Yellow Yellow Happy





 ”いつか 太陽が消えてなくなる前に
   もっと あなたを好きな事伝えなくちゃ”




「せーの!」
 という学級委員長のサクラの掛け声の元、32個の帽子が空へ放り投げ出された。
 今日、俺たちは恙無く小学を卒業した。




 卒業式の後、学生帽を空へ投げよう。
 どこかの外国の学園ドラマかなんかでやったらしいこの演出に、皆は賛成して決行された。
 上へ飛んだ帽子は、青空に散った星みたいだった。
 何となく、柄にもなく俺は少し感動とかしてみたりした。
 で。
「おーい!俺の帽子どこだー!」
「いの!あんたのよ、これ」
「誰かー!ヒナタの見つけてあげてー!」
 ……演出の後始末って、何か微妙だよな。
「シカマルー、お前のだってば」
「……おー」
 何もせずにぼぉっとしてたら、ナルトが俺のを見つけてくれた。
 今日は卒業式だから、皆すこし着飾ってきている。
 女子は大体スカートなんだけども、ナルトはズボンのスーツっぽい服で着ていた。
「卒業式くらいは、あんたのスカート姿が拝めると思ったのにね」
 式前、サクラがやれやれ、といった感じでナルトに言った。
「いーじゃん。どうせ中学になったらスカートなんだし」
 けらけらとナルトは笑って言う。
 本人曰く、スカートは動きにくいから嫌いなんだそうだ。
 それも事実なんだろうけど、それだけでもない。と、ここ数ヶ月、何の偶然かナルトに非情に関わってしまった俺には判る。
 ナルトがスカートを穿かないのは、何かの意思や決意の表れで。
 そして、それは『あの日』を境に変っている。
 『あの日』の前は、好きな人を好きにならない為に、性別ってものを封じる為に。
 そして、今は。
「イルカ先生ー!卒業祝いに一楽連れてってば!!」
 ナルトがイルカ先生に、言っていた。
 いつものよーに、変らないように。




「ナルト」
 時刻も遅くなったから、ちらほらと皆は帰って行った。残っているのは、俺とナルトだけ。
 皆がこの場を名残惜しそうに、去っていくのは友達か、それとも小学生だった自分か。
 そんなセンチメンタルは置いといて。
「ちょっと、話せるか?」
「うん。いいってばよ」
 シカマルには色々お世話になったからな、と言う。
 俺も言う。
「俺よー」
「うん」
「お前が好きみたいなんだわ」
「う………ん?」
「それについて、返事がほしいんだけど」
「………………」
 初めて。
 ナルトから笑顔が消えた。
 目の玉が落っこちるんじゃねーかってくらい、目を見開く。
「な、何で………?う、嘘ぉ!!」
「嘘でも冗談でもねーよ。てか嘘で言えるか、こんな事」
「だ、だ、だ、だって、オレだってばよ!?何処がいいんだよ!」
「全部」
「ぜっ………!」
 あっさり言う俺に、絶句するナルト。……いつかのと逆のパターンだな。
「シっ、シカマルっ!きっとそれは友情だってばよ!親愛とごっちゃになって……」
「別にいーじゃねぇか、めんどくせぇ」
「めんどくさがってる場合かー!」
「いいだろ?別に元が親愛だろうが家族愛だろうが。
 俺なんてよーやく二桁のガキだもんだから、人の気持ちも、自分の気持ちだってよく解んねーよ」
 でも。
「お前が悲しいのは、嫌だ。
 から。
 それを一番早く聞かせてもらえる立場が恋人だっていうんなら、俺はそれになりたいだけだ」
「……るい、ってば」
 震える声でナルトが言う。
「…………」
「ずるい!どうして、こんな、こんな時にそういう事言っちゃうんだってばよ!!どうして言うんだってば!?」
「…………」
「オレ、今すっごく弱まってるな、って、自分でもそう思うのに!そんな時に、そんな事……!そんな事………ッ!!」
「……泣くなよ」
 俺はお前の笑った顔が好きだよ、て。
 歯が浮きそうなセリフが思い浮かぶ。
「オレ、イルカ先生が好き。今も好き。ずっと、好きでいたい……!!いたいのに……!!」
 ……やっぱり。
 ナルトが望む事は好きになるって事を止める事。
 イルカ先生を好きにならない為。
 イルカ先生だけを好きでいる為。
 ぼろぼろと苦しそうに泣いているナルトを見て、やっぱり人を好きになるって事は業なんだな、って思った。
「何でシカマルがそんな事言うんだってば?」
 ぐずぐずと鼻を啜って言う。
「シカマルだけは絶対言わなさそうだったのに」
 ……そりゃ、ご期待に添えなくて。
「シカマル以外だったら、断れたのに………」
「…………」
 ん?
 今、非常に俺にとって幸せなセリフが聴こえたような?
「ナルト」
「……………」
 涙の膜が張ったナルトの蒼い目は、光沢を帯びていよいよ宝石みたいだった。
 とめどなく流れる涙を伝わせる、丸い頬にそっと手を置いた。濡れたせいで、最初は冷たかったけど、すぐにその下の体温に馴染んで温かくなる。
「口にするぞ」
 俺は大人じゃねーからな。
「…………」
 ナルトは。
 避けなかった。
 俺はそれまでの自分に別れを告げた。
 恋もキスも知らなかった自分に。




 さて。
 これは終わりじゃなくて、始まりなんだよな。
 実ははっきり恋人になります、て言われた訳でもねーし。
 これは世にいう所の友達以上恋人未満てヤツだろーか。切ねぇな。
 ま、いいか。まだ12年しか経ってない人生だ。
 これからじっくり伝えるさ。
 お前がイルカ先生を好きなより、俺を好きなより。

 俺は、お前が好きだ。って。




<END>





で。シリーズ完結です。お付き合いありがとうございました。
振り返ると、シカマルくんの恋の芽生え日記ともとれない事も無い。
ナルトはナルトで、シカマルにぺらぺら喋れるのは実はそういう事だった、て事で。

とりあえず、ある日ふとポケビのイエローイエローハッピーを聴いた時、「よく考えたらナルトソングじゃね?」と思ったのがきっかけでした。
歌詞の全部がねー。特に「許されるはずのずるい悪戯もやりつくして辿り着いた性格も」って所が!
最初はそれだけだったんですが、こうなったら全部の曲使ってやってやろう!と無駄に猛ってこういう結果に。
あと誤算だったのは、シカマルとナルトしか出なかった事。……予定では結構出るつもりだったんですがね、キバとか、サスケとか。イルカ先生との会話が削れたのが自分でもあれ、って感じです。シカマルの1人称にしたせいですかね。
事件とか出来事とかも何もなく、2人だけで話が進んでいくようなスタイルになり、自分では結構気に入ってたりします。