「…………………」 薄ぼんやりと開けた視界に飛び込んだのは、いつも見慣れた部屋の天井。 そのまま、また眠りそうになる前にはっと気づく。 自分はさっきまで森で死にかけて、そこに爆が来て------ 「-------爆ど……ッッ!!?」 べしゃぁッ! ベットから駆け出そうとして、いきなりコケた。 しかも顔から。 うーむ、間抜けめ。 「……あたたたたた……」 目から火花を出しているカイに、 「おー、なかなか元気じゃねーか。こりゃ回復も早ぇな」 「あっ、師匠!爆殿は何処ですか!?」 開口一番に出た言葉が爆に関する事で、予測は出来ていたがやはり笑える。 「今、水を汲みに行ってるよ。もうじき-----っと、来たか」 トントン、と軽い足音も規則正しくリズムを刻んでるように思える。 ノックの音がして、激がいいぞーと応えた後に、 「カイは…………ッ!」 カイの様子に変化があったのか、と訊くまでもなかった。 よいしょ、と再びベットに乗るカイ。 が、爆が来た事によりまたベットから起きて……またコケた。 べしゃぁッ! 「……あたたたたた……」 「おーい無茶すんなよー。まだ体力追いついてねーと思うしー」 「そういう事は最初にコケた時に言って下さいよ」 「いや、まさかまた走り出そうとは思わなんだ」 天と地で会話をする師弟だ。 それはそうと。 「……爆殿……この度は危ない所を助けて頂き、本当にありがとうございます…… ……本当に……まだ、私なんて、全然修行が足りませんよね……つくづく、痛感しました」 ふ、と寂しく笑うカイだったが、床に這いつくばって言っているので多分誰も気づかない。 「……いや、無事ならいいんだ」 よいしょ、とまたベットに上がったカイの見る爆の目は何処か泳いでいるように見えた。 何か、顔も赤いし。 ……ホワーイ? きょとんとするカイを爆は強引に横にして、額というより目の上に濡らしたタオルを置いた。 その感触が心地よい、と感じた事で自分に熱があった事を初めて知る。 「……あの、爆殿はいつまでサーに居るんですか?」 完璧に回復したら、その旨を是非とも伝えなければ、と思ったカイは爆に訊く。 そうしたら、気のせいかタオルを押さえる様に置かれた掌が、強張ったような。 「そうだな、一週間くらい滞在しようと思う」 「街の宿にですか?」 「………………あー」 「別に此処で寝泊りしてもいいぜー?あ、でも今は給仕係りが臥せってっから、自足自給でよろしくな」 と、言った激のセリフはカイの事を慮っての事なのか。 あるいは。 「師匠……」 いくらなんでも病人(いや、怪我人か)の居る所に泊めさせる訳にはいかないでしょう。 なんて言おうとしたけど。 「そう……だな。そうするか」 「えぇッ!?爆殿!?」 承諾の声にがばぁっと起き上がる。少し眩暈がしたが、それだけだ。 「何だ、オレが居るのは不満か?」 「いえ!とんでもなく嬉しいのですが!!」 途端、爆の目が見開かれる。をやん? 「ですが、私はこの通りですから……」 「持成してもらおうとは思ってない。屋根と寝具があればいいんだ」 と、言う訳でオレは街へ食事に行って来る。 ぱたん、と閉まられたドア。 「そんな……爆殿と……爆殿と一つ屋根の下だなんて!あぁッ!でも私はこんなだから夜這いに行く事も出来ません!すみません爆殿、決してあなたに魅力がない訳では………!」 「……師匠!!何を勝手に言ってるんですか!!」 爆が出て行ったらいきなりミョーな演技をし始める激だった。 ……演技っつーかおそらくカイの物まねなのだろーが。 「弟子の心の声を正確に読み取って代弁してやったんだ。親切だろう。礼を言え」 「何が何処でどのように親切なんですか!それの!!」 「じゃぁ、お前、もし自分が五体満足で横の部屋に爆が居たら(しかも夜)どうするよ」 「そりゃ勿論…… …………………って何を言わそうとしてるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」 その前に何を考えてたんだ、カイ!! 「全くもう………! ……そう言えば、どうして爆殿がここに居るんですか?」 「よーやくその質問が出てきたか………」 呆れるように呟く激。70行以上かかりました。 「お前が死に掛けてる時、助けてだの何だの思っただろ。それが爆にまで届いたんだよ」 「え……ですが、私はテレパシーは……」 「人は死に直面すると、思わぬ能力を発揮するもんだ」 さっき爆にしてやった説明を掻い摘んで言う。 (そうか……届いたんだ………) それも爆に。 自分の事ながら何だか笑える。 (自分では伝えようとは思ってないのに、勝手に------) …………………
”自分では伝えようとは思ってないのに、勝手に”
……それって……それって、まさか……… あの時思ってたこと全部、伝わっちゃったって事ですか---------------!!?? 「?おーい、カイー?」 とーとつにピキーンと固まってしまったカイ。 目の前でぶんぶん手を振っても固まったまま。 「……ふむ」 そんな様子のカイに、激は。 やおらペンを取り出した(ヲイ)。
はぁぁぁぁ〜〜何をしてるんだ…… おそらく誰も足を運ばないだろう森の中。爆は見つけた大木に凭れかかり、掌で顔を覆った。 いつまでサーに居るのか、と訊かれた時……本当はもう発つと言えば良かったのだ。 そうして、カイを見るたびに沸き起こる顔の火照りを治めて、それからまた会えばいいのだ。 それなのに…… 一週間くらい居るだなんて…… そんなの…… (……まるで直接告白されるのを待ってるみたいじゃないかぁぁぁぁぁッ!) 思い出してしまった頭で響いたカイのセリフに、またぷしゅーと湯気を出す爆。 ……何かと自分について来るヤツだと思っていたが、まさかあんな風に想われていたなんて…… 「………………」 もう顔とは言わず、身体が熱い。熱病に浮かされたみたいに。 人から想いをよせられると、皆こうなるのだろうが。 ドキドキする鼓動も、くらくらする頭も。
このままずっと続いても構わない、と、思うのだろうか。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。 バレた……ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったいバレたぁぁぁぁぁぁぁ! そうすればさっきの爆の行動の中で”?”な部分がクリアに解き明かされる!! いや別にずっとこの想いはこの胸の中でなんて思ってなかったけどそれに至るまでのシチュエーションとか経緯とか結構自分なりに計画立ててたけどそれ全部ぱぁ。てそんな場合じゃなくてそれ以前でなんかもうもうもうもうあ-------どうすればいいんだ---------!! と、頭の中でぐるぐると渦を巻く、カイの師匠はというと。 「……うーむ……額に”肉”じゃありきたりだから……”爆殿命”……いやいや、”爆殿LOVE”…… いっそ”愛羅武優”とか”仏血斬理”」 完全にオモチャにしていた。
カタチあるモノはいつか壊れちゃうものだけど それでも言葉にしてくれなきゃ安心出来ません 信じません 安っぽくてもありきたりでもいいから
ちゃんと、伝えて?
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