”夢まで追いかける あの大きな怪獣 大キライ とても怖いのよ”
何だか。
隣の席の者として意見を言うと。
ナルトは他の女子とは違うなーと思う。
いやいやそれは恋してるからだ、とかじゃなくて。
俺にそんな風に思われているナルトは、ただ今給食で残ったババロアをじゃんけんでゲットして、とても嬉しそうだ。マンガにしたら、音符のマークが飛び交ってるんだろうな。
「へへへー、どっちから食おうかな」
「どっちでも同じだろ」
そう言うと、シカマルは解ってない、と怒られた。……何が解ってないんだ?俺は。
「んなに欲しけりゃ、俺のもやるよ」
「え、いいの!?」
ババロアも、じゃんけんしてまで欲しがるヤツに食われた方が本望だろうさ。
ナルトはとても喜んで受け取った……かと思ったが。
「んー、それ、チョージにでもやってくれってば。アイツもすげー欲しがってたし」
オレは2個あるから、もういいや、と俺の申し出を断った。
2個あるから、俺からの分はもう要らない。まぁ、それは当然だろうけども。
何か。どうも引っかかるんだよなぁ。
次のデザートが余った日にも、ナルトは果敢に争奪戦に参加した。今度は負けて、「センセー、それ頂戴!」と担任のイルカに強請っていた。当然、貰えなかったけども。
いのやサクラやヒナタと一緒にいる所を見ると、違いはとても歴然だ。
いのやサクラがサスケの事で騒いでいると、えー?というような顔をして、ヒナタがファッションの事について言っているとほえーてな感じでその話を聞いている。
その反面、というか、キバが考えた悪戯についてはとても乗り気で、チョージが新発売の菓子の味の強化についてはほほぅと真剣に聞いている。
ナルトは、男子になりたいんだろうか。1人称も「オレ」だしな。
それも、なんだか違うような気がする。
あいつは、何になりたくて何になりたくないんだろう。
何で、俺はそれを知りたいんだろう。
その疑問が解消する日がやって来た。
えーと。
俺は激しく困っている。
クラスメイトが告白されてる場面に出くわしてしまって、困らないヤツが居たら、その秘訣を教えてもらいたいくらいだ。
しかも、だ。
相手がナルトだ。
……どうしたもんかぁ、オイ。
そのナルトに告白しているのが、これまた驚きで中学生。登下校している時に見初めました、て所か。
「……あー、ぅー……」
おそらくいろんな言葉が頭の中で回ってるんだろうけど、声に出ているのは言語になり損ねた音ばかり。
「いや、そんなに難しく考えなくてもいいんだけど」
難しく考えるに、決まってんだろ。
無神経な相手の言い方に腹が立った。
あー、もう一か八かだ。
俺が出て行って、吉になるか凶になるか。すくなくとも、身を屈めて茂みの影に隠れているよりかは、マシだと思う。
「よう」
さりげなさを装って、俺、登場。
そして、極力「今オマエなにやってんだ?」みたいな表情を浮かべる。
「シカマル!」
緊張だらけの場面で、見知った者が現れたのに安心したのか、ナルトが金縛り状態から解ける。
「ご、ごめんなさい!オレってば、ダメ!ダメなんだってばよ!!」
ダ!と地面を蹴って走り去るナルト。金色の髪が、綺麗に軌跡を描いていた。
そのまま帰っちまっただろうな、と思ったらナルトはすぐ其処に待機していた。しょっちゅうこいつ、俺の予想を外してくれるよな。
「……ありがとだってば。オレ、どうしていいか判んなくなっちまって」
「あー……いや、俺、特に何もしてねぇし」
礼を言われるとは考えてなかったな……
ぽりぽり頭をかく。
しばらくは同じ方向らしくて、並んで歩いた。ちょっと下の、ツインテールが何だか違和感だった。席に並んだら、水平に横にあるからな。
ふと、ナルトが口を開く。
「………シカマルってば、好きな人居る?」
「は?………はぁ?」
場面に相応しいような唐突のような。
「別に、居ねぇけど?」
とりあえず、答えた。
そっか、とあまりその答え自体に関心が無いような返事をした。
「なぁ、やっぱり、これから中学生とか、高校生とかになったら、彼氏とか作らないとダメなのかなぁ」
「……ダメって事は無いんじゃねぇか?ただ、居る方が多いだけで」
「うん……でも、いつかは結婚すんだよな。好きな人作ってさ、恋人作って」
そう言うナルトの目が、どこか遠い。
「好きな人って……やっぱ作らないと、いけないんかなぁ……」
そして、小さい子がおばけを怖がるのと同じ顔をしていた。
あぁ、こいつは
こいつがなりたくないのは、したくないのは
ナルトは、恋をしたくない
だから、子供のままで居ようとしてるんだ
でも
何で
1つの疑問は解消して、大きな謎が産まれた。
<END>
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