”いたずらな伝説を 摘んで花束にして
繰り返す明日へと 高く掲げ歩いていこう”
体育の日は女子が煩い。
サスケが活躍するから。
まー、本人はフツーにプレイしてるだけなんだろうけどな。ああまで騒がれると、羨ましいのも妬むのも通り越して「ま、ガンバレ」とか励ましてやりたいくらいだ。
来年、中学になれば、体育は男女別だから、それまで持ちこたえとけ。
「サスケくん、ナイッシュー!!」
「ステキー!!」
いのとサクラがシュートを決めたサスケに声援を送る。他にもちらほら。
「お前ら、飽きねーなー」
「当ったり前よ!だって、サスケ君は毎日違った魅力を見せてくれるんだものー」
そう言って、うっとりするいのを見ると、長生きするのはこーゆータイプだよな、とつくづく思う。
「ま、男にはあの良さは解らないわよね、男には」
男に産まれた俺、万歳。
「……まさか、ナルトやヒナタもサスケに夢中だったりするのか」
ぼそ、と何気なさを装って訊く。
いのとサクラはナルト?と声をそろえた後、笑い出した(何だかんだで、息ぴったりだ)。
「ヒナタは解らないけど、ナルトは在り得ないわよー!まだお子様だし!」
「そうそう、夏休みのキャンプの時、テントで好きな人は、って訊いたらさ、あいつ「イルカ先生」って言ったんだから!」
「へー……」
2人には悪いけど、”夏休みのキャンプ”って単語が出た途端、俺は思い出に浸り始めていた。
夏休み。7月最終の週末に学校行事としてキャンプがある。
ていうか、何でンな時期に予定組んだりするんだろうな。ばっちり台風の時期じゃねぇか。
それはともかく。
とりあえず色々やって、キャンプファイヤーとか肝試しなんかもやってだ。
その、夜の事だった。
その夜、あまり寝付けなかった。理由をみんなに言うとたこ殴りの刑に合いそうだから言わないけど、昼間に昼寝し過ぎたからだ。だって、起こさなかったからよ。そのまま寝てたんだよ。
腕時計を見ると、時刻は午前2時。これって丑三つ時ってヤツじゃねーか。
さーてどうすっかな……
と。
明らかに自然現象が起こしたのではない物音が耳に入った。
……………
丑三つ時って、お化けが活発になる時間帯だよな……
しかしそんなものは次の瞬間の「イテ!」という何かに躓いたような声で四散した。
ナルトだ。
「……何やってんだ」
「おわシカマル!?」
テントからひょっこり顔だけ覗けば、靴が脱げたのか、履き直しているナルトとばっちり目があった。
「どうしたんだってばよ。10時には寝なくちゃだめなんだぞ」
「オマエはどうなんだ。オマエは」
「オレにはこれから有意義な目的があるんだってばよ」
「……先生達が泊まっているコテージにでも行く気か?」
「ななな!何で解ったってばよ!?」
いや……オマエが行こうとしている方向に、何があるってそれしかねぇし……
て言うか。
「おい、あんまデカい声出すなよ」
あ、と口を手で塞ぐ。
「……あんさ、シカマル」
「わーってるよ。言わねぇよ」
「さすが!話解るってばね!」
「その代わりと言っちゃあなんだが、俺も連れてけよ」
「……へ?」
コテージには辿り着けたけど、あっさり教師に見つかってあっという間に帰らされたっけな。予想だけど、十中八九、酒盛りしたと見える。
翌朝…ていうか4時間後にラジオ体操で、俺は本当に眠気の限界ってのを知った。一方、ナルトは元気にラジオ体操第一に励んでいた。
あぁ、そうだ。
この日から、俺は「あの時、ラジオ聴いてなかったら」とか考え始めたんだ。
……ナルトって、好きなヤツ居るんかなー……
何で、あんな、人を好きになるのに怯えるんかなー……
………解んねー。
そんなナルトが、シュート!とか自分で叫んでシュートした。
それは。
ボギグ!
俺の顔に直撃した。
「うわー!シカマルごめん!超ごめん!」
「やだ!アンタ鼻血出てるわよ!」
「げ。」
「ギャハハハ!鼻血も滴るいい男だな!?」
「うるせーよ、キバ」
「あ!シカマル!オレ、おんぶしてやろうか!」
「アホ!いらんわ!!」
<END>
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