dog no eat !



 今日も概ね世界は平和だが、存在というものが同一空間に2つ以上あるからには衝突やいざこざは逃れられず。
 ここにもその一例が。
「爆くんがそんな分らず屋だったなんて知らなかったよ!はっきり言って幻滅だね!!」
「自分の事を棚に上げといてそんな事を言うのか、貴様は!?」
「だって爆くんがいけないんだよ!!」
「ふざけるな!貴様が悪いんだろうが!
 もう、いい!出て行く!!」
「そうだね!!そうやって頭冷やしなよ!!」

 そして爆は家を飛び出した。
 これが1週間前。

「チャラ〜、夕飯だけど、僕はポトフがいいなー。あ、そうだ、戸棚がキッチンに欲しかったから作っておいて」
「……雹様……いい加減に爆くんと仲直りしたらどうです?」
 と、チャラは暗に帰らせてと訴えてみたが、もちろんンなもん雹に通じる訳がなかった。
「ヤダね。今回ばかりは爆くんが悪いんだもん。爆くんが謝りに来なければ許さない」
 という雹のセリフを聞いたチャラはあいたーと頭を抱える。
 いつもいつもいつもいつも(以下略)爆くん爆くん、と始終相手が嫌がってもべったりしていた雹がここまで言っちゃうのだ。
 そもそも自分がここに居るのは家事がするのがめんどくさいから代わりにやれ、という理不尽な命令の元からである。爆の為以外は指一本でも動かすのが嫌なご様子だ。
 その雹が爆が謝るまで許さないという。
 この喧嘩はかなり深い。
 のでチャラは当分自分を苦行の身に置くのを覚悟した。
「まぁ、それは当人達の問題ですから(僕も巻き込まれてますが)これ以上口は挟みませんけど。
 それはそうと、一体何が原因でこうなっちゃったんですか?」
「…………………」
 そのチャラの質問に雹は答えないでいた。
 なぜならば。

「はぁ?覚えてない??」
「ええい、そんな思いっきり呆れたと言わんばかりの表情で言うこと無いだろうが!!」
 と、爆が顔を染めて怒鳴ったのは怒りからか羞恥からか。
「だって本当に思いっきり呆れてるんだもん。
 家飛び出してあたしの所に1週間も転がり込んで、その理由の喧嘩の原因を忘れただなんて、これ以上の呆れ的出来事が他にある!?」
「やかましい!怒り過ぎて忘れてしまったんだ!」
 うーん、それはあるかもしれないとピンクはちょっぴり納得した。
「喧嘩の原因は忘れてしまったがな、絶対に悪いのは雹だ!これだけは確かだ!」
「ハイハイ、きっと向こうも同じ事を思ってるでしょうね」
 その通りだ。
「……雹が謝りに来なければ、帰らんからな。オレは」
 と、爆が言うのは雹がきっと来てくれるという信頼の裏返しなのだが。
 それを自覚するにはまだ爆はちょっと幼い。

 こんな感じで1週間が過ぎたが、両方が”相手が謝らないと許さない”と思っているため、事態は平行線のままだ。
 側に爆がいない、という理由で雹はいよいよ無気力になりつつある。
 で、身体を動かさないとその分頭がいろいろ考えて。
(もう……爆くんどうして謝りに来ないのさ……そうしてくれさえしたら、僕許すどころかあんな事もこんな事もしてあげるのに!)
 それを爆が聞いたら余計帰ってこなくなるのでは。
 雹はごろんとソファに寝転がる。
(寂しいなぁ……爆くんが居ないと。……爆くんも同じ事思ってるのかな……)
 そこまで考えて、雹ははっと気がついた。
(そういえば爆くん、家飛び出して何処に行ったんだ!?)
 今までそれに気がつかなかったのがいっそ滑稽だ。いや、愚かだ。
 雹は爆が出て行く、と言った事しか知らない。
 宿に泊まったと予想するのが妥当だが、1週間も滞在出来る金銭を爆が持っているわけが無い。
 と、すれば!!
 雹にとって最悪の状況が浮かぶ。
 爆くん誰かの家に!??

<以下、雹様の妄想(ていうか何と言うか)>

 (僕が居なくて寂しそうな爆くん。とそこへ不穏な影が)
「炎?」
「爆、雹が居なくて寂しいか?」
 (爆くん図星を刺された、という感じで顔を染めて)
「べっ……別に。そんな事あるわけないだろう」
 (とか言いつつ爆くんの表情曇る。そこへ図々しくも横に座り肩を抱いて(テメー!!))
「本当は、一人寝が寂しいんじゃないのか?」
「ぇ……?」
 (炎の意図が掴めない爆くん。で、そのまま炎に押し倒されて―――――ッッ!!)
「……俺のことしか、考えられないようにしてやるから……」
 (んでもって無理やり服剥ぎ取る!!!)
「あっ……や、嫌だ!やだッ!雹――――――ッッ!!」

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!炎のヤローなんて事をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「は、はい?炎様??」
 雹の声に驚いたチャラは花瓶を落としてしまったが大丈夫だった。さすがバカラの花瓶だね!!
「おーのーれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!爆くんに触れようとするヤツぁ両手両足の小指詰めさして腹かっさばいてやる!!」
 あんたはヤクザか。
 などと雹が突っ込む間もなく、雹は疾風が駆け抜けるよーな速さで家を飛び出した。
(はっ……つい勢いで家飛び出しちゃったけど……い、いや、僕は謝らないぞ。そう、爆くんの様子を見に行くだけ!!)
 見ただけでおとなしく帰れる自分じゃないのに、雹はこの期に及んでまだそんな事を思っていた。

