集合時間はしっかり守る





 昼はシーフードピザを主にフライドポテトやサラダ等。
 夜はブイヤベースにギリシア料理の何か焼いた魚にオリーブオイルかけたヤツ。デザートはマンゴーとココナツのシャーベット。
 昼も夜も魚だったが、自分の食欲は何も不満を訴える事はなかった。
 今日は、博物館、水族館等、見て回る施設を行った。明日は、プール兼遊園地で思いっきり身体を動かすのだ。
 なんとかって、名前がついてた、でっかい水鉄砲でずこばし遊ぶのだ!
 ハヤテは思う。こんな充実した日こそ、日記を書くのに相応しい!
 しかし、ホテルの部屋に戻ればそんな決意を忘れ、ぐだぐだするのが学生の性分ってヤツだ。
 ベットのシーツの上に寝転び、満喫した表情のハヤテ。
(あぁ、なんて幸せなんだ……こんなに幸せなのは)
「お前、今日爆にあまり手を出さなかったな」
 むっくり、と唐突に起き上がり、カイに言う。
 デッドと爆は居ない。海が見渡せるオーシャンバス(早い話が露天風呂)に行っているからだ。
 2人はそんなに風呂に興味はないので、部屋のシャワーで簡単に汗を流した。
「え、そうですか」
 今まさにシャワーを浴びたばかりのカイは、長い髪を持て余し気味に拭く。
「今度は何企んでんだ。俺にも余波が飛ぶからなるべく止めろよな」
「私がしでかす事全てが計算ですか」
 今まで全部がそうだったじゃないか、とツッコミたいハヤテだ。
「別に、ただ普通に旅行を楽しみたいな、と思ってるだけですよ。
 よく考えれば、ドキドキしてくれるのは、私と2人きりの時だけでいいんです」
 それに気づくのにかなりの時間を使ったものだ。
「ふーん、てっきり俺は押してだめなら引いてみろ作戦でもおっ始めたかと思ったぜ」
「そんな使い古された手段はハヤテ殿に差し上げますよ」
 あと2分、爆達が帰ってくるのが遅かったら、部屋で紛争が勃発される所であった。




 さて。翌日早朝。
 カイの朝は早い。朝日と共に起きるのである。
 さすがに夏の日はそういう訳にもいかないが、6時には起床してしまった。
 他の皆は、まだ寝ている。8時に朝食を食べる予定だから、まだ、起きるべき時間にはだいぶあった。
 このまま室内に居ても手持ち無沙汰なだけだし、散歩でもしようか。
 と。その前に。
 極限まで足音を殺し、爆のベットに近寄るカイ。昨日はハヤテにあんな事を言ったが、見るべきものは見たいのである。
(よく眠ってますねー………)
 すやすやと柔らかい枕に頭を埋めて眠る爆。寝顔は歳相応なのだが、日ごろの爆を思うと幼く見える。
 こんな風に寝る爆を見る機会は少ない。寝顔という括りなら見た事があるのだが、いかんせん憔悴した顔なのだ。何をして疲れているかは想像に任せる。
「爆殿………」
 そっと呟き、手を伸ばす。
 その時、外でカモメがけたたましい声で鳴いて、何だ何だと皆が起きてしまったこととデッドを結びつける事は、強引だろうか。




 朝食はホテル内のレストランでとった。
 ここのレストラン街は2つ。海が見渡せる最上階か、海が近い1階か。4人は1階に来ている。
「水着で入る遊園地なんて珍しいよな」
 むぐむぐとしながら言うハヤテを、食べながらはやめなさい、とデッドの注意が入る。
「水をメインに設計したら、どう考えてもたっぷり浴びてしまうアトラクションばかりになったから、からそういう方針が取られたそうだぞ」
 内部事情にそれなりに詳しい爆。
「確かに中途半端に濡れるよりその方が楽しいよな。……て、お前は何を影を背負ってんだ?」
「……ほっといてください……」
 カイは携帯電話を名残惜しげに持っていた。撮ろうとしたのは言うまでもない。
「ま、いーや。早くメシ食って水着買おうぜ」
 いつもなら沈んだカイの発する瘴気に当てられるハヤテだが、旅行でテンションが高いせいか、苦にならない。
 水着はここで買う算段になっていた。およそ水に関する施設をそろえたこのアミューズメントパーク。販売店も然り。お風呂のアヒルから海に浮かべるシャチのボートまで揃う。水着専門店だけで8件はある。うち3件は女性物のみで、1件はブルジョワジーお達しのブランド物だけがある。
 そうだ、爆と一緒に水着を買うのだ。楽しみにしていたイベントじゃないか、とカイは自分を奮い立たせたのであった。




「カイ」
 と呼ばれたのは1階レストランから部屋へ戻る途中で。デッド達は前を歩いて何かを話して……というかハヤテが喋りかけてデッドが頷くなり無視するなりしているだけで、会話にはなってないが。
「はい、何ですか?」
「いや、お前の方こそ……何か、あったか?」
 爆の顔は結構真剣で。まぁ、爆はいつだって真剣で真っ直ぐなのだが。
「何か……とは?」
 そんなに心配されるような事でも、したりされたりしただろうか。少なくとも、今はまだ旅行に来て昏倒するような目には遭ってない。
「今朝、顔洗ってよく考えてみたが、あんまり昨日から、なんだ、その」
「……襲いかかったりしてない、と?」
 まさか、と言ってみれば爆がこくん、と素直に頷いたので、カイはよく考えないと気づかない事と、そんなに心配されちゃった事とどっちをたそがれればいいのか、迷う。
「……私だって、理性ってものはありますよ」
 この言葉にどれだけの人がツッコミを入れただろうか。
「まぁ、爆殿がそうした方がいいというな「それはやめろ」
 セリフ半ばで遮られてしまった。ちょっと、ショックだ。
 ぺしょん、となったカイに、爆が付け加える。
「だから、だな、だから……そーゆー事されると、その事しか考えられなくなから、……皆と楽しむ旅行に、それは、嫌だ」
 少し怒ったように眉を顰めるのは、照れているからだ。
(……なるほど)
「じゃぁ、2人きりの時ならいいんですか?」
「へ?」
 爆が吃驚したように返事する。
 ということは、無自覚だったのだろうか。
 それはそれで嬉しい。
「なら、その時まで置きますから。それまでのお楽しみですね」
「え、え、ちょ、ちょっと、待、カイ?」
「おーい!エレベーター来るぜー!!!」
 ハヤテの声に、行きましょう、とカイが手を引く。
 混乱状態の爆だが、違う、と否定の言葉は出なかった。




<続く>





2日目始まり〜。
カイが強気だ!何があった貴様!!

次は大型レジャープールランドです。
最近プール入った事ないからなぁ(泳ぐの嫌いだし濡れるのも嫌いだし)
想像力でGO!!