その日街に風が吹いた



:WN-Don't cry




 ぺいっと放り出されて、その時ようやくピヨピヨしていた意識が戻った。
 と、思ったらまた頭を殴られた。
「そんなバカスカバカスカ殴るなよ-------!!!」
 座ったままざかざかとウォルフィから遠ざかり、頭を腕でカバーし、涙眼でリーオンは訴えた。
「っさい!お前一体何してんだよ!この前、サーガ達の記憶については、自分達の方から干渉しないって、お前もかなり嫌々だったけど賛成しただろうが!!」
 凄い剣幕で言い立てられ、うぅ、とリーオンも怯む。でも、自分にだって思う事はあるのだ!
「なっ、何だよ、この前は自分だってグリたん達の事非難してた癖に!」
「俺はグリードー達に言ってもいいけど、お前が言ったらそれを反対するのは俺しか居ないだろ!」
「……ごめん。一瞬納得しかけたけど、やっぱりなんか腑に落ちない」
「とにかくだ!」
 力技でウォルフィは押し切った。
「坊ちゃん達に思い出してもらいたい、っていうのは変わらねぇよ。
 でもな、それをするのは俺らじゃいけないし、俺らじゃ出来ないんだよ。サーガとパートナーになってるあいつらじゃねぇとな」
「……ぅ〜………」
 正論を言われ、リーオンはぐうの音も出ない。
「そんな訳で、記憶を穿り出すような事は、もう止めろ」
 それに、あの時は弱虫と詰ったが、その気持ちが実際にディーノを目にし、少しは解る。
 ふとした拍子に思い出しかけたのか、ぼうっとしたり、その後自己嫌悪するみたいに落ち込んでいたり……おそらく本人は無自覚だろうけど。
 まだ遊ぶのが仕事、というような年頃の子供があんな顔をするのを見ると、正直胸が痛む。
 自分達は思い出してもらわなくても構わない。だから、もう無理に思い出すな。いっそそう言ってやりたいくらいだ。
 ふと。リーオンが何だか静かなので、座っている所に何気なく視線を移すと、
「っ!お、おい!?」
 一体何時頃なのか知らないが、リーオンがぼろぼろと涙を流して泣いていた。自分が思わず声を上げた時、ずひ、と鼻を鳴らす。
「だってさ、またこうしてこの世界に居れて、本当に嬉しかったんだ。グリたんとウーたんに会えたってのもあるけど、またあの楽しい毎日に戻れるんだって、そう思ってたから。
 やり直しなんかしたくねーよ。前の続きがいい。姐さんが言ったみたいに、辛い記憶もあるけど、それも全部思い出して欲しい。辛いかもしれないけど……でも、一緒に居たじゃん」
 そこまで言って、また涙が出てきたのか鼻を啜る。
 サーガ達に思い出してもらえないのが哀しいのか、あるいは幼い子に強いている自分が嫌なのか。
「リーオン……」
 投げかける言葉が浮かんでこないが、とりあえず名前を呼んで座り込んでいるリーオンの頭をぐしゃぐしゃっと掻き混ぜる。
 何か言ってやらないと、何だか「復活しなきゃよかった」とか言ってしまいそうで、そのセリフはあまり聞きたくなかった。
 何故自分がこの地に立っているかは解らない。けれども。
 こうしてこいつとまた会話が出来て、それは凄く嬉しいから。
「まぁ、何だ、ほれ、まだ思い出さないけど、それで決まった訳じゃねーし、まだ時間はあるんだし。な?
 それに坊ちゃんは覚えて無くても俺は覚えてるんだから、今はそれで我慢しろよ」
 何だかよく解らん理屈だな、と言ってる最中からウォルフィは思った。
 が、リーオンはぐぃ、と大きく涙を拭い、それからウォルフィに見せたのは笑顔だった。
「うん、そーだな。ウーたんは覚えてるんだもんな」
 頬に涙の跡があるが、いつものリーオンだ。
 それにほっとして、
「だからウーたんじゃねえっての!!」
 びず!と手刀を落とした。

 そんな2人の上空で、風が渦を巻いていた。





4大レジェンズの面々はサーガが思いだなくてしょんぼりだけど、ウーたんはそうじゃないから一人勝ちー!!みたいな話。
まぁ対で繋いだらウーたんにはそりゃニコルだろうて。あんなに当たり前に背中乗っちゃってるもんねーうふふー(しかし「激闘サーガバトル」のパッケージ裏でニコル(じゃないけど)に乗ってる部長を見て狂喜乱舞したヤツ)