”あなたと居るのは、本当は少し怖い。” などと口にしてみれば、目の前に広がる怪訝な表情。 「……だったら居なければいいだろう」 少し間が空いたが、それでも変わらない尊大な態度。 実はちょっと傷つけた顔が見たかったとか、でもそんな事を言えば今度こそ呆れさせてしまうだろう。 それはあまり歓迎できない事だったりする。 傷つけようとしたくせに、笑ったり喜んでる表情の方がいいだなんて。 何て滑稽だろう。我が儘だろう。 そんな自分は今まで知らなかった(存在はしていたかもしれないが)。 そう、今までは知らなかったけれど。 「……貴方、と居ると。知る事が出来るんです」 「何が」 「自分が」 誰かが言った。人間、所詮は自分の心しか解らない。 しかし、それでも、その自分の心すら、あるいは自分というそのものが、全部把握出来ない。 知りえないのなら、作ればいい。 作った。 修行に打ち込み、強さだけを追い求める……そんな自分。 それに相応しい行動、思考を選ぶ。 自覚はしてないだけで、世の中の人は大概そうでないのではないだろうか。 そうして定着してきた自分を……この人が、打破した。 「ねぇ、爆殿……自分の力量を測るのは大切ですが、”自分”を知るのはいい事なんでしょうか……?」 ぎゅう、と腕の中に居る彼をさらに自分の身体に密着させた。 でもそうすると、顔は見えなくて。 「……カイは、自分が嫌いか?」 「そうでない部分もあります」 貴方の前に立つと、何故だか、
自分の力を反射され、石になってしまった怪物を思い出す。
肩の向こうで、爆殿が溜息を吐く。 「……オレだって、貴様と居るのは少し怖い。 貴様と居ると、甘えたくなる、頼りたくなる、寄りかかりたくなる。 今まで、自分がこんなヤツとは知らなかった」 こうまで引っ付いていると、口唇の振動すら身体に響きそうだ。 「……だから、いいんじゃないか?」 一緒に居ても。別に。 「………………」 少し、身体を離す。 ようやく見えた顔なのに、口付けを交わした為、また見えなくなった。
真実を映す鏡なんて、無いほうがいいに決まってる それでもその役割が貴方なら 私は………
爆殿。きっと、私達は石になるのは一緒でしょうね ………?何だ、それは さぁ………
それを知らしめるのが貴方なら、私はどんな自分でも受け入れましょう この心、在る限り
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