ラブリィ・ベイビー



注意!
 危険な程パラレルです。シュウが女の子しててシロンが人型です!!
 それでもドンと来いな人だけ進んで下さいね!!
 話のテンションと方向はだいたいいつもの感じです。










 いつもいつも唐突で突拍子が無くて、ついでに脈絡も無い訳の解らない事を言うのは、決して今更ではない。
 のだけれど、今この瞬間はその性格がいっそ憎かった。
「なぁでかっちょ!」
「シロン」
 訂正したけど、相手は気にするでもなく。
 自分のセリフを続けた。
「でかっちょ、大変なんだって!」
 何が、とシロンが促す間もなく、シュウが言う。
「胸ちっさいと、恋人どーしのイトナミ?ってヤツさぼってるとか思われるぽいから、オレの胸、おっきくして!!」
 がぶしゅ!と何かが自分から溢れたみたいに思えたが、それは錯覚だったよーで。
「…………は、はぁぁ?」
「はー、じゃ、ねーよ!早くして!」
 シロンのシャツの胸の部分をぐいぐい掴み、強請る。
 早くしてって……そんな。いいの?(いいわけ無い)
「……待て。待て待て待て」
 顔を俯かせ、額に手を当てる。待て、と言っているのは相手なのか自分なのか。
「とりあえず。何をどうしてそうなったかを、聞かせてくれ」
 シロンの視界がぐらぐらしているのは、地震で家が揺れているのではなく、理性が揺れているからである。
 そんな風に自分と戦っているシロンには気づかず、シュウはなんでもない事のように言う。
「だって。シロンがもっと恋人らしくしろって言うから、そういう雑誌みたいなの読んでみたんだ」
 そしたらそう書いてあった、と言う。
 なるほど。とシロンは思った。
 こいつ、思いっきり間違った選択しやがったな、と。
 雑誌に頼るのはいい。シュウは一応自分が初恋らしいから(それを思い出しては時々悦に入ってるらしいよ)そういう事は何も知らない。だから、とりあえず世間一般を知るのには大変いい事だと思う。
 しかしそれだって種類ってものがある。シロンとしてはメグと一緒にきゃいきゃい言いながら学校で見るよーな、可愛らしいティーン誌でも見てくれれば、とか思っていたのだが。
 多分。シュウの読んだのは学校で捲ったら教師が顔色変えて取り上げるよーな代物だったみたいだ。どんな表紙だったのか気になる所だが。
「なー、早くしろよー」
「………っ、」
 グラリ。
「……………」
 よし、堪えたぞ。偉いぞ。
「……いや、だからな。お前胸大きくするのってどんな事か知ってんのか!?揉むんだぞ!触る所じゃねーぞ!揉むんだぞ!揉む!!」
 そんな揉むって所を強調しなくてもいいんじゃないでしょーか。
「んん〜?でも普通の恋人同士がするんじゃねーの?」
「それはっ……まぁ、するかな。うん、する。しまくってる、かな?」
 納得させられてどーする。
「何だよ、じゃ、すればいーじゃん」
 何を躊躇うのか、とばかりにそう言い、ほい、とばかりに胸を突き出すようにふんぞり返る。
 あぁ、どうして、どうしてこんな色気も汁気もないガキのこんな仕種すら、可愛いと思えて仕方ないのか……シロンは頭抱えて苦悩した。でもってすげぇ触りたい。
 あうあう、と悶絶するシロン。
「………もー、早くしろってば!」
 いつまでも行動に移さないシロンに業を煮やしたシュウは、その手を強引に取り、そして自分の胸に押し付けた。
 ふにり。
 
