Meet Agein
朝の通勤・通学時のラッシュは不快感が付き纏う。 爆はそれを回避するため、いつも一本早い電車に乗っていたのだが、今朝は少し寝坊してしまい混雑な車内にいた。 (今日はついてないな……) 初のラッシュ経験に思わず溜息も出ようというのもだ。 と、その時。 (――――ッ?) 気のせい、あるいはこの混雑の為か……などと思ったが、違う。 この手は明確な意思を持って、爆に触れていた。 (こ……これはもしかして………!) 痴漢、というヤツか!? 噂には思いっきり聞いた事はあるが、まさか自分にそれが降りかかろうとは! どうにかしなければ。でも、どうすればいいのか。 そう爆が考えている間にも、手の動きが段々と大胆になってきた。 肩の辺りを撫でていた手が、腰へ。もう一方の手も縦横無尽に爆の身体を弄る。 (こ……の……人の身体を好き勝手に触りおって――――!) 爆の怒りはちょっとズレている。混乱しているからか? ふ、と顔の横の空気が動いた。そして。 「相変わらず細いな、お前は」 「なッ………ッ!」 その声は。 「斬!」 「……まだ怒ってるか」 斬の前を……というか斬が後ろからついてくるというか……爆は大股でずんずか歩いていた。 しかし子供の大股なので、むしろ斬には丁度いいペースだ。 無視を決め込んでいた爆だが、その斬の台詞にくるりと踵を返した。 「当然だ!貴様は満員の電車内で知り合いを見つけたら、その身体を触るのか!!?」 「馬鹿言え。お前以外のヤツを見かけたら後ろから問答無用で蹴りだ」 ……斬がどんな人間かときかれたら、爆はこう答えるしかないだろう。 こーゆーヤツ。 「それに!それだけじゃない!!」 怒りの形相の爆はズカズカと斬に近づき、 「貴様の”ちょっと”は2年なのか!??」 「………………」 この台詞には斬はちょっとばつが悪そうに視線を泳がせた。 今から2年前――斬は自分の研究のため、その為の施設がより整っているという研究所を紹介してもらい行く事にした。 爆に「ちょっと行ってくる」とだけ言い残して。 本当にちょっとのつもりだったのだ。せいぜい半年くらいの予定で。 しかし予定は予定。 研究が計画通りに進まなかったり、疲れがたたって寝込んだりしているうちにあれよあれよと気づけば2年も経っていた。 まさに、光陰矢の如し、である。 「しかも何にも連絡寄越さないで。オレがどんな気持ちだったか解るか!?」 (……ずっとバタバタしていて、何とか落ち着いたの時点で1年経ってたからな……下手に連絡すると余計怒らせそうで……) まぁ、しなかった所で怒らないかといえば全くそうでもないのだが。 「……俺が悪かったから……あまり怒らないでくれ」 「怒ろうがどうしようが、オレの勝手だろ!?」 「いいや、俺はお前の笑った顔が好きだからな。まぁ、たまには怒った顔も新鮮だが……」 ……斬の性質の悪い所と言えば、他人に対して(爆除く)容赦も情けもない所と。 こんな台詞を真剣に真顔で言う所だろう、と爆は思う。 嫌味や皮肉でない所が一層たちが悪い。 「……もういい。過ぎた事だしな……」 顔が熱くなるのを堪え、ふん、とせめて最後まで尊大に言ってやった。 ほっとした斬はそのまま爆の身体を包み込む。 「ちょ……やめろ!こんな所で!!」 ここは駅前だ。今の時間帯で最も人が多い場所。 「解った。再会の感動は今夜俺の部屋でゆっくりな」 「……………アホ」 「……来ないのか?」 「……行くけど……」 そうじゃなくて、耳元で囁かないでもらいたいのだ。 頬にかかる彼の髪や、声自体にも。 「それはそうと貴様、ここまでオレについて来ていいのか?」 斬の通う大学は、正反対……ではないにしろ、全く別の駅で降りた。 しかし、斬は爆に答えず、 「爆、お前の学校の保健医、今度変わるそうだな?」 「あぁ……って、それを何で………」 そこまで言って、爆は気づいた。 斬が物凄く楽しそうな顔をしている事を。 「……まさか………!」 斬は……医大の助教授だ。 またしても耳元で囁く。 言っただろ? ”帰ったら、もうずっと側に居る”と ”明日”が始まる。 |
斬爆で学園もの、というリクでしたv
保健医斬に生徒爆……実は一部ではすでに有名(笑)
しかし斬がいよいよ爆以外はどうでもよい人に。
まぁその気持ちは解らんでもない。
結構シンクロ率高いな……ワタシと斬。
ではこの話はリクされた天神さんにvvv