おー・まい・がーる”C”!





 その日、ごくごく有り触れた町の服やに二人の客が訪れた。
 少年と少女で、少年の方は武闘家になるべく、毎日鍛えているのだなというのが伺えた。
 少女は、その双眸の前に立たされたら真意を喋ってしまいそうな、そんな雰囲気を湛えていた。
 二人はフリーサイズの男物上下セットを買い、急いで店を出た。
 兄妹にしてはあまり似てなかったから、友達、といった所だろうか。
 それにしても、と店の主人は二人が出て行ったあと、ふと思う。

 ――どうして少女の方は、サイズの合わない男物の服を着ていたのだろうか、と。


(あああああ〜、遅い〜遅いぃぃぃぃぃぃぃ!!)
 ピンクは忙しなく周囲に目を配らせ、やきもきしていた。
 と。
「ピンク〜〜〜〜!」
「ピンク殿〜〜〜!」
 カイと爆の二人が袋を抱えやってくる。
「早く!遅いじゃない!!」
「これでも走って来たんだぞ」
「あんたも一度白昼の下で裸になれば、あたしの気持ちが解る!!」
 爆は思った。ンな気持ち解りたくはない、と。
 激の身勝手な術のとばっちりを受けてしまい、男になってしまったピンク。
 普段ピタッと身体にジャストフィットした服を着ている彼女……いや、いまは彼だけど……は、男になった為に衣服がどえらい事になってしまったのである。
 カイと爆から袋を貰うと、急いで着た。
 別に今日は格段寒い、という訳でもないが、衣服がない状態というのは人類にとって屈辱ともいえる羞恥である。
「ん〜……買って来てもらって何だけど、もう少しセンスってものをきかせないの?」
「……本当に何だな……とりあえずの急ごしらえなんだから、我慢しろ」
 ピンクの今の服装は、ジープの写真がプリントされたシャツに紐で結ぶ布のズボン。ではあるが、何だが男性ファッションモデル誌にでも載ってそうな容姿だ。
 服がありきたりな分、素材のよさで勝負が決まる(何の)。
「あ、爆、あたしの靴貸してあげる。ぶかぶかでしょ。走ってる時ぱかぱかいってたし」
 靴も履いたピンクは横に置いてあった自分の靴を差し出す。
 確かに男→女になったら今までのサイズではでかい。歩くだけでも脱げそうだった。
 そして爆はピンクの靴に履き替えて………
 ……それでも爆にはやや大きかった。
(……女になったオレはピンクよりも華奢なのか……?)
 本当は男のプライドがちくちく痛んだ。
「あーあ、それにしてもあたしがこんなんで帰ったら、おばーちゃん心臓大丈夫かな〜」
 くるり、と身体を捻り自分の容貌を改めて見る。惚れ惚れするような逞しい体躯である。……元から男だったら。
「で、爆殿はどうされます?」
「どうするって……帰るが?」
「いえ、ですから、何しろ女になってしまったのですから、生活に色々と弊害が……」
 ピンクには解った。
 カイは何だかんだ理由をつけて爆を自分の家に招きたいだけだ、と。
「いらんは心配するな。なんとかなる」
「…………はい」
 が、それをピンクが邪魔するまでもなく、爆には通じなかったようだ。爆よ、天然であれ!!
 もう日が暮れたし、この事態についての対策はまた後日、という事になった。
 爆と別れた道すがら、ピンクはカイに言う。
「ねぇ、まさかアンタ、爆によからぬ事考えてないでしょうね?」
「えぇ、勿論です。何を言ってるんですか。
 私は師匠じゃないんですから、今の爆殿なら力づくで押し倒せそうだとか、あのふくよかな胸に顔を埋めたらさぞや至福だろうとか、そんな事はこれっぽっちも考えてません!!」
「……よく解った。この危険人物その3」
 勿論その1は激でその2は雹である。
(それにしても、爆……一人で本当に大丈夫かな)
 世の中いい人だけではない。
 どーしよーもないヤツも居るのだ。
 しかも、爆の周りにはそういうヤツがかなり多いのだった………



相変わらず短いねー、おー・まい・がーる!!
しかしカイがむっつりになってしまいました。
あの師匠にしてこの弟子ありです。
いいんだろうか、この扱いで………でも書いてて物凄く楽しいんだv(アホタレ)