足りないもの




 そー言えば。
「母の日だの俺の誕生日だのですっかりスルーしちまったけど、オメーも今月誕生日だったっけな」
 と、俺が言うと洗濯物を運ぶ最中のリキッドは手を止めて、少し考え手をぽんと打った。
「あー、そう言えばそうでしたね」
「……忘れてたのかよ、自分の誕生日」
 とんでもないヤツだ。
「いや、歳取らないとなると、あんまり誕生日も気にならなくなっちゃって」
「歳取らない?」
「はい、番人になりましたから」
 あっさり答えるリッキド。……そーゆーものかなー。そーゆーものでいいのかなー。
 ま、そんな事はどうでも………
 ……待てよ。

 ・リキッドは番人になった為、歳を取らない。
 ・リキッドはそれまで一般ヤンキーだった。
 ・と、いうことは歳を取らなくなったのは、多分秘石の力。

 んでもって。

 ・何故だかちっとも成長していないパプワ。

 ……………………
 まさか。




「………青玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッツ!!」
 とりあえずどう呼べばいいのかわからないんで、とりあえずそう呼んで詰め寄った。
 青い秘石に。
 チャッピーの首にあるんで、まるでチャッピーに詰め寄っているようで大変心苦しいが。
『何だ、煩いそこの野蛮人め』
「煩せぇこン石っころが。さてはお前ら、パプワの成長意図的に止めやがったな?」
『何の事だ?』
「しらばっくれんなよ、コラ。でなきゃあの発育不足っぷりに説明がつかないだろーが!」
 チャッピー、というか青玉のリアクションなんだろうが、顎に指を当てて、
『何故そんなにも、パプワの成長度合いを気にかけるんだ。お前は』
 え。
 ……えーっと。
「いやだから、アイツもあんなちみっぷりなままじゃリーチ的や高さ的に色々不都合があるというか、物理的に無理が生じるというか。入らないっていうか。
 別に成長止めるのがいかん、って言ってる訳じゃないんだよ。せめてもう少し大きくなってから、そう、例えば14歳くらいに」
『絶対大きくさせん』
 俺が折角妥協案を示しているというのに、返って来たのはそんな冷たい(まぁ、石だし)言葉だった。
「何でだ無機物!俺がこの4年どんな思いでいたと思う!
 そして4年ぶりに会った時、そのまんまだったパプワの姿を見て、忍耐の2文字が思わず浮かんだんだぞ俺は!!
 四の五の言わずにさっさとパプワ成長させねーと砲丸投げして皆の腕力計測すんぞ役立たず!!」
『絶対忘れてるだろうかもしれないが、お前を創ったのは私だぞ』
「未来ってのは過去の清算だけのものじゃない!
 さあパプワを大きくしろ!10歳くらいに!!」
 ガッシと青玉を引っ掴む。感覚的に、胸倉掴んでいるものを思ってもらいたい。
『そんなに言われても、パプワは赤の一族だから、私がおいそれと手を加える訳にはいかんな』
 う……。
 そういわれれば確かにそうだ。
 て事は、いよいよ赤い秘石を早い所探さなくちゃならない訳か。おし!改めて頑張ろう!
 滾る俺の横で、青玉がぽつりと言った。
『まぁ、成長させるくらいなら出来ない事もないだろうけど』
 ----何!?
「じゃあしろ!さっさとしろ!!」
『いや、条件がある』
 チャッピー(青玉)がピ、と指を出した。
『今からパプワを歳相応にする。が、お前が鼻血出した時点で元に戻す。いいな』
「何だよ、その条件」
『解らんか欲望の権化』
「何だと------!!?俺の貞操観念はどこぞの国家錬金術師もビックリな鋼っぷりだぞ!?」
『よし、その言葉、忘れるなよ』
 たっ、とチャッピーが走り出した。やっぱりこれも青玉の意思なんだろが。
 程なくして、チャッピーがパプワを連れてやって来た。
「何の用だ、シンタロー」
『すぐ済ます』
 俺に問いかけたってのに、青玉が勝手に応える。
 青玉が、眩い光を放った。溜まらず、目を瞑る。
 そうして、再び目を開けれるようになったら。
 其処には。
「おお、また大きくなったな」
 と、言うパプワの声だけが俺に耳に届いて。
 目の前には、ただただ床に広がる自分の血液があった。



 そんな訳で、今日のご飯は大量に出血した俺の為に、鉄火丼とレバニラ炒めとホーレン草の御浸しでした。
『……赤の秘石から、”どうしてあんな影を創った”と詰られたのが良く解った』
 青玉がまた何か言ったのかもしれないが、今は楽しい食事時なので、ほっといた。
「シンタローさん、新しいティッシュです」
 俺は、黙って受け取った。
 横で食事するパプワは、相変わらずちみっこいままだった。




<END>



勇樹サンのニアオーメンリク(6667だったそうですヨ)。シンパプでギャグ。
いいんだ、勇樹サンはお馬鹿なウチのシンちゃんをあれはあのままでいいって言ったんだから!!
つーかこれしか書けないんだからワタシは-------!!(咆哮)

まぁ、実際どうしてあんなにパプワはちみっこいまんまなんでしょうかね。
アルが生身に戻るのが早いか、パプワが歳相応になるのが早いか。

そしてタイトルの「足りないもの」ってのはシンちゃんの理性って事で。
大丈夫。パプワにだけだから。パプワにだけ。あとコタロー。

補足としてこれ、「大きいってことはステキだね!」の後日談みたいな感じですよ。

では勇樹さんへvv
すいません。甘さの入る欠片も無かったです。
自作で頑張りマッス。(汗)