風に乗る色





 似ている、と直感したから

 以来いつも目に留める




「………?天馬?」
 と、帝月が訝るのは、正規の帰り道とは見当違いの方向へ天馬が進んだからで。
「今日はちょっと寄りたい所あるんだー!」
 立ち止まってしまった帝月を、気にする事無く進んだ天馬は其処から振り向き、大きな声を上げて手を振った。
 幼さと無邪気さが同時に窺えるその仕草に、綻ぶ頬を隠して溜息を一つ吐いた。
 いつの間にか、こうなった。
 最初は単純な見張りの為で……それがいつか、目的を変えてしまった。
 自分がこうして天馬の側に居るのは。
 彼をいつでも見ていたいからだ。
 いくら何でも、本当に四六時中とはいかない。そうなれたら、と思う所はあるが。
 それにあまりひっついて居ると、鬱陶しいと思われるかもしれない。
 かつての自分程ではないが、人に限らず生き物は自分の領土に侵入されるのを嫌うものだ。
 ……そんな事、知った事か、などと思っていた昔の方があるいは幸せだっただろうか。
 否。
 もし、”今”を知りえたとしても、その時は否定するかもしれないが、それでもやっぱり魅かれてしまうのだろう。
 あの、よく撥ねる金色に。
「-----ミッチー!」
「ッ!?」
 いきなり名前を呼ばれ、吃驚する。
 ふと気づけば、自分は土手に立っていた。目の前の天馬ばかり追っていたから、周りの景色など気にも止めなかった。
「ほら、見てみろよ!」
 数歩後ろに携えていた帝月の腕を引っ張り、自分の隣へと並ばせる。
 至近距離になったふわりとした金糸に意識を奪われながらも、促されるまま、視線を土手の方へと向けた。
 すると。
「…………………」
 一面の、あの色。
 黄金のような、圧倒するような輝きではなく、もっと包み込むような、朝の覚醒を連想させる柔らかな色。
 それと酷似していると思った花。最も、色は金ではなく黄色だが。
 一面に咲いた----たんぽぽの花。
「ミッチーさ、たんぽぽいつも見てるから好きなのかなーと思って。
 ここ、お気に入りなんだぜ?」
 どちらかというと、道路や校庭の片隅に鎮座しているイメージのある花だが、こうして野に咲いている所を見ると四季を飾る花だというのを改めて知る。
 初めに此処を見つけた時そう感じたから。
 だから、教えた。
 もっと良く見よう、と腰掛けるのを天馬は勧めた。
 土手に並んだ影が2つ。
「綿毛になった時もすげーんだぜ。何せこの数だからな。まるで雪みてーなんだぞ」
「……そうか」
 帝月はその場面より、むしろそれを見ている天馬を思い浮かべていた。
 さぞかし、その光景を純粋に見て喜ぶのだろう。
 その花たちも幸せだ。
 近くのたんぽぽをそっと手で囲う。
 太陽を遮られても尚、その色は褪せる事はなかった。
「ミッチーはさ、何でたんぽぽ好きなんだ?」
「…………」
 言葉に詰まった。まさか、お前を連想していたから、なんて言える訳が無かった。
「う〜ん、何だろう……
 あ、もしかして」
 ぎくり、と肩や鼓動が撥ねる。
 大抵は鈍感な天馬だが、時々妙に鋭い時もある。それはあまり発展しないで終わってしまう時もあるが。
「色かな?ミッチー黄色好き?」
 その答えは当たらずと言えども遠からずだったので、帝月は頷く事が出来た。
 そっか、と天馬は嬉しそうに笑う。
「だったらヒマワリもきっと気に入るな、ミッチー。
 オレ、ヒマワリも沢山咲いてる場所知ってるから、夏になったら行こうぜ!」
「夏、か……」
 果たしてその時すら、自分が側に居るかも解らないけど。
 夏の青い空に、天馬の色は、きっと。
 いや、夏に限らず、秋の薄い空も冬の灰色の空も、当然今の空も。
 四季を通じて、天馬の色はどの空にもよく映える。





以上、てっちんの事しか考えてないミッチーでしたvv
てっちんて毎日楽しそうに生きてるからなー。
ああいう風に純粋に生きたい……誰だよ、無理だとか言ったヤツ……