穏やかな昼下がり、だ。
いつもは外でまったり過ごしているのだが、今日は室内で寛いでいた。ベットの上で、壁に凭れて座る。
大きな窓は開けっ放しで、風がゆっくりと心地よさを運んで来て、ウォルフィは自分の銀糸をそれに靡かせている。もっと風を感じてみたくて、ふと目を綴じてみたら、膝の上に何かがごろん、とやって来た。目を開けて確認するまでもない。リーオンだ。メリッサの手伝いを終えて、飛んでやって来たのだろう。
「ウーたん何か気持ち良さそーだね」
膝の上でごろごろしたまま、リーオンが言う。
「解るか?」
「うん。風が気持ちいいから?」
「まぁな」
さすがトルネードというか、風には敏感みたいだ。
「お前も気持ちいいだろ?」
「ん〜〜……」
ネコを撫でるみたいに、髪を触れていると、何だかリーオンがとろんとしている。
「風も好きだけど……ウーたんに触られてる方が、気持ちよくて好きー」
ころん、と寝返りを打って、仰向けになる。ウォルフィと視線が合うと、えへへ、と笑った。
ウォルフィはそんなリーオンの喉元に手をやり、数回くすぐってからゆっくり撫でた。途端、リーオンが撥ねる。
「うひゃ!?何、何してんのウーたんっ?」
「お前ネコっぽいから、こーしてやったら気持ちいいかなーって」
いたずらっ子の笑顔を浮かべて、ウォルフィは顎裏を撫でる手を止めない。
「ネコじゃねーって!」
ガバっと起き上がり、リーオンが噛み付くように言う。前からのやり取りだ。最も、大分関係は変わったけど。
ウォルフィは悪びれもせず、
「そっかそっか。ならこっちの方がいいか?」
そう言い、無遠慮に胸へ手を伸ばす。
「あっ……んっ!ちょ、ウーた………っ!」
ふざけてではなく、明らかにそうとしている手の動き。服の上からだったのが、直に潜り込んで来て一層体が戦慄いた。
頬に赤みがさし、吐息に熱が篭る。感じ始めている様子を間近で見て、ウォルフィがぺろりと自分の口元を舐めた。獲物を前にした獣みたいに。
「んっ……ウーた……今、まだ昼過ぎ………」
「嫌か?なら、止めるけど?」
ウォルフィがそう言うと、リーオンは泣き出しそうな顔になる。
「だめー……止めないで………」
もっとして、と言う代わりに、リーオンはウォルフィに口付けた。
「んっ……くぅ、…んん……っ」
頬と言わず、身体全体を上気させ、手を胸の下辺りに心許無さそうに置いている。身体の内にウォルフィを受け入れて。ウォルフィの下腹部の毛並みを感じるくらい、根元まで埋まりきっている。その状態のまま、動く事無く絡み付いてくるリーオンの熱い襞をウォルフィは楽しんでいた。埋め込んだままなのだが、何度か達した後の為か、中にあるウォルフィの自身から快楽を拾おうと、内壁がひくひくと蠢く。妖しげに。それに伴い、リーオンが切なそうに眉を寄せる。
「ゃ、もぅ……ウーたん動いてよぉ……ッ!」
それなら、と足を抱え、わざと小刻みに動く。今より深く挿れ、その反動で僅かに前後に揺さぶるだけだ。そうすれば、きゅう、と中が締まる。しかし。
「ちが、違うのー……!もっと一杯動いてってばぁ……っ、こんなじれったいの、やぁ……ッ!!」
嫌々をするように、首を振る。
「ったく、わがままだな、お前は」
「ウーたんが意地悪……んっ、ひぁッ!!」
抱えた足をしっかり掴み、リーオンの要望通り、激しく突いてやる。焦らされたせいで、結合部から滴るくらいに溜まりに溜まった蜜が内部で大きな音を立てた。
「ふぁ、んッ……!あ、ん!あッ、あ、あぁッ!」
しかしウォルフィとしては、下からの水音より、リーオンの口から出る、感じているのを隠しもしない、あられもない嬌声の方が欲情を駆り立てられる。その声を、もっと聞きたい。もっと乱してやりたい。自然と挿れるのが深くなり、動きも激しくなってくる。
「ひゃぁ、ッぁあン!……ぁ、あッ、すご、い……すごいよぉウーたぁん……!!」
「何がどう凄いんだよ」
リーオンに手を伸ばし、額に張り付く前髪をかき上げ、ん?と顔を覗きこむ。
「んっ、ぁ、熱く、て……ッ!いっぱい、奥まで入っ、ちゃって……っっ、」
