レイニィ・マン





   ”貴方の雨降る日の友達になりたい”

 と、いう歌がある




 雨の日は、激のくっ付きたがりの具合が普段の2倍増し……いや、もっと性質が悪くなっている。
 ただでさえ、激はやたらくっ付きたがる、というか構いたがるのだ。何故そんなに、と問うても抱き心地がいいから、と爆の範疇を超えた返事しか来ない。
 クラスの中では、頼れる人と評判の高い激。そんな激のこんな姿を見たら、皆はどう思うだろうか。
 その様子を例えるなら、大きい犬か、もしかしたら猫。ともあれ、体全体使って爆に抱き着いているというのは変わらない。
「おい、ちょっ……ちょっと、待たんか!!」
「ん〜」
 あれよあれよと言う間に、ソファで寛いでいた爆は、その同じ場所で激に押し倒されていた。押し倒されたというか、抱き着かれたまま横に倒れた、といった感じなのだが。
 じたばたと抵抗してみるのだが、いかんせんこの体格差の前では意味を成さないようだった。
 湿気を含んだ空気より、激の腕が身体に纏わりつく。
「っひゃ!?」
 こめかみと言うよりは目頭の位置。激はこの場所によくキスをする。と、いうのも爆の反応がより顕著に出るからなのだが、それを言ったら全力の抵抗に遭うだろうから、バレるまで黙っているつもりの激だ。
「俺、雨の日って好きだな」
 爆の衣服が、着ているのか単に纏わりつかせているだけなのか解らなくなった頃、激が言う。肌に唇を寄せたまま。ぞくりとした。
「な、に……?」
 上がった息で相槌を打つ爆が愛しい。
「雨の音しか聴こえなくて、窓も水が伝ってるのしか見えなくてさ。まるで此処が海の底みたいで、爆とだけみたいで」
 だから、くっ付いてないと溺れそう、と言う。
「……退廃的な妄想だな……」
「せめて、空想って言ってくんない?」
 一旦顔をあげ、むぅ、と唇を突き出して拗ねる。
 それに、ふ、と爆が微笑む。年上の激が、こうして見せる、無邪気とすら取れるこういった表情が、爆は理屈も理由もなく、ただ、酷く好きなのだ。
 そうして激も、そんな風に自分を見る爆を、やはり理屈も理由もなく、ただ、酷く好きだった。




 貴方の雨降る日の友達になりたい

 と、いう歌がある。




 雨の日も恋人で居て
 と
 激は、唄った。




<END>





唐突に思い浮かんだので、ぽん、と書きました。タイトル付けも直感で。

くっ付きたがりの度合いは雹>激>炎>カイ>現郎って感じです。うん。