人間誰しもが生まれ持ったものに満足しているとは限らない。
自己性不一致症候群――これは精神と肉体の性別が合致しないものである。今までは単に精神病と思われていたが、現在ではホルモンの異常という説もある。対処法としては当然精神が望む性別にしてやる事だ。
つまり生まれてたら死ぬまで、その人の性別が一緒だとは限らない。
しかし。
それでもそれは本人の合意の上である。
自分の意思ぶっちぎって性転換された日には、
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と、ひたすら「あ」を連発するしかない訳で。
ピンクと爆は約1分34秒、「あ」の音しか発してはいなかった。
ピンクは爆を見た。そして思った。
(何で……何であたしが男なんかに!
ていうか爆が女の子になっちゃって!!しかもやや胸がボリューム不足だけどその分華奢さが一際だっていかにも護りた〜い!って感じだけど、それを拒んでそうな意思の強い瞳がミスマッチで魅きつけてならないわ!)
爆はピンクを見た。そして思った。
(どうして……どうしてオレが女なんかに!!
そしてピンクまでも男に!何故だか身長が激ぐらいまであって体格も遜色劣らず無駄のなく鍛え抜かれた引き締った体躯をしていて鬱陶しいかと思われた長髪も鼻筋通った顔に合っている!!)
そして二人は思った。
((う……羨ましい!!))
偶然にもお互いが自分の望む身体となっていたようである。
しかしその事実が二人に何の意味があろうか。
「爆くん!!」
「のぅわ!?」
茫然自失となった爆は無防備だった。なので容易く雹に抱き締められてしまった。
「ふふふ、女の子になった君も最高だねvさ、僕と法的にも結ばれよう!!」
「えぇい!何を言ってるんだ!離れろ―――――!!」
しかし今の爆の力では雹の粘着力には勝てない。
ぎゅぅ!と抱き締め、肩に顔を埋めてスリスリする。やりたい放題だ。
「んー、爆くんいい匂い……v」
「…………なぁぁぁぁにをしてるか、そこ―――――!!」
続いて我に返ったピンクが爆の貞操の危機を回避させるべく、雹に向かってキック(大)!
「ふん、貴様如きのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!?」
雹はそれを避けるまでもなく受け止めようとした。
だがしかし。
ゴギュシュ!!バキメギメギズシャァァァァァァァァ!!
ピンクの蹴りは雹のガードを物ともせず、雹は吹っ飛んで樹を2,3本折った。
「………………」
そのあまりの攻撃力に、本人のピンクさえも沈黙した。
「……まぁ、GSの孫だからな……素質は十分だろ……」
「ですね……」
こんな時ですら、爆は冷静な判断をした。
で。
(やべー……いくら俺でもあんなの食らった日にゃ………!)
再びピンクが我に返ったなら、今度の攻撃目標はもれなく自分である。
「……………………
はっ!そういえば激は何処だ!?」
「えッ?あ!!」
爆達が気づいた頃にはすでに激はいなかった。
そう、彼はとっとと逃げたのである。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!!じゃぁ、あたしこのまま―――――!!?」
ピンクの声は森を轟かせた。
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