SOUND OF CALLING
いつもかける電話先と違う所に電話をしようとすると、何故だか違ってるような気がするよね? それはプッシュ音が耳に馴染んでしまっているからなんだ。 |
真夜中。 ふとした事で、というか何が原因かは知らないが、爆は唐突に目が覚めた。 いや、目が覚めたというよりは眠りが薄れた、と言った方がいい。 このまま横になっていてぼーっとしていればまた眠ってしまうだろう。 何より、下手に動いて隣で眠るカイを起こしてしまっては可哀相だ。 寝てはいない。けれど、起きる気もしない。 なるほど、これが微眠みというヤツか。などと爆はそんな事をつらつらと、眠りの境界を彷徨いながら思った。 と、その時。 ――爆 誰かに呼ばれたような気がした。 周りがあまりに静かだから、耳の奥にある声が、とても鮮明に聞こえるのだ。 ――爆…… 誰の声だろう。と爆が思い出す前に。 すでに夢へと誘われていた。 「よ……っと」 慣れた手つきでリズムよくオムレツをひっくり返すカイ。 朝食を作るカイの背中を見ながら、爆は眉間に皺を寄せていた。 「どうしましたか?」 そんな爆を見て、カイが気遣う。 「どうしても、思い出せない」 簡潔に事情を説明しうーん、と頭を抱える。 (誰の声だったんだろう……) 自分は知っている。それは確実だ。 一折知ってる人物を思い浮かべてみたが、どれも違っていた。 「そういうのって、大概思い出すのを忘れた時に思い出すんですよね」 温野菜のサラダを運びながらカイが言う。 「そうだな……」 しかしこんなに気になっているのだから、忘れるのはちょっと大変そうだと爆は思った。 昼をまわった時点でも、爆はまだ声の主を探していた。 忘れてはならない。思い出さなければいけない。 そんな、何処か強迫観念にも似ていた。 ふぅ、と爆は溜息をつき、クッションを枕代わりに寝転んだ。 あの時を再現すれば、また聞こえるような気がして。 しかし聞こえるのは何処か違う声ばかり。 高い声で不躾に呼ぶピンクの声。 丁寧に柔らかく呼ぶカイの声。 上からからかうように呼ぶ激の声。 薔薇でも散らしてそうに(ていうか散ってる)甘く呼ぶ雹の声。 凛として自分を導く炎の声………… 「……………」 思ったより知り合いが多い事に、爆の口元は自然と緩んだ。 ほんのちょっと前までは考えも出来なかった事。 望む事すらしなかった事。 (最も、最初の印象はお世辞にも良くなかったけどな) 途中トラブルキッズにさせた自分に、各世界のGCは出会い頭に攻撃をしてきたりもした。 その前では炎の後継者として…… …………… 「ぁ…………」 思い、出した。 「カイ!」 「は、はい?」 突如静かな読書を楽しんでいたカイにとって、爆がドアをぶち破る勢いで押しかけたのはまさに晴天の霹靂であった。 「爆殿、どうし……」 「ちょっとオレの事を呼び捨てで呼んでみろ」 「は?」 なにゆえそんな事をしなければならないのか。 カイにはさっぱり理解出来ない。 「いいから」 ぐっと自分に近寄る爆に鼓動が弾む。 何か知らないけど、爆は真剣のようだから。 「ば……爆………」 呼びなれないものだから、噛んでしまった。 「やっぱり」 爆は満足し、数時間ぶりの清々しい気分を味わった。 あの声はカイだった。 「私の、声だったんですか……」 カイに凭れてこっくりと頷く。 「でも、だったらどうして直ぐに解らなかったんですか?」 そこまで印象が薄いのかと思うと、カイはちょっと寂しくなった。 こんなに近くにいるのに。 「呼び方が違ったからな。オレの事を呼び捨てにしたのは、最初に会った時だけだったから尚更だ」 爆は懐かしそうに話すが、カイはそうでもない。 ……本当のところ、その事に関してはあまり話題にして欲しくはないのだ。 自分の価値観とは違うものを弾き出し、爆の事すら認めようとしなかった、そんな愚かな時の事は。 「……別にいいんだぞ?」 下から覗き込むように言う。 暗にもう自分は気にしていないとも言っている。 それはとても嬉しいのだが。 「舌に、慣れてしまいましたから」 呼び方を変えると先ほどのように舌が回らない。 「そうか」 身体を包む腕に身を任せる。 「まぁ、貴様が呼びたいように呼ぶのが一番だからな」 「……はい。爆殿」 そうして今日も貴方を呼ぶ |
月瀬様リク、カイ爆でコンセプトは”音”。なので”声”にしてみましたv
い……如何でございますでしょうか……月瀬様(低姿勢)
ちなみにワタシも時折誰も居ない空間で誰かに呼ばれたような気がしますね(ヤバい)
まぁ、よくある事ッスよねv(んな訳ゃない)