(やれやれ、台所仕事もキツいな……)
 と、心の中で一人五ごちて爆は壁際のクッションに凭れかかる。
 家に泊まらさせてもらう代わりに、爆は食器の後片付けを任されたのだ。
(雹は毎日こんなのをしていたのか……)
 自分と暮らしている時、雹は家事の全般を担っていた。自分も手伝ったりしていたが、無意識に任せていた部分もあったのだろう。
 ……雹は自分のこういう所に嫌気がさしたのだろうか。
(……って何でオレが落ち込むんだ。悪いのは雹だ!絶対にオレからは謝ったりせんぞ!!)
 そういえば、と爆は考える。
(雹……ずっと一人なのかな……。まぁ、チャラ辺りでも引っ張り込んでるだろうが……)
 そしてはっと気がつく。
(あいつ……!年がら年中オレとしたがって(何を、なんて聞かないv)いたクセに、1週間離れてて平気なのか!?
 いや、それはない!!……という事は!!)

<以下、爆くんの想像(というか何というか)>
 (どさっ!といきなりチャラを押し倒す雹)
「わぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!何をするんですか、雹様!!」
「煩い!おとなしく僕に付き合え!!」
 (と、服を剥ぎつつ圧し掛かる)
「あ―――――!!さよなら僕の青春んんんんん!!」

「だめだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!そんなのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「へ?何??何がだめ??」
 ピンクにはさっぱり話しが見えない。
「雹!貴様ぁぁぁッ!誰でもいいのかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「だから、何がよ――――――ッ!!」
 ドップラー効果でも起きそうな速度で疾走する爆に声をかけてみたがが、その答えは一生謎のままだった。

 ここはファスタで一番賑やかで華やかな街。
 そこで雹は宿をしらみつぶしに探していた。念の為、というヤツで。
(ああああ、爆くんやっぱり居ないよー。てことはやっぱり炎とかにぃぃぃぃぃぃぃ!!)
 怒りの形相露な雹様はその顔を見て通行人が訝るのをこれっぽっちも気にしなかった。
 で。
 爆もまたここに来ていたりする。雹を探しに。
(家に帰ったら居なかったから、買い物にでも出掛けたのか?)
 ここは大きいデパートや専門店も豊富なので、雹は好んで出掛けた。
 そうして常に最上の材料をそろえて、爆に料理を振舞うのである。
(……そういえば、単に雹がチャラ襲ってない確かめるだけだったのに、どうしてオレは雹を探してるんだ?)
 それでも足は動いて、視線は雹を追い求めていた。
 と、その時。
 この人込みの中を猛スピードで突進していたものに当たった。
「痛いじゃないか!何処を見て……!!」
「ぼさっとしているそっちが……!!」
 互いのセリフが中途半端に途切れた。
「……雹……」
「……爆くん……」

 二人はちょっと街道を離れた公園に居た。まだ会話はない。
 先に口を開いたのは、爆。
「……別に謝りに来たわけじゃないぞ」
「僕だって」
 また沈黙。
「爆くんが悪いんだよ」
「貴様だろ」
 交じる事のない事態に業を煮やしたのは、雹だった。
「いい?爆くん、僕は爆くんの事が、大大大大大大好きなんだよ!?その僕がその君に対して本気に腹を立ててるんだ!」
 だから爆が悪いと雹は言う。しかし爆は引き下がらない。
「そんなのが理由になるか!!」
「なるよ!君はいつも僕に怒ってばっかりだから解らないだろうけど!!」
 そう言われ、爆の何かがぶちっとキレた。
「そんなの恥ずかしいからただの照れ隠しに決まってるだろうが!オレの事が好きだというならそれくらい気がつけ!!」
 雹は爆のセリフにきょとんとした。しかし爆は止まらない。
「それに!条件なら同じだろうが!!」
 止まらない。
「オレだって雹の事が好きだ!!!」
「―――――ッッ!!!」
 爆くんに大音量で告白されちゃったぁぁぁぁvvvvv
「それなのに、こんなに怒ってるんだから、非があるのはやっぱり…………」
 立てまくる爆の声が萎んでいく。
 よーやく。
 自分が何を言ってたか気がついたようだ。
「あ…………」
 と、小さく声をだし、下をうつむいたかと思えば後ろを向いてしまった。
(か……可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)
「爆くぅぅぅぅぅん!!」
「どぅあっ!?」
 雹はいつものように、爆を後ろから抱き締めた。が、今日はされで収まらず、お姫様抱っこまでしてしまって。
「ちょ……離せ!」
「ごめんね〜。君がそこまで僕の事を想っててくれてたのに、気がつかなくてv」
「だ……だから、さっきのは……!!」
 いろいろ言いたい事も多いけど、雹の顔がゆっくり近づいて来たから。
 爆は瞳をぎゅっと閉じて待った。


 そいでもって。
 爆はピンクに礼を言い、雹はチャラにとっとと出て行けと暇を出し、今は家に二人っきりだ。
 何処か悔しいけど、爆は落ち着いている。収まる所に収まった。そんな感じだ。
(でも……)
 二人は考えた。
(結局、何が原因でオレ(僕)達は喧嘩したんだ……??)


 ま、甘さを増すには塩がちょっと必要だしねv

えー、そういうワケでございまして、ミヤコさんリク”喧嘩腰の二人”でした。あはははは(壊)
いや〜、ウチの所は雹に限らず爆にベタ惚れなので、喧嘩なんて滅多にしないし(その分他攻キャラとは喧嘩超えて殺戮し合ってますが)だもんで、喧嘩の理由がどうしても思いつかなくて、で、こうなった。
そんな訳でミヤコさん。責任取ってくださいな(笑)