ファースト・コンタクト



 本日はピンク殿の家で親睦会。
「ちょっと酒足りへんで酒ー!!!」
「アタシの愛はテキーラより情熱的ぃぃぃぃぃぃぃぃいい!!!」
 という名の新年会。
「チクショー、どうして俺だけ不幸なんだー!!」
「あっはっはー☆ハヤテばーかばーか☆
 (デッドになって)………鬱陶しいですね……刺しますよ……?
 (ライブに戻って)皆まとめてけっぱれー!(謎)」
 の、名を借りた。
「あぁ爆くん爆くんどうして僕に振り向いてくれないの!
 それもこれも電信柱が赤いのも(謎)心戦組のトシゾーがルパン3世の五右衛門に見えるのも全部お前のせいだー!」
「奇面組の妖って最初は白の革ジャンだったんだなー!!!俺知らなかったよー!!」
 えーと……
 何だろう…………(遠い目)


 周り全てが酔っ払いになってしまった中の素面って、世の中で一番立つ瀬がないと思う。
 一体何時からこうなって……多分、アリババ殿とルーシー殿が酒を持ち込まれたのが大原因だと思われるのは確実ですけども。
 全員、丸っきりの子供でもないし、シルバ殿はご友人とセーブンの温泉で療養中。
 此処には未成年飲酒を窘める良識を備えた大人は居ないのだから、まぁ、当然と言えば当然の結果だろうか。
 うーん……ここはひとつ……
 巻き込まれる前に、撤退しよう。
 爆殿と一緒に(←重要)。
「爆殿、爆殿ー?」
 壁際に居る爆殿に声を掛ける。
「皆さんこんなになっちゃいましたし、ちょっと移動しましょう?」
「あぁ、いいぞ」
 こくん、と頷く爆殿。
 今思えば、そこから異変は始まっていた。爆殿が、素直に頷くなんて。
「今年の紅白は、白組が勝ったからな」
「……は?」
「コーヒーは苦ければ苦い程、カフェインが薄いんだ」
「ば……爆殿?」
「あの世は西にあるんだぞ」
 ………………
「爆殿……酔ってます?」
 と、私が聞けば、
「何を言う。オレが酔っている筈がない。酔っているものか!酔えば酔う時、酔うならば!」
「……………」
 はいはい、酔っているんですね、と、そっと心で呟いた。


 とりあえず。
 あの悪魔の饗宴にすら匹敵する場所に酩酊状態の爆殿を置いたら、とんでもない事になるだろう、と判断した私は、サーの自宅(師匠と兼用ですが