柔。
 感触が、手のひらから伝わって頭の芯までじーんと痺れさすような……って、もう何がなんだか解らないが、柔らかいって事だけがシロンの中にいっぱい詰っている。
「揉むんじゃねーの?」
「あ、あぁ」
 ゆっくり。
 触れている、というか乗っかってるだけのような手に、力を込めてみる。
(-----う、わぁ………)
 柔らかい柔らかい。柔らかい。
 ほっぺたとかの柔らかさと全然違う。物理的に、何が変わった訳でもないのに。
 もう片方の手も、添えてみる。小さいシュウの胸部は、シロンの大きな両手のひらですっかり隠されてしまっている。
 しばらく、というか時間の感覚なんてすっぽり抜け落ちてしまっていたのだが、若干余裕が出来たシロンは、シュウの反応が気になった。特にこれまではうんともすんともなっていない。
 胸に集中していた視線を、ちら、とシュウの顔へとずらしてみる。
 シュウもまた、ふーん、とかへー、とかいう声が聴こえそうな顔で自分の胸に置かれたシロンの手を見ていた。その様子に、少し落胆する。
 もっと、顔真っ赤にしたりして、目とか潤んでいたりしてたら良かったのに。
 まぁ自分もそこまでの事は(まだ)してないし、シュウだってようやく二桁になったお子様だ。性感帯なんて目が出る前どころか、最近ようやく種が撒かれたのかもしれない。
 ……って、事はこれから、こいつの何もかもが俺の手に委ねられているって事か………イイな、それ。
 途中でふられるとか、自分のテクニックが悪くてちっとも開花しない、という現実は思い浮かばない所、似たもの同士と周囲が言うのは否めない。
 将来の事を考えつつ、シュウの薄くてでも柔らかい胸を堪能していると。
 くん、と指に何かが引っ掛かったような気がする。
 何だ、と気にする前に、シュウが。
「わ、あぁっ!?」
 ビクっと肩を跳ね上げさせて、ばばっとシロンの手を払い除け、自分の腕で胸を庇うように後ずさる。
「……………」
「……………」
 えーと。とシロンは思考を働かせる。
 さっきまで胸触っていて……何か指に当たって……多分それは胸の先端で……指に当たったって事はそういう事で。
 そういう事で。
 そういう事で!!!
 ギューンと一気にボルテージが挙っているシロンに怯えた訳でもないけど、シュウは慌てて。
「も、いい。もう、止め。中止」
 あわあわ、とセリフを言うのもままならないみたいに、その場を去ろうとする。
 のだがそれをシロンがさせてくれる筈も無かった。
 バカヤロ今までで最大級の魚逃がして堪るか-----------!!!
「どぅわぁぁ!?」
 ぐん、と腕を引かれて、あまりの勢いに足が宙に浮いた気がする。
 引っ張られて落ち着いた先は、さっきまでソファの代わりみたいに腰掛けていたシロンのベットの上だった。
 でもって、寝転がってて上にシロンが覆いかぶさっている。とても真剣な表情で。
「……何処行くんだよ。まだ、途中だろうが……」
 低い声に、シュウはひぃー!となった。
「だーかーら、もう止め!なんか変だからしない!しーなーいぃぃー!」
 じたじたと暴れるシュウのTシャツを、ぐいと喉元までたくし上げる。
「ぎゃー!何してんだよお前ー!!」
「本当はこうするもんなんだよ!大人しくしてろ!」
「やーだー!やだやだやだやだ------!!!!
 父さーん母さーん!!」
「馬鹿!親なんか呼ぶな!俺悪いやつみたいじゃねーか!!」
 しかしこの現場を見れば、100人中ほぼ全員がシロンは悪役だと思うしかない。
「うわーん!わぁぁぁん!うえぇぇぇぇん!!」
 泣くならもーちょっと色っぽく泣けよ。せめて。
 むき出しになった腹を撫でて、シロンは勝手な事を思う。
(……ったく、俺とした事がとんだ間抜けだったぜ。中身が完全無欠なガキなせいで、すっかり騙されちまった)
 与えれば、応える。そして、求める。そういう本能は、シュウだって人ならば初めから持っているのだ。
「わぁぁぁん!やだー!やだよー!!!」
 今はこんな風に泣いてるけど、いざ行為が始まればこいつだってその快感に病みつきになるだろう(と思う)。
「だーっ!大人しくしろ!最初ちょっとチクっとするだけだから!!」
 予防注射じゃあるまいし。
 が、シュウだってただ泣き喚いているだけじゃないのだ。そうしながらも、頭の中では必死にここからの脱出策を考えていた。
 よく解らないけど、なんとなくしちゃいけない気がするから。これも何となくだけど、シロンにとってもよくない事のような気がしたので、だからシュウは一生懸命考えたのだ。
 考えて考えて。
 そして。
「シ、シロン!!」
 いつもみたいにでかっちょと呼ぶと、いつもみたいに無視されるかもしれないので。
「あ?」
「全部、バラす!!」
「……は???」
「って、会計委員が言ってた!!!」
 なんでそこでグリードーが出てくるのか、頭を捻る……が。
 はた、と気づく。
「……おい、本当にグリードーが言ったのか……?」
 今伝う汗は、これからの興奮と、シュウを押さえ込む為のせいじゃなく。
 多分、冷や汗。
「うん。オレが何か変な事されそうになったらそう言っとけ、って言われた」
「そ、……そうか………」
 全部というからには全部なのだろう。
 まだシュウに片想い中、燻った恋心を持て余して夜通しで一緒に酒飲んで貰った事とか、いざって時に名前呼べないと困るからお面つけてもらって練習した事とか、素っ気無く連れて行くように見えて実はその手の雑誌読み撒くってデートプラン立てているのだという事(当然グリードー巻き込んで)とか。他にも色々。
 全部。
 全部。
 ……全-----部。
 バラす、と。

『へぇぇー、でかっちょってばそんな事してたんだ。ぷぷっ、ださー』

………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!
 だめだ!それは、いかん!!!断じて!!!
 俺が必死に(必死なんだ)築き上げてきたイメージがぁぁぁぁッッ!
「……でかっちょ?でかっちょー??」
 言うやいやな、パタっとシロンが止まり、凄いなぁ会計委員、とか思いながら硬直してしまったシロンを気遣うように覗き込む。
「……あー、いや、大丈夫だ……
 ……ごめんな、急に変な事しちまって……」
 ははは、とか乾いたスマイルしながら、上にくしゃっとなったシュウのシャツを直してやる。多分その行動は無意識で。
 意地悪だけど、大事にされてるんだな、って解って、シュウは胸がぎゅうとなるような、くすぐったくなるような。
 自分はこの人は好きなんだなぁ、って。幸せに思う。
 ベットの上では、ほにゃ〜と幸せに浸っているシュウと、最大の弱みを握られている伏兵の存在に気づいて蒼白しているシロンと。
 なんとも対照的な2人が居た。




 後日。
 会計委員、ありがとな!とかシュウが礼をしたから、あんにゃろこんな年端のいかない子供にもう手ぇ出しやがったのか、とグリードーの知る所になった訳だが。
 それがどうなるかは、今後のシロンの行動次第。




<終われ>





なんつーか。底って存在しないもんなんだねぇ。ははははは。
まぁその後も色々あるんですが、一応話にしようかと思っています。
イチャラブした2人を書けるのはいつの事やらって話だね。