昇ったばかりの太陽から心地よい光。 レースのカーテンを通してこの部屋の主も照らす。 軽やかに階段を駆け上がる足音。 よくある朝の風景だ。
「……おい、おいって」 「ぐぅぅぅ〜〜〜………んー………」 結構強めに身体を揺すっているというのに、今だ目覚めない。 上半身裸で、その逞しい体躯を惜しげもなく晒しながらイビキをかいて寝ている有様だ。幸い(?)寝相は悪くない。 思い切って殴ってみてもいいだろうか。 しかし自分は女。相手は男。 どれくらいの効果が望めるかも怪しいし、何より…… 「おいピンク!!起きろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおッッ!!」 ……本来なら自分が男手相手が女。どうして手を上げられようか。 爆の必死の大音量に、ようやくピンクは目を覚ました。 「うにゅにゅ〜〜?………あぁ、爆か。そー言えば女になってたんだっけ」 「……言うな。それは。ほら、朝飯だぞ。さっさと起きろ」 「ん〜。もうちょっと寝てから……後で食べる」 「だめだ。食事というのはきちんと決まった時間に食べてこそ、その効力を発揮するものなんだからな。 ……今食べなかったら、朝飯は抜きだ」 「うぅぅぅ〜、爆の鬼ぃ〜〜」 背に腹は変えられない。 ピンクは渋々ベットから降りた。
なんてちょいと不機嫌だったピンクも現金なもので。 「うーん、今日も朝からご飯がおいしい!!」 男になった分、胃袋も大きくなったのか、見てるこっちが腹一杯なくらいの食べっぷりだ。 「特にこのオムレツがいい!いつもとちょっと味が違ってて、でもすんごく美味しいの!」 「おや、解るかい?それはあたしが作ったんじゃないんだよ」 とシルバが言った。 此処にはピンクとシルバと爆。 それでシルバが作ってないというのなら…… 「えぇ!って事はこれ爆が作ったの!?」 「そんなに意外か?」 意外というか、旅に出ていた時は外食かカイが作っていたので、爆が調理するイメージがピンクの中に無かっただけだ。 「すごいすごい!爆って料理上手なのねー!」 「全くお前も見習いなよ」 はぁ、と沈痛な溜息を一つ。 「”泊まさせてもらってる身分だから”って率先して家の事を手伝うんだよ?この子は」 「へー、別にあたしは気にしないのに。強いて言えば悪いのはあの変態ズ」 ピンクの言う”変態ズ”とは雹と激で、予備軍にはカイが居る。 事の発端は激が爆を女にして既成事実を作ろうとして、雹がそれに加担したので疑う余地もなく二人が原因だ。 「そういう問題ではない。それに、何時もの生活リズムが狂うのは嫌なんだ」 と、いうのは本音半分建前半分というのを、ピンクはきっちり解っている。 全部の皿を空にして、ピンクは両手をパン!と合わせた。 「ごちそーさまでした!!……で、爆、服買いに行くよ」 「服だぁ?」 食器を片付けている爆はきょとんとした。 「だってあんたの持って来た服きつくて入んないんだもん」 「そうだな、オレも貴様のズボン借りてるがウエストが緩くて」 と、同時に言った二人は同時に互いを向き合って。 「ちょっと、それってあたしが太ってるっていうの?」 「おい、それはオレの身体が貧弱だというのか?」 ギロ、と眼の飛ばしあいをするのだった。
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