理想の女性





 その日は珍しく飛び入りや急な仕事が舞い込んではこなかった。
 稀代の破壊王であるエドも、今はまだ大人しい。
 とりあえず、今は。
「何これ」
 エドは手渡されたブツを見て、言った。
 一方、ブツを手渡したリザも言う。
「これが木彫りのクマや東京タワーの模型に見える?
 見合い写真よ」
 大将に見合い写真……カメにメガホン与えるくらいに意味のない組み合わせだな、と思ったハボックに足元から練成された大きな錐が襲う。
「何で俺に見合いの話が回ってくるんだよ!」
 写真を突っ返し、猛烈に抗議するエド。それを宥めるようにリザが言った。
「安心して、エドワード君。別に貴方じゃなくて、軍関係者なら誰でもいいの」
「尚の事悪いわ-----!!こんなもん、そこの無能……には、渡さない方がいいな」
「えぇ、私も無闇に被害者と加害者を増やしたくないわ」
「……君達」
 自分を弁解したいけど、今まで無視された体験が邪魔をするロイだった。
「じゃぁ、とっとと余所に回してくれよ。てか、俺に言うだけ時間の無駄だっての」
「大将、弟大好きだもんなぁー」
「いい加減、弟離れしたらどうだね?」
 そんな2人に即席に練成された武器が襲う。
「ったく、人を弟の事しか考えて無いみたいに」
 え、違うの?と3人の心の声が唱和した。
「俺だって自分の将来とか、考えたり思ったりするさ。
 その内結婚して、マイホームのローンとか組み立てたりすんだろうなぁ、とか」
「結婚!?結婚するつもりかのかね君は!!」
「しちゃ悪いかよ」
「てか、どんな人と!?」
「うーん。そうだなぁ」
 ハボックの質問に、目を閉じて考える。
「そうだな。別にとりわけ可愛くなくても、美人じゃなくてもいいから」
「いいから?」

「俺の事より、アルを大切にしてくれる人がいいな」

 エドの言葉に、は?と皆の目が点になる。
「鋼の?君よりアルフォンス君が好きなのであれば、最初からアルフォンス君と結婚するのではないかね?」
「あー、うん。まぁそれでもいいけど?」
「いいけど、って」
 訳が解らん、といった具合のハボック。
「別に俺は何もおかしな事言っちゃいねーぜ。
 俺は、俺よりアルの方が幸せになって欲しいんだよ。
 アルが、大事だから」
 ま、アルが幸せだったら、デフォルトで俺も幸せになっちゃんだけどな、と。
 そんな兄のセリフを、ドアの外で聴こえてしまったアルは、今度自分はこの世に産まれて本当によかったよ、とでも言ってみようかな、と思った。
 そうしたら、きっと相手は何言ってんだよ、って、額を軽く小突くんだ。

 とても、幸せそうに笑いながら。




<END>





誰も流血してない!!
これこそ奇跡だー!!(嫌なな奇跡だなぁ)
この条件に当たるとしたら、やっぱりウィンリだろーか。

元ネタっつーかなんつーか、自分よりも、って所は川原泉の「夢だっていいじゃない」より抜粋。よく考えたら、あれブラコンシスコン話だなぁ、って、話。これの話でもう一個使いたいセリフがあるのだが。どうしようか。