はぁっ、はぁっ、と限界が近いらしく、上がった息で言う。
「…………むずむずしてるところ、……ぁッ……たくさん擦られて……っ……こんなっ……気持ちいいの……!」
口に出した事で改めて自分の状況を思い知ったのか、言いながら中からとぷとぷと熱い液が零れる。それをリーオンに知らせるよう、大きな音を立てさせながら律動した。
「んゃぁぁあっ……えっちなおと……ッして……あっ、ふぁ、あっ、あっ、ぁんっ、ん-----!!」
イっちゃう、とリーオンが思った時は、すでに身体はそれに向かっていた。
「ぁ、あ-------ッ………ッッッ!!」
身体の中は伸縮を繰り返し、外側はその衝撃に痙攣する。大きな波をやり過ごし、深く息をするリーオン。しかし、中の包み込んでいるウォルフィは変わらず自分の中を広げ熱さを保ったまま動いている。
「んっ、ウーた……あぁん……ッ!!」
「どうした?」
名前を呼ばれたので、そう応えてみる。するとリーオンは、潤んだ眼をウォルフィに向け、
「ごめ……ふぁ、……オレだけ、気持ちよくなっちゃって……ひゃ、ぅん!」
グ、と角度を変えて突かれたせいか、一瞬大きく身体が撥ねた。それを処理しきれない内に中を擦り上げられ、文字通り中がぐちゃぐちゃになっていく。
「やぁ……だめ……ッ!……また、オレだけイっちゃうぅ……ッ!!」
ぎゅ、と下のシーツを掴んで耐えてみせようとしたが、無駄な抵抗しかならず、数回突き上げられた時また快楽が頂点に達した。
「んぁあぅっ……!ど、しよ……気持ちよくって、とまんないの……ッ!!-----あぁぁあああんッ!!」
ウォルフィはまだ1度も熱を吐き出していないのに、自分だけ。快感が弾けた後、申し訳なさそうに唇を噛むと、それを舌でなぞられる。リーオンの心境を察したみたいに。
「馬鹿だな。こんな熱くてヒクヒクしてる中に挿れて、気持ちいいに決まってるだろ」
「でも……ぁッ、……ウーたんイってない……あ、あッん!」
喋っている間に、動きが休まれる事が無い。むしろ、セリフの合間に零れてしまう嬌声を楽しんでいるようだった。
「そりゃ、気持ちよかったらイくけどよ、イかないから気持ちよくないって訳でもねぇよ。
それに、第一、気持ちよく無かったらこんなになってる筈ねーだろ」
「ぁはッ……あ、ぅ、あんッ!」
自身が怒張しているのを知らしめてやるように、途中まで引きずり出し、一番太い箇所で出し入れする。その時に開く隙間で、リーオンのがあふれ出す。それを見てるだけでも、自分が昂ぶるのが解る。
「あ、ひッ、んんッ!あぅッ、ウーた……ッ!解ったっ、……解ったよぉ……ッ、だから、だからぁッ……!!」
入り口を広げては、抜かれて戻されるだけで、一番欲しい箇所には来てくれない。そのもどかしさに、リーオンの腰が揺れる。もっと奥に来て、という具合に。
「沢山イきたいか?」
「あっ!……ぅん、んッ……!」
イきたい、という意志を表す為、何度も何度も頷いた。内股がすでにガクガクしてきているのだ。
「はぁッ!…ぁっ……で、でもぉ……!!ウーたんと一緒がいい、……ッ!!」
強請るように、欲しそうにウォルフィを見る。この双眸に、ウォルフィはどうも弱い。予定なら、もっとリーオンを攻め立ててやるつもりだったのだが。
「解ったよ」
「んく……」
仰け反って露になっている喉元に、ちゅぅ、と吸い付く。自分のものだという印が、リーオンの肌にひとつ増えた。
「ウーたん……あ、ぁ……」
膝裏に手をあて、ぐ、と押し上げる。より一層露になった結合部はしとどに液を垂らしていた。はしたないくらいに。
「……あんま、見ないでよぉ……」
ウォルフィの視線を其処に感じ、頬を一層上気させる。
「何で。そそるのに」
「ぅー……」
意地悪、とリーオンは睨む。そんな表情は、ウォルフィが一番深くに自身を入れた時、霧散したが。
「ひゃ、きゃぁうッ!んぁッ!あは、あぁぁッ!あぁぁぁああんッ!!」
