Rapturos Blue





”とろけるようなブルー  うっとりするようなブルー
 でもグレーにさせない  たとえバラ色にならくても”




 好きになりたくなかったのは、
 好きになるにはあまり相応しくない人だからで。
 関係壊したくなくて、必死に自分の時間を止めていた。
「……………」
 あ〜……
 何で気づかなかったんだろ………
 近くの公園で、久しぶりにブランコに乗ってみる。
 昔は、ジャンケンしてまで取り合ったものだってのにな。今はそこまでして乗りたいものでもない。
 何時の間にその変化が出たのか、数年前の事がよく解らない。
 ゆらゆらと前後に揺れて、ついさっきまでの、ナルトとの会話を思い出していた。




「いや〜……でもよ?」
 はっきりした筈なのに、それをあまり受け入れられなかった。
 ナルトが、イルカ先生を好きだなんて。
「それって、家族愛とかと取り間違えてる、ってよくあるパターンじゃ……」
「シカマルってさ、エロビデオとか見た事ある?」
「は……? はぁぁ!!?」
 相変わらず俺を驚かせてくれるよな、コイツは。
「オレってばあるんだ」
「……………」
 ……話の内容についていけねぇ。はぐらかしてる、てのとは違うみてぇだし……
「何時だったかな、一杯お客さんが来てさ、暫くして起きたらみーんな寝てて、ビデオが出てたからなんだろ、と思ってみたら、そうだったんだってばよ」
 いやあの時はビビった、とあははと笑う。
 そして、ふと視線を下ろした。

「でさ。オレ。
 見てて、あぁいう事、ちょっとされてぇな、って」

 イルカ先生に

「……………」

「引いた?」
「いや…………」
 好きな相手をそう思うのは、当然だと思う。
 そう言えば、ナルトの負担を少しでも減らしてやれただろうけど。
 どうしても。
 言えなかった。
「んで、話変わるけど。
 もしかすっと、転校すっかもしんない」
「はぁ!?」
 本日3度目の仰天。
「オレ、じっちゃん以外に身寄りいなくてさ。じっちゃんの息子さん夫婦が引き取ってくれそうなんだけど、ちょっと離れててさ。てかぶっちゃけ県外」
「でも、おま……卒業まで、あと少しって時に」
「あと少しでも、12歳を1人暮らすさせる訳にはいかないってばよ」
「そう……だけど……」
 子供は自由でいいね、っていう、大人に見せてやりたい。こんなに、窮屈にしているナルトの顔を。
「……今日な、イルカ先生、来てくれるんだって」
 葬式は暦の都合で明日との事だ。
「だから、今日、言う。好きって」
「…………」
「想い伝えてさ、せっかく両思いになってもそのままサヨナラっての、好きじゃねぇんだよなー」
 あははは、て。
 何で。お前。
 ………笑うんだよ。
「言わないでもいいや、とか思ってたんだけど。
 やっぱダメだな。何でなんだろ」
「そりゃ……人を好きになるのは、業の1つって言うからな」
「”業”って何?」
「生まれ持った罪って事だ。牛や豚殺して、その肉食べなきゃ、生きられないのと同じだ」
「へー、シカマルってもの知りだなー」
 ナルトは、目を丸くして言う。
 でもな、ナルト。お前の言うもの知りな人は、お前が誰を好きなのかが、全く解らなかったんだぜ。

 隣の席にまで、近づいたのに。

「じゃ、オレ、行くね」
 気づけば、空気はひんやりしていた。
「何か、シカマルに言えてよかったってばよ」
 そう言われて、俺は、喜ぶべきなのか……
 それとも……
「少なくとも、オレとイルカ先生がぶっ倒れても、オレがイルカ先生を好きだって事は、シカマルが知ってんだな」
「思いっきり物騒な事言うなよ」
「あはははー。じゃぁーなー!」
 最後にそう言って、大げさに手を振り、ナルトは行った。
 イルカ先生に告白する為に。
 きっと、ナルトは知っている。
 自分の想いの結末に。
 それでも、俺は解っている。

 それがずっと、色褪せない事を




<END>





エロビデオ見て〜てのは某作品からの引用ですが、多分解らんでしょうなぁ……

イルカ先生(との会話)を出さないのは、わざと……というか自然に出ないスタイルとなってしまいました。
まるで「うちのタマ知りませんか」の飼い主みたいですね。
ここま来たら、このスタントで通そうと思います。