「って事でさ。
スランプなんだよ〜〜」
うにゃー、とつぶれた猫みたいに、ライブは机に顎を乗せるように倒れこむ。ライブ、そう、今はライブだ。
「なんだ、ギターが弾けなくなったのか」
「ううん。スランプはピアノの方」
あっさり言ってくれた。
「……なら、デッドで言うべきなんじゃないか?」
「……いえ、この容姿でその話題だと、より一層沈みそうでは、と思ったのですが………」
瞬きする間も無く、ライブからデッドに変わった。これは自分には出来ない事だなぁ、と爆は世間から見ると妙な感心をしている。
「別にオレはそんな風には思わんぞ」
「……そうですか」
すぃー、と静かに紅茶を啜る。ライブの時はそれはもう、ごっくごっくと音が聴こえそうに飲むのだが。
「スランプって、どうスランプなんだ?弾けないのか?」
「……えぇ、毎回同じ所で閊えてしまって……曲としては完成している筈なのに……」
と、デッドが言うと周辺がずん、と重力を増したようだった。しかし爆はけろりとしていた。
「デッド」
「はい………?」
力なく答えたデッドには、心なしか人魂が漂っているように思える。
それにもやはり、爆は平然として。
「時間あるか?無くても連れて行くが」
と、言った。
「うひょぉぉぉおおおお〜〜〜〜ッッ!」
チッキーの上に乗り、風の感じるままに声をあげるライブ。チッキーに乗るまではデッドだったのだが、いつの間にかライブになっていた。まぁ、はしゃぐのにデッドの姿では色々不都合があるのだろう。色々。
「やー!やっぱり空はいいねぇー!あはは、この前のライブ会場、あんなに小さいや!!」
「立ち直ったか」
隣の爆が訊く。
「うん!!今ならピアノだろうがフグだろうがひける気がするよ!!」
「フグ?」
とか引っ掛かったが、元気が出たようで何よりだ。
「あのさ」
と、ライブがふと爆に訊く。
「爆は、ライブとデッドと。どっちが好き?」
「? なんだ、ヤブから棒に」
きょとんとした爆は幼いと思う。と、いうか歳相応に見えるというか。
「んー、自分の意思で変えれるようになったしさ。会う時には好きな方がいいじゃない?」
「解らん事を言うヤツだな」
爆はますます首を傾げる。
「両方オマエだろ?」
どっちがいいとか、そんな事は無いと。
「…………」
それを聞き入れて、ライブはデッドに変わる。
「はい、」
それだけ答えて、爆がどっちも選ばなかった事に、心底安堵しながら。
喜びながら。
「ねぇ、爆」
ライブはまた爆に言う。
「僕の夢、知ってる?」
「世界中に自分の音をばら撒く事、だろ」
いつか言った事を、爆は正確に言った。
「うん、そうだよ」
ライブはそれに頷く。
爆が何処に居ても、僕の音が聴けるようにね
<END>
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