:All-Saga
いつだって放課後は待ち遠しいが、この日ほど待ち遠しい日もそうそうないだろう。朝からシュウはそんな事を思っていた。
すぐさま話してしまいたい所だが、そこはぐっと我慢した。学校の違うディーノも揃った所で言い出そう。そう決めた。
さて、待望の放課後だ。
無理煮でも引きずって行こうと思っていたマックとメグだが、どうしてか2人とも、自分と同じくらい秘密基地に行くのを急かしていた。何だろう?と首を捻りながらもシュウも道を急ぐ。キックボードに2人を乗せて、シュウは風のように走った。
半壊している秘密基地だが、使える所はまだ使えた。以前使っていた場所も、そんなにダメージは受けていない。
まるで競争するように其処へ着いてみれば、ディーノがすでに座っていて、彼もみんなが揃うのを待ちわびていたように到着した自分達を見るなり表情を輝かせて腰を上げた。
そして、
「皆に聞かせたい話があるんだ!」
「皆に聞いて貰いたい事があるの!」
「皆に聞いて欲しい話があるんだな!」
「なぁなぁ、オレの話聞いてくれよ!」
と、4人はほぼ同時に言った。そしてほぼ同時に言い終えた。
セリフはよく聞き取れなったものの、だいたい同じ内容なのはなんとなく聞き取れた。
さっきまでとは打って変わり、4人はしーんと黙った。
えぇと、と切り出したのはディーノで。
「皆から話してよ」
「そんな、あたしが最後でいいわよ?」
「でも、メグも凄い聞いてもらいたいそうだったんだな」
「----よし!」
と、シュウが言う。
「こんな時は、公平にあみだくじだ!!」
毎度アホらしいシュウの提案だが、この場は皆それに従った。
で。
「じゃぁ、まず僕から」
と、ディーノが言う。
「このごろ父さんの会社、注文が増えてきたみたいで従業員を増やす事にしたんだ。で、新聞に広告を出したら、すぐに希望者が来てね。その人達、3人だけど友達同士みたいでとても仲がいいんだ。皆に紹介したいと思ってる」
「次はあたしね」
と、メグが言う。
「昨日池に帽子落としちゃって、どうしようって困ってる時にちょっと年下の男の子が池に入って拾ってくれたの。すぐに仲良くなっちゃって、今度皆にも紹介するわね」
「今度は僕なんだな」
と、マックが言う。
「昨日、いつものハンバーガー屋さんの所で、女の人に会ったんだな。とっても優しい人で、皆に紹介したいんだな」
「最後はオレだな!!」
と、シュウが言う。
「いやー、昨日ねずっちょ探してた時に木から落っこちまってさー。うわー、落ちる!こりゃもうだめだ!って思ったらやたらデカいにーちゃんがオレの事受け止めてくれてな?最初すっげーこえー!とか思ったけど、話すとちょっといいやつみたいだから、今度皆にも会わせるな!」
シュウがいい終わり、またさっきのような静けさが戻ってきた。
皆、同じ事を感じているのだ。
「……なんか、おかしい……ていうか、不自然じゃない?」
「不自然?」
マックが尋ね返した。
「だってなんか、皆が同じ時期に誰かに出会って……」
「でも、誰かが仕組んだとは思えないよ」
ディーノのセリフに、そうよね、とメグも頷くしかなかった。
「メグもマックもキザ夫も考え過ぎだって!!まー、こんな時もある時あればあるんじゃね?」
「意味が解らないよ!そして僕はディーノだ!」
「シュウってば、本当にお気楽なんだから……」
ディーノが怒り、メグは溜息をついた。
「でも、一度に友達が増えるのは嬉しいんだな」
マックがにこにこして言った。
そう、嬉しいんだ、とシュウも思う。
どうしてか、訳も解らず嬉しくて。
でもどうしてかが解らないから。
少し、哀しい。
丸い窓から入った風が、4人を撫でてまた空へと戻っていった。
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