ある意味子供たちが最も嫌う季節がやって来た。
暑い暑い夏より寒い寒い冬よりもっと嫌な。
梅雨。
「あ-------もう雨ばーっかり!!!!」
梅雨入り4日目、天馬が切れた。
「ミッチー!この雨何とかしてくれよ!!」
「無理だ」
ピシャリと言い切った帝月の言葉。
「雨の妖怪つったら、雨降り小僧か?」
「天候の如何は竜神が実験を握っているな」
暢気に会話をする火生に凶門。
「別に雨の知識なんか高めたくねーよー!!天気!晴れ!
野球が出来ねー!!」
「煩ぇなー、他にも遊べる道具があんだろ、今は」
「じゃあ、ゲーム変われよ飛天」
「今いい所だから待ってろ」
「さっきからそればっかじゃん!!!
野球は出来ねぇゲームも出来ねぇ、もう最悪---------!!」
「宿題は済ませたのか」
そう、静かに言ったのは凶門。
「………………何か、お菓子無かったかなー」
「宿題が済んでからな」
むんず、と素通りして部屋を出ようとした天馬を確保。
「遊んでもないのに、宿題するなんて-----!!」
「いつもは宿題しなくて遊んでいるんだから、これでプラスマイナスゼロだ」
「凶門の馬鹿-------!!」
「いやしかし。陰気に降る雨よね」
ノートと教科書と戦っている天馬を背に、窓の外を見て言った静流。
それに、火生が口を挟む。
「おいおい、水属性の妖怪のお前が言うかよ」
さっきの静流のセリフは、置き換えるなら火生が「夏は暑くてヤだな」と言ってるようなものだ。ある意味、存在理由の崩壊である。
「何かさぁ、この雨に蓋然性っていうか、意図的なものを感じて止まないのよ、あたしはさ」
「んー?どういう事だ?」
「だからね。雨が降ったら必要最低限の用事でしか外に出ないって事よ」
「……言いたい事があったら、はっきり言ったらどうだ?さっきから僕を見て」
「やだ。別に何も無いのよーv
あ、そうそう。この雨でてっちんがずっと家でよかったわねーvv」
「………………」
沈黙は金。というわけでも無いんだろうが、帝月は黙り、意識から静流を弾き出した。それに肩を竦める静流。
「ミッチー!ここ解んないよー!!」
天馬が助けを求める。
それに溜息を吐き、帝月は机に向かう。
「何処だ」
「ここー」
ぴ、と指を刺す、些細な仕草でも揺れる髪。
どう?と伺う天馬の目には、自分だけしか映っていない。
今日が、もし晴れだったら。
天馬は外で、クラスメイトと遊んでいただろう。
それでも。
「……………」
この雨と自分とは関係ないと。
「ミッチー?解んねぇの?」
「……違う」
………言い切れない、自分が居た。
<END>
|