秋雨も終わり、季節はすっかり移り変わり。葉の色も緑から赤へとなりつつある。
「もうすっかり秋なんですねぇ、爆殿……」
窓の外をふいに見て、カイは秋を実感している。
けれど。
「秋っ……!だから、何、だッ!!この手退けろッ!!」
じたじたと大きな腕に閉じ込められ、あまつさえ衣服の中に手のひらが滑り込み、息を絶えながら爆が言う。
「いえ、ですから、涼しくなったので温めあおうかと」
しゃあしゃあと言ってくれる。
そりゃ、自分だってカイの事は好きだし、こういうのは好きだからするという事も解ってる。
でも恥ずかしいものは恥ずかしいんだ!!
「今日はすると言ってない!!」
「しないと言った覚えもないかと思いますが……」
「カイのくせに口答えする気か!!生意気な------!!」
「カイのくせに……って………」
あんまりなセリフに、カイが引き攣った声を出した。
「……じゃ、止めます?」
ぽそっと吐かれたその言葉に、爆の抵抗がぴたっと止む。
「………、…………、……………ッ!!!」
真っ赤になって震えている……って事はそういう事で。
だったら素直になってくれればいいのに。
とか本音を言ってしまえば、今度こそ拒絶させるので、カイは違う言葉を選んだ。
耳元で囁いてみれば、馬鹿者ー!!という爆の声が響く。
自分の息遣いが荒い。自分を潰さないように倒れこんだカイも、また似たような状況で、それには口元が緩んだ。自分だけだと、やっぱり虚しいから。
ふ、とそのまま瞼を閉じようとしたら。
「-------ッッ!!」
ガリ、とでも聴こえたような。
カイが、爆の首筋に歯を立てたのだ。
「いっ-----!!なんて事するんだ、貴様は!!」
血でも出てるんじゃないか!?と思って手を当てる。血は出なかったけど、へこんでいるのが解った。
「あー……申し訳ありません……」
カイを見ると、そこまでするつもりじゃなかった、というような顔をしている。過失だろーが故意だろーが、痛いものは痛いのでさらさら許す気は無い。
「何で噛むんだ!本当に犬か!!」
本当に、ってどういう意味なんだろーなーと引っ掛かるものは感じだけど、ここは自分に非があるので(当然だ)謝るカイ。
「本当にすいません。だって……」
と、爆に覆いかぶさる。なんだ?と思っていると、先ほど噛んだ箇所に舌を這わせた。全体を使うように。
「………っ!?」
ビク、と反応する。カイは、なおもそれを続けた。
「おい……っ!ちょ……」
「夏の間ですと、中々跡が付けられませんし、でもこれからは長袖でしょう?」
「ま、待てっ!ぅ、あっ……!!」
首から胸へ、小さく熱い感触が転々とする。
「……は、……カイ……、」
そう呟くと、汗ばんで額に張り付いた前髪があがる。嬉しそう、とも見えるカイの顔があった。
「跡、つけても……いいですよね?」
そう言って。
さて、後日。
「そーいやさぁ、爆ってハイネック着てる確率高いよな」
ふと、ハヤテがそんな事を言う。
「…………」
爆は、黙る。その理由を考えもしないで、ハヤテは続けた。
「夏もたまにあったし、秋冬なんか大抵だよな。ハイネック、好きか?」
「…………」
爆は無言のままで、そして。
「……え、ちょっとなんだよ。手に何持ってんだよ。そしてどうして俺に近づいてるんだよ!
えぇ!?俺なんか悪い事言った!?言った-----!!?なぁ、デッド、ってうわぁ呪う気満々だ--------!!」
ハヤテの悲痛な叫び(断末魔?)が、木霊した。
で、カイはカイで。
「よう、男前」
「ははは……」
右目にでっかい大痣拵えていた。
<END>
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