つよくなること





 自分の為に他者を押しのけて生きるのがエゴなら、
 だったら他人の為に自分を蝕む生きたかは偽善ではないかと




「教えろ」
「ヤだ」
 とかいうやりとりを、此処最近結構しているような気がする……いや、実際先週もやったな、と少し記憶を弄ってみる激。
 何を爆が教えろと言い、何を激が拒んでいるかというと、激の持つ技とか術とかの伝授だ。GCの役職は無くなったものの、それと似たような、あるいはもっと危険かもしれない冒険家になったので、そういったものは知っているにこした事はない。最もそれに頼り切るのではなく、爆としては、まぁあったら便利だろうな、と、ハサミやホチキス程度の感覚だろう。
「何をそんな出し惜しみしとるんだ。そんな大層なものでも無いだろうが」
「ヤなものはヤなんですぅー」
「可愛くなんかないぞ、その言い方」
 そっぽ向いた激に、爆が半眼で睨んで言った。


 最初は、さ

 全部教えようと思ってたんだよ。自分の識ってる事の何もかも。
 そうしたら、それが爆を護る盾になってくれるだろうと、そんな風に。

 でもさ、

 こいつ、よく考えたら自分の為に使わないんだよな
 自分が生き延びる為には使わないんだ


「教えんか」
「やだー」


 他人の為に、他人を護る為に
 その身を犠牲にして生きるのは、美しいと
 そんな風に言えるのは、無責任な第三者だからだ。

 ……誰がわざわざ好きな人死に行かせるかってんだよ。

 いくら爆だって、出来ない事はしない----いや、
 その内しちゃうんだろうな、爆だから。
 ……だったらせめて、それを遠ざける事くらいさせてもいいと思うんだ。だって俺はこいつが好きだから。

 強くなって死ぬよりかは、弱くたって生きて欲しい
 おそらくは、当人は望まない生き方


「……嫌だよ」
「…………」
 何度目かの問答の後、爆からの返事が無くなった。
「少し、ずるい言い方してやろうか」
 爆が悪戯っぽく言う。
「教えてくれるなら、そうしたらオレは此処に来る理由と義務が出来る訳だ」
「……………」
 ひょぉ、と少し強い風が吹く。


 それでも嫌だ、という激のセリフに被って


「…………」
 その言葉から少しの間の後、爆はすくっと立ち上がる。
「そうか」
「……………」
 立ち去ろうとする爆を引き止めないよう、激は自分の腕を強く掴んだ。たぶん爪の痕くらい残るだろう。
 そんな激に、爆が言う。
「そんな泣きそうな顔はするな。
 会いには来てやる。それなりにな」
「……それなりって何だよ」
「それなりだ」
 なんか適当にあしらわれてるなー、と思いつつも、それすら嬉しいのはもう取り返しのつかない末期だろう。
 爆、と最後に一言。
「……強くなる事と、弱くあり続けるのとだと、どっちが難しいだろうな」
「どっちも難しい。自分の意思を貫くのならな」


 だから決めた自分を恥じるな、とその言葉すら厳しくて、

 優しい




<了>





本でもうじうじしたの書いてるってのに。

激とカイの違いは何かってーと、激はもう自分は舞台から退いた人だと思っている所ではないかと。
カイは進む人。激は留まる人。
どっちにしろ、爆はフォローに大変だろうなぁ。