて……
言いたくないから聞かないで(涙)
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