ピンクと爆は向き合い、互いに沈痛な、そして深刻な顔で話す。
「一体どうして、こんなめに遭わなきゃなんないのよ……」
と、言ったのはピンク。
しかし、その声は低く、そういえば背も高く顔つきは凛々しく、体躯はしなやかな筋肉で覆われていた。
「全くだ」
そう言ったのは爆。
だが、この声は高く、そういえば身体は華奢に顔は丸みを帯びて、その胸は隆起すらしていた。
二人は相手の身体を……かつては自分がそうであった身体を見て、改めてまた溜息をついた。
そう。
ピンクは男に、爆は女になっていた。
世界は平和になった。
しかし、爆の周りはそうでもなかった(というか平和になった皺寄せが来たというか)。
「爆!俺と付き合え!!」
「何ほざいくのさ!爆くんは僕と付き合うんだよ!!」
「おとと来んかぁ!!」
ゲシ!ドギャ!と二人を撃退するが、毎日しているため免疫(?)が出来たせいか、最近復活が早い。
「毎日懲りないわねー。パルサンでもたこうかしら」
「……効かないと思いますよ、きっと」
そしてその様を毎度眺めるピンクとカイが言う。
「く……くくくくくくくくくくくく」
と、復活したものの、頭から血液流しっぱなしな激はやおら立ち上がり、そして不敵に不気味な笑い声を発した。
誰もがついにイッたか、この変態と哀れみな視線を投げかけた。
が。
「いいぜ、爆……オメーが取り合わねぇっつーなら、既成事実を作るまで!!」
キ・セ・イ・ジ・ジ・ツ?
大胆不敵なその響きに、カイとピンクと爆は嫌な予感でいっぱいになった。
「なんなのさ、既成事実って」
「そりゃー、おまえ、もちろん……」
激は人間、ここまで邪な表情が出来るのか、と思わせる程の表情で言った。
「子供」
「出来るかアホ――――――!!」
すかさず爆の回し蹴りが入る。
しかし予想済みの攻撃だったのか、激のダメージは少なかった。
「ふっ!甘ぇぞ爆!!この俺を誰だと思ってやがる!!(皆ヒゲだと思ってるよ)
GSでしかも仙人の称号すら手に入れたこの俺!!男に子供生まれる方法なんざ18通りは知っている!!
で、ここでは爆を女の子に変えてみようと思うんだv」
「何をNHK教育番組のノリで恐ろしい事を言ってるんだ……って、雹!!?」
いつの間にか回り込まれてた爆は、うしろからがっちりホールドされていた。
「爆くん、ごめんね。僕の鋭い感性が、激の”テメー協力しなかったら後でしばくぞコラ”っていう心の声をキャッチしちゃったんだ。非力な僕を許しておくれぇ〜」
だったらその思いを馳せた輝く瞳は何なんだ、雹。
「やばい!あの二人が手を組んだらさすがの爆も危ういわ!!」
「爆殿―――――――!!」
危機を察した二人は駆け足で助けに向かう。
しかしそれより早く!
「うりゃぁ、ペンゲ――――――――!!」
激が爆に術をかける!ていうか、ペンゲって、あんた(作品違うし……そっくりさんが居るとはいえ)。
「うわわわわわわ!?」
それによって発した薄紫の縁起の悪そうな煙幕にカイは思わず怯む。
が、ピンクはかまわず突き進む!!
「爆!!」
色は薄いが不透明なため、視界は頗る悪い。
それでもピンクは持ち前の感のよさを発揮し、爆の腕を掴む事に成功した。
(ん…………?)
その時、ピンクは違和感めいたものを感じた。これも超能力のライセンスの成せる技だろうか。
しかし今は爆を助けることが先決!!
爆もまた腕を掴んでいるのがピンクだと解ったらしく、煙幕の中から素早く出る事が出来た。
「はぁ……爆、大丈夫?」
(あれ?あたし風邪でもひいたかしら?声が……それに身体が苦しい……?)
「ああ、助かった」
(?あれ、声が……この煙のせいか?)
「ピンク殿―――!爆殿、何処ですか――――!?」
カイが呼びかける。まだ、辺りには煙が立ち込めていて、誰が何処にいるのかも解らない。
風が吹き、視界を遮るものが薄れて来た。完全にそれが晴れた後に、
『どぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!??』
二人は絶叫を上げた。
目の前の人物を同時に指差し。
一体誰だ。コイツは。
あぁ、しかし。ああしかし。だがしかし。
それはとてもありえない事だが、それしか考えようがなかった。
どう見ても男だけどそのピンクの髪は!
どう見ても女だけどその三白眼は!!
「爆――――!?」
「ピンクか――――――!?」
二人の絶叫は木々すら揺らし、鳥が数匹飛び立った…………
|