*ニコルさんの一人称で




 オオカミってのは、満月の晩にはとても危険になるらしい。力が漲るそうだ。
 ウーたんはそりゃオオカミの姿だけど、レジェンズだから関係ないと思ってたんだけど。

 頭の中が真っ白になって、徐々に景色を感じ取れるようになる。絶頂の後は、いつもこんな感じだ。聴覚には、オレ自身の荒い息遣いだけが聴こえている。さっきまで耳を犯していた嫌らしい濡れた音は、今はしない。でも、中がたっぷり濡れているのは感じられる。
 また、いっぱい濡れちゃったなぁ。
 息をしながら、そう思っていると。
「ふゃ……っあ!」
 横になっていたのを、ぐい、と腕を強く引っ張られ、強制的に半身を起こされる。中にはまだウーたんが入ったままだから、中で擦れて、身体が意思と関係なく撥ねる。
「あ、あ、あぁー……っ!!」
 繋がったまま、どんどん身体が起される。重力が手伝って、ウーたんがさっきよりもっと奥まで入ってるみたい。入っていくのに合わせて、オレの口から自分でも吃驚するくらいの、甘ったるい声が出る。恥ずかしいんだけど、声を出してるともっと気持ちいいような気がするから。
 これだけされても、まだ快感が欲しいんだなぁ、オレって。
 でもさすがに限界が来ているようで、身体に全然力が入らない。中のウーたんに奪われてるみたいだ。
「おいおい、しっかりしろよ」
 陸に打ち上げられたクラゲみたいに、くたっとしているオレにウーたんが言った。
 クツクツと、喉で笑っているような意地悪な笑い。このまま気の済むまで弄ばれた後は、食べられちゃうんじゃないかなって思うくらいの。死ぬのは嫌だけど、ウーたんがお腹一杯になるのは、嬉しいかなとちょっと思う。
「ん……まだ、する、の?」
 出来れば、ちょっと休憩欲しいんだけどな。だって、たったこれだけ喋るのに、随分頑張らないとなんないんだもん。
 ウーたんは、返事の代わりみたいに、オレの頬をべろりと舐めた。それから、首に。何度も首と頬を往復して、それから口に近づいて、舌だけを絡めるキスをした。これをキスって呼ぶのか、解らないけど。舌が外に出ているから、空気のひんやりしたのと、ウーたんの舌の熱さとの対比で、自分がしている事がはっきり解ってとても興奮する。
「はぅ……ん………んッ!」
 むに、と無遠慮にウーたんの手の平がオレの胸を包んだ。強いけど痛く無い程度、つまりオレが感じるくらいの強さで、揉む。
「んは……はぁ……っ」
 そうされると、また息が上がって、息苦しさに口を軽く開ける。そこから、唾液が滴る。多分ウーたんのも混じっているだろうそれは、胸元にぽたりと落ちて、オレはそれにも感じてしまう。
「っぁん!」
 手の平全体で下から持ち上げるように揉んでいた指先が、胸の先端をきゅ、と掴んだ。それに、溜まらず声が上がる。その拍子に、ウーたんの舌が外れちゃった。どうしよ。怒ったかな?怒ったウーたんの、何が怖いっていうと、えっちな事をしてくれなくなるって事だ。だって、オレ、もう一人じゃイケないし……ウーたん見てると、したくなるし……
「ご、ごめん……」
 だから慌てて、今度はオレの方からウーたんに近寄る。でも、ウーたんはひょい、とそれを避けてしまった。やっぱり、怒ってるんだ…… じわり、と零れるくらいに浮かんだ涙を拭ったのは、ウーたんだった。
「口が塞がってたら、苦しいだろ?」
 言うと同時に、腰を動かす。いや、動かされたと言った方がいいのかな? たった一回、突き上げられただけで、じぃん、と頭まで甘い痺れが駆け抜けて、入っている所がヒクヒクする。
 もっと、今の感じが欲しい。今以上のが欲しい。キスされるのも気持ちいいから、されながらしてもらったら、もっと気持ちいいのかな? こんな風に思った事は、オレは我慢する事は出来ない。
「……キス、しながらして……」
 少し身体を乗り上げて、ウーたんの顎裏を軽く噛んだ。動いた時に、とろり、と中から熱いのが零れた。ひくり、と其処が反応する度に溢れている。 
 また、ウーたんを濡らしちゃったかな……いつだったか、オレに入れていた所を中心に、水でもぶっかけたみたいに濡れていたのを見て、すごい驚いた。ウーたんは驚いているオレを、むしろ楽しそうに見ていた。って事は、いつもそんなに濡らしていたのかな。
 ウーたんの胸を摩ってみたり、自分から腰を動かしたり。そうやって改めて口に近づくと、今度は仕方ねぇヤツ、って言いながらも、オレの望んだようにしてくれた。
 ぴちゃぴちゃとか、くちゅくちゅとか。そんな音が、上からも下からもしている。自分の中がウーたんで一杯で、オレはとても幸せに思う。ずっとこうして貰いたいけど、やっぱりそれは無理だよな。
 でも、ずっとこうしていたいなぁ……
 気持ちいい。とても気持ちよくて、自分が誰だか訳が解らないくらいまで感じる。それはちょっと怖いけど、されてるのがウーたんだから、オレは安心して、荒れ狂うような快感に、素直に身を投じる事が出来るんだ。
「はぁっ……あ、あッ!あぁぁッ!!!」
 あれ?なんかオレの声が聴こえる……って事は、また口離れちゃった?
 むぅ、ウーたん、し直してくれればいいのに……
 がくがくと揺さぶられる中で、オレはまたウーたんに口を寄せていく。でも。
「あぁっ、あーッ!」
 何があるのか知らないけど、ウーたんが入っている所のすぐ上の所を撫でられると、凄いビクビクしちゃう。なんか、胸の先みたいにぷくってなった所があるのかな?でもそこよりうんと感じて、摘むようにクリクリされると、悲鳴みたいな声しか出ない。
「ひ、は、あぅッ!んあぁぁっ!やっ!ウーたんそこだめッ!触らないでぇ……ッ!」
 そこを弄られると、本当に呆気ないくらいにすぐイっちゃう。イくのは全然嫌な事じゃないけど、その分すぐイっちゃうのがなんか、勿体無くて。それに、なんか、やっぱりちょっと怯えてるんだと思う。もし許容を超えてしまったら、自分はどうなってしまうんだろう、とか思って。
「本当にお前、ここ弱いな」
 だめって言ってるのに、むしろウーたんはもっと弄ってくる。さっきより強く。
「やぁっ!あッ、ダメって、言って……あ、ぁ、イく、イっちゃう、イっちゃうってばぁ……!!」
 イく、と言って、そうして欲しいのかやめて欲しいのかは、自分でもよく解らない。でもウーたんはそんなオレの声を聞いて、出し入れしている動きを早くした。短い間隔で、何度も何度も奥まで突かれて、波が引かない内にどんどん詰め込まれていく。満タンになって、それでも頑張って収めようとしたのが一気に溢れる。それがつまり絶頂だ。
「はぅ、ん……気持ちい……いっぱぃ、……ぁあ、気持ちいいー……」
 自分でも、何言ってるか解らない。だって、中のウーたんが熱くて、いっぱいで、
 ん、ゾクゾクしてきた……っ!
 イっちゃうんだ。もっとウーたん感じてたいけど。でも感じてると自動的にイっちゃうんだもんなぁ。
 あ、ダメ、もう、      堪え、きれ、      な
    ん、ウーたん好き、
  あぁ、     ぁ、       あ

   弾け     る


 -----------ッッ!!!!


 ………ん、………頭、髪……撫でられてる……気持ちいい……
 状況が把握出来るくらいに意識がはっきりしてきて、うっすら目を開けると、やっぱりウーたんが撫でていてくれた。ふと気づけば、オレはウーたんの胸に倒れこんでいた。そういや、なんかバフッ!とした気がするなぁ。
 汗で髪が張り付いて気持ち悪いのを、ウーたんが直してくれている。嬉しい。
「息、落ち着いたら、またするからな」
 なんて事を、ウーたんが言ってくれた。えぇと、ちょっとこの辺で勘弁して欲しいような……でもまだウーたんが入ってる状態で言えば、そのまま強制突入されるのを考えると、息が整うまで待った方が賢いだろーか?
 ふとウーたんを見上げれば、その後ろに満月があった。満月の夜は、まだ終わってないんだ。
「……ね、ウーたんてやっぱり満月だと興奮する?」
 オレは何となく、訊いてみた。ウーたんは、いつもみたいにはぁ?と顔を顰めて。
「アホかお前。オオカミの姿してても俺はレジェンズだろ」
「んだけどさ。でもウーたん、満月になるといつもより凄いし」
「凄いって……そりゃ、お前の方だろ?」
 え?今、何て言っての?
 オレの方?
「え、嘘だぁ」
「嘘じゃねーよ。満月の夜だと、お前すげー感じ易くなるんだぜ?すぐイくし、沢山濡れるし」
 ???? え、そうなの?そーなの? でも、なんか言われてみると、そんな気もしないよーな。
「今まで意識してなかったけど、言われりゃ確かに満月だったな」
 なるほど、と納得しているようなウーたん。でも、オレは全然すっきりしないぞ。
「でもオレ、オオカミじゃねぇよ」
「そんな事、俺が知るか。まぁ、ネコも月と所縁が深いみたいだしなー」
「あぁ、そうか……って、ネコでもねぇー!!!!」
 ニコルはまだ我慢出来ても、ネコは許せん!!ネコは!!何でなんて理由訊かれても困るけど!!
 オレは怒ってるのに、ウーたんは可笑しそうに笑う。そうして、オレにキスをした。それが大事にされてるって思うのは、自分勝手な錯覚かな。
 キスをする前、顔を動かした時に、ウーたんの綺麗な銀髪が、綺麗に光る。それは月の光を反射してるから。
 三日月でも半月でも綺麗だけど、満月の時がやっぱり一番綺麗。
 ……だからかな?ウーたんがいつもより綺麗だから、オレも一杯ドキドキしていつもより乱れちゃうんだろうか。
 ……ま、いいか。
 心から好きな、大事で大切な人と深く繋がる悦びを、夜が明けるまで繰り返した。