「あ、納涼祭……」 爆もまた、今気が付いた、というように声を上げた。 「そう……だから……」 「仕方ないな。貴様はちゃんと仕事に専念しろよ?」 「……うん……」 まるで癌告知でもされたような沈痛な表情で、けれどそれでも激は爆の言葉にこっくり頷いた。 「まぁ、礼に関してはオレがなにか贈ってやるから、それで帳消しだな」 「…………うん…………」 激は自分の切り札がひらひらと飛んでいくのをイメージで感じた。 激は爆の事が好きだ。 それはもう好きだ。 しかし爆はその事を知らない。 それはもう知らない。 自分達の関係は、生徒会会計と風紀委員長。 先日、書類提出の際に手伝い、そのお礼にと何処へ一緒に出掛ける事を強要した。 しかし!! ここしばらくは納涼祭の準備等でクソ忙しくなるため、ンなもんに行ってる暇は無い。 上記の関係しかない自分が、尚も食い下がるのははっきり言って不自然だ。 (いっそ、ここで言っちまうか……?) いつかは絶対言う事。 好きだ。 ずっとずっと、好きなんだと。 が、それも。 「爆く――――ん!!今日の放課後、僕とデートだよ―――――!!」 ”しよう”ではなく”だよ”と断言だ。 「こーら、こらこらオメー、雹。風紀委員の前で風紀を乱すんじゃねぇっつーの!!」 接着剤みたいに引っ付く雹は、接がした時にバリッ!と音がしたような気がした。 ……こんな、何時誰が(ていうか主に雹だが)来るか解らない環境ではかなり無理だ。 おちおち告白もあったものではない。 (生徒会室はダメだな……かと言って生徒指導室じゃムードもへったくれもねぇし…… 体育館裏。…………決闘かよ) よくマンガなんかでは教室とか通学路が舞台になっているが、自分の場合そこまで持っていくのがまず大変そうだな。 それにほら、せっかく気持ちを打ち明ける人生の一大イベントなんだから、もっとシチュエーションが……… と、その時、激の頭の中で電球がピカーッ!と光る古臭い表現が使われた。 納涼祭!! これだ!爆は生徒会役員なのだから、行事には必ず参加するし!! さりげなく皆の輪から外れて告白ターイム!!よっしゃ完璧!! 「爆!俺、納涼祭頑張るからな!!」 「………へ?そ、そうか頑張れ……」 「おう!!」 爆は一応返事をしたが。 なぜ激が雹にホールドかけながらそんな事を言うのか、さっぱり解らなかった。
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