:Volcano-GWN
薄くなる身体と共に、意識もまた遠のいていく。まるで眠りにつくような心地。
自分達が完全に消え失せたと思って、泣き崩れた大切な存在が最後の景色。
の、筈だったのだが。
「……………」
例えてみればテレビをつけたように、ぱっと風景が眼に飛び込んだ。
そこはディーノと度々訪れた事のある、対岸に工場がある場所だった。
そこまではいいとして、目の前に居るこの柄の悪い連中はなんだ。
『何か用か?あぁ?』
と。3人はほぼ同時に言った。
『って、人のセリフ盗ってんじゃねぇよ!!!』
これまたほぼ同時に言った。
尚も言い返そうと思ったが、ふと相手をよく見てみる。
そのジャケットは。
その銀髪は。
そのバンダナは!!
もしや!
「ウォルフィとリーオンか!?」
「グリードーにリーオンか!?」
「グリたんとウーたん!?」
『たん付けるなー!!!』
ベシバシィ!とリーオン(と思しき人物)にツッコみを決める。
ま、間違いない……!!と、3人は確信した。
そして、3人は再会の感動に震えた。まぁ、リーオンが若干潤んでいたのは、強烈なツッコミを後頭部に2連発受けたからだろうけども。
て事で、これはしなくちゃならない掟なんですよ、みたいに3人は手を叩き合って喜んでいる。
「おいおいおいおい!何人間の姿になっちまってんだよ!すぐにわかんねーだろ!!」
「俺もどっかのヤクザに喧嘩売られたかと思ったぜ!」
「グリたんもウーたんも顔怖すぎるってー!!」
『お前に言われたくねーよ&「たん」つけるんじゃねって』
2人とも再会に喜んでいる笑顔のままリーオンに突っ込みを入れた。
と、ひとしきりテンションの高い再会を果たした3人だが、今は並んでその場に黙って座っている。つまり、これからどうしようって事だ。
「……ぼっちゃん家、行くか?」
ウォルフィが言ってみた。
それはグリードーだって、むしろグリードーこそがそうしたい所だ。
けども。
「なぁ、お前いきなり俺らみたいなのが来たら、どうする?」
「警察に連絡する」
自分で返した事ながら、ウォルフィはずん、と沈んだ。
警官が来て、まだ誠実そうな容貌なら弁解の余地もくれそうだが、自分達のこの姿じゃそのままブタ箱行きだろう。
そうでなくても、ディーノには記憶が無いのだ。自分達が傍らに居た時の記憶が。
「でも、会いたいなー……」
リーオンが言った。これもまた、グリードーのセリフだった。
会いたい。本当の素性は言えないまでも、元気に生活しているだろう姿を見てみたい。最後に見たのがあれだから、切実に思う。
しかし、完全に初対面を決め込むとしても、何か口上が欲しい所だ。と、いうか出なければ無理だろう。
どうせなら、もっと爽やかな体操のお兄さんみたいな風貌だったら良かったのに……!!
グリードーはそう思うが、ウォルフィでも誰でもが聞いていたら、そんな姿のお前、キモいよ。と冷静な顔で言うだろう。
誰が自分達をこんな姿にしたかは知らないが、その誰かに向かって不満を思っていると、ビョォウッ!と強い風が吹いた。案外強い風だったので、少し身構えると、
「どぇうあぁっ!?」
自分から一番離れているリーオンが何やら奇声を上げた。
「何だよ」
風が収まった後、隣で座っていたウォルフィが呆れたように訊く。
「新聞!顔に張り付いてすげービビった!!」
これが証拠です、と言わんばかりにリーオンは新聞を掲げた。
「だからってなぁ………」
半眼で睨んでいたウォルフィが、その眼を見開く。そして、リーオンから新聞を奪い取り一箇所を見詰めた。
「面白い4コマでもあった?」
覗き込んでアホな事を言ったリーオンをどついて、ウォルフィはグリードーに新聞を見せた。
「おいグリードー!!此処!!求人募集の所!!!」
何やら凄い剣幕のウォルフィに、グリードーは素直に其処を覗き込んだ。
「!!!」
そして、ウォルフィがリーオンからそうしたように、新聞を奪い取り其処を何度も読んだ。
急募・DDT・要員3名・当方本気です!
文章の中で、その文字が大きく見えた。
グリードーは昂ぶる感情のまま、ぐしゃ!っと新聞を握りつぶした。そして。
「行くぞお前らー!!!」
『ぃよっしゃぁ!!!』
勢い込んで立ち上がる3名。
しかし、人間の姿になったってのを忘れたので、グリードーは空を飛ぶつもりで大ジャンプしてそのまま地面に撃沈して、ウォルフィもいつもの癖でリーオンの上に飛び乗って下のリーオンがべちゃ!っと潰れて。
何してんだよ何やってんだよと言いながら、騒々しく走って行った。
その3人の背を押すように、追い風が吹いた。
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