相似するもの。





 どうも爆は子供っぽさを隠すたがる傾向がある。
 大人ばかりに囲まれた環境もあるが、やっぱり本人のプライドなんだろうか。
 そうするから余計に可愛いと言えば、多分怒る……というか一回顔を真っ赤にした爆に殴られてこちらも頬を赤くしたものだが。
 かと言って、気づいていて黙認出来る程、カイは大人ではなくて。
 つい、ちょっかいをかけてしまうのだった。
「はい、爆殿」
 と差し出されたそれに戸惑っている。
 それ自体でなく、渡された事に。
 カイが取り出したのは、ドーナツ屋のポイントカード。何点貯まればもれなく品物と交換されるあれだ。
「何で、」
「だって集めてるんでしょう?」
 そう言えば、面食らったような顔。それを自分だけが見れて、優越感に浸ると同時に気づけた自分を褒め称えたい。
 気づいたきっかけと言えば、自分と行ったばかりの店に、後日またデッドと行っていたのを知ったからだ。
 不味くは決してないが、所詮チェーン店なので味が格段良い、という訳でも無く。ただの偶然だろうか、と思っていた所に、その店のキャンペーンのCMを見たのだった。
 もしかして、これだろうか。あまり率先して物を欲しがらない爆には珍しい事だが、考えられない事はない。
 試しに前を通れば、アイテムの載っているポスターをじっと見ていたので、確信した。
 自分のポイントは5点。集めた頃をざっと逆算して、これでもう足りるのではないだろうか。
 しかし、憮然とする爆。
「……それは、貴様の分だろう」
「いやぁ、私はそういうのに興味がないので……あ、」
 自分の失言に気づいたが、遅かった。爆がますます怒ったような表情になっている。これで恩を売ろうなんてさらさら思っちゃいないが、かといって臍を曲げてもらいたい訳でもない。
「……どうせ、オレは子供だ。あんな湯のみ欲しがって」
 ドーナツ店のくせに、配布されてる小物は何故か湯のみだった。ちなみに蓋と木製のティースプーン付き。湯飲みは2つあって、セットではないが、白黒対象の物となっている。客に多く買わせようとする目論見が窺える。
 白い湯のみには黒い兎が、黒い湯のみには白い兎が書かれている。黒い兎は蹲り、白い兎は跳ねている。両方とも、目が赤い。
 なんてゆっくり思い出している場合ではない。
「ば、爆殿?別に子供扱いしている訳では」
「…………」
 爆は返事をせず、ずんずか歩いていく。
「爆殿〜」
 情けない声を出し、爆の後ろをついて行く。いつも通りの光景だった。




 そんな風にちょとっとハプニングがあったが、とりあえずカイは爆にチケットをあげる事に成功した。
 今までのも爆が持っていた事もあり、その足で交換しに向かった。
 品物を受け取った時、爆が嬉しそうに顔を綻ばせたのを見れ、カイも幸せだった。
 微笑んでいた爆だが、隣を見、カイが居たのだという事を思い出したのか、顔を引き締めた。カイの幸せは短かった。
 さて、後日。
「なぁ、チケット爆にやっといてくれよ」
 と、前の席のハヤテが例の点数券をカイにほいっとあげる。
「何でハヤテ殿が知ってるんですか?」
「デッドに訊いたんだよ」
 事も無げに言う。
 そうか、爆殿はデッド殿には素直に言うんだ……
 それぞれに役所があるとはいえ、やっぱりちょっぴり悲しい。そんな気持ちはぐっと堪えて。
「もう、交換しちゃいましたよ」
「あ、そうなんだ」
 どうしようか、これ。と手のチケットをじっと見る。
「乱丸殿にでもあげたらどうですか?」
「それもそうだな」
 彼には妹がいる。こういうのは好きかもしれない。
「ハヤテ殿は集めてないんですか」
「うーん、家には勝手に家具を増やすと怒るヤツが居るからなぁ」
 あっはっはと力なく笑うハヤテのバックに、不吉に薔薇が舞い散ったのは気のせいだろうか。
 さて乱丸だが、やっぱり妹が集めてるとの事だった。
「一個はもう持ってるんだ。でも、もう一つも欲しがってさ」
 参ったな、と困ったようにでも何処か頼られて嬉しそうな表情を見て、シスコン、という文字が2人を過ぎった。
「白黒あるから、自分用が出来るな」
 ほのぼのとしている乱丸を見て、シスコン、という文字を彼に定着させる2人。
「黒いのが俺なんだろうけど、そうしたら茶々の兎が黒いのになってしまうなー」
 ンな事ぁどうでもえぇわ、って感じで暴走し始めた乱丸をそっと見守る(放置)2人。
「まぁ、俺が使うとしたら、やっぱ黒い方だなー」
 湯飲みが載っているちらし(乱丸が持っていた)を見て、ハヤテが呟く。
「そうですか?」
「だって白い方の湯のみの兎、黒くて目が赤くて、お前みたいで微妙なんだよ」
「微妙って酷い、」
 じゃないですか、と言おうとして、はた、と思い出す。
 湯飲みを貰う時、爆は、

『白と黒、どちらにいたしますか?』
『白い方を』

 て事は。黒い兎だ。
 て事はもしかして。もしかするのだろうか。
 あんなに欲しがるのも。
 2人から少し距離を置いて、カイは緩む口元を隠す。
 ……まぁ、自分も同じだ。
 好きな人に似た印象のものが欲しいと思うのは。
 カイの持ち物には、ネコが入っているのが結構多い。
 それも、黒い仔猫。
 誰を彷彿させるかは、当然。




 ちなみに後日、同じ店で今度は酉の絵の付いたマグカップを配るキャンペーンが始められた。
 ひよこのが欲しくて、デッドがこっそりポイントを貯めていたのは、爆とライブだけが知っている。




<END>





まぁカイは犬だと思うんですが。犬にした場合は茶色で。中型より大きく、純血統じゃないイメージね。

乱丸に妙な設定がついてしまった……まぁ、このまま突っ走ってもらおう。
ハヤテが聡くない上にデッドがより巧妙なの感づかれません。気づけよ!