自分は一緒にイきたいのに、ウォルフィは意地悪に感じる所ばかり突いてくる。身体が撥ね、快楽が溜まっていく。達しそうになるのを、リーオンは必死に堪えた。それでも、ウォルフィは中々達しようとしない。熱が溜まるのはウォルフィも同じで、リーオンの中でびくりと反応しては質量が増している。
「ふぁ、あ、おっきくなったぁ……!」
広がっていく刺激はそのまま快感で、リーオンが表情を蕩けさせた。その表情に、ウォルフィの背筋がぞくん、と反応する。
「んん、んっ……ウーたぁ……だめぇ、がまんできないぃ〜……!イっちゃうぅぅ………」
嫌々をするみたいに頭を振り、舌足らずな声で訴える。
「……もう、少し……な?………」
限界が近づいているのはウォルフィも同じだ。堪えているせいで、撥ねるくらいにビクついているリーオンの頬を、あやすように優しく撫でる。それに、リーオンも少し落ち着きを取り戻した。
「っウーた……ふぁ、……ぁっ……!」
「……はぁっ……リーオ……ンッ……!」
震える肢体を強く抱き締め、その耳元でイっていいと、低く囁く。次に突かれた時に溜まっていたリーオンの熱が爆ぜて、ウォルフィもその中へ吐き出した。
「ヤだッ!嫌だーッ!」
「嫌じゃないだろ!こっち来い!」
「ヤだ------!!」
リーオンはもがくように逃げるが、所詮ベットの上だ。しかも、情後の気だるさが残る中、あまり俊敏な動きの出来ない状態で、リーオンは呆気なく捕まった。捕まったが、抵抗は止めない。腕の中で派手にじたばたしている。
「あーばーれーるーなぁぁぁぁッ!!」
「うわぁぁぁん!!」
さっきから何を頑なに拒んでいるかというと、リーオンは目薬を避けている。散々泣かされたリーオンの双眸は、ウサギさながら真っ赤になっていた。
「お前、そんな目で明日皆の前に出れると思うのか?!」
「でも、それ沁みる------!!」
「沁みるって事は効いてるって事だ!」
「そんな根拠何処にあんだよ!!」
「だーもう、うっさい!」
「うわ!」
説得するのを早々に放棄したウォルフィは、実力行使に出た。背後から首を絞めないヘッドロックをかけ、無理やり頭を固定する。その腕を放そうとリーオンが手を掛けてたが、話にならない。
「いー加減諦めろ!」
巻きつけた手で瞼もこじ開け、強引に数滴落とした。ぎゃぁ、と先ほどの艶っぽさは微塵も髣髴させない色気の無い声が発せられた。
「痛い痛い痛い〜〜〜!!」
「今度こっち!」
「あぅ〜」
観念したのか痛みに気を取られていたのか、2回目は最初よりすんなり出来た。あくまでこの最初より、といった具合だが。
「痛いよ〜〜〜」
「我慢しろ。あッ!目をかくな馬鹿!」
「ふぇ〜〜〜」
目を擦ろうとしていたのを、寸前でその腕を掴み取る。行き場をなくした痛みのやり処は足へ回り、シーツを蹴っている。
「うぇ〜〜痛い〜〜………」
涙が出てきたようで、ぽたぽたとウォルフィの上に涙が落ちる。目薬のせいだとは解っているが、やっぱり泣かれるとどうにかしてやりたい、と思う。ウォルフィはリーオンの身体を反転させて、ぎゅ、と割りと強く抱きすくめた。こうすれば、目をかく事も出来ないから一石二鳥だ。
「ウーたんの匂いがするー」
頬を摺り寄せて、へへ、と綻ばせる。笑ってくれた事に、ウォルフィは安堵していた。こちらも自然と表情が笑みになる。抱き締めていると、胸元にじっとりと涙が染みてくる。ウォルフィはそれを気にせず抱き締め続けた。リーオンも、ウォルフィの背中に腕を回し、しがみ付くようにしている。
5分くらい経っただろうか。抱き締めたまま動かないリーオンを訝しんで、呼びかけてみたが返事が無い。
まさか、と思ってそっと覗き込むと、案の定すやすやと能天気な寝顔を浮かべて眠りについていた。それに突っ込み入れてやろうと口を開いたウォルフィだが、そのまま、また閉じた。
苦笑を浮かべながら頭を撫でて、その眠りをさらに促す。すると、リーオンが顔を綻ばせた。
俺も寝るか、とウォルフィは、リーオンを抱き締めたまま横になり、眠りの世界へと落ちていった。
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