「ウーたん、ウーたん」
と、リーオンはいつものように間抜けな笑顔と間抜けな呼び方をしてやって来た。
「なんだよ」
と、返事してやると。
「あのね、オレ彼女が出来たよ」
「……あー、そ。良かったな」
「うん」
リーオンはやっぱりにこにこ笑っていて。
「だからもう、ウーたんと遊んであげられないね」
「……誰が、」
と、俺が言い終わる前に、リーオンは後ろを向いて駆け出して行ってしまった。その先に、小さい影が見えたような気がする。
誰が何時、俺が遊んでもらったってんだよ。本当に勝手な事ばかり言ってくれるヤツだ。最後まで。
…………
今はまだ、リーオンの背中が見える。
「-------。リ、」
どすっ
「ぐっ?」
腹に来た衝撃で、俺は目を覚ました。開いた目に飛び込んだのは、天井と、何故かそれに向かって伸ばされた自分の手だった。何を掴もうとしたのか。
さて、俺の安眠を妨害しれくれた物の正体だが。
「……コノヤロー」
すぐ横で寝ていたリーオンの腕だった。結構しっかり乗ってくれている。苦労してそれを退けようとしていると、また、
どさんっ
「どぉっ!」
そうだ、腕は2本あるんだ。もう片方も圧し掛かる。
あーもう!起こさないようにと配慮したのが間違いなんだ!ウラァ!と力いっぱい退ける。しかし、リーオンはそれでも起きなかった。何てヤツだ。
えーと、なんで俺はコイツと並んで寝ているんだ?考えながらぼやける思考に、酒をしこたま飲んでいたのは判った。空き瓶が散らかっているし。どうもリーオンも飲んだみたいだ。酒臭い。酔ってそのまま寝ちまったか。
てか、それより。
-----あのね、オレ彼女が出来たよ
-----だからもう、ウーたんと遊んであげられないね
あれは、夢だったんだな……
あー、良かっ……
……て。何で安心しなきゃなんないんだよ。まるでリーオンが離れて行くのは嫌みたいじゃねーか。別にこいつに彼女が出来ようが結婚しようが、あー、何いい訳じみた事を誰かにするでもなく俺はしているんだ!
がしがし頭を掻き毟り、ふと横を見れば口開いて涎を垂らして幸せそうに寝ているリーオン。
「…………」
なんとなくどころかはっきりムカついたので(理由は何であれ原因はコイツで間違いないから)、鼻を摘んでやる。ふにゃ、と呻いただけで起きない。摘むのを止めないでいると、苦しそうに眉を寄せたので離してやる。と、また間抜けな寝顔に戻る。で、また摘むと苦しそうになる。
何気に楽しく思えて、結局あいつが起きるまで続けてやった。
面白いからやったんだ。
隣に居るのを確かめる為じゃない。
<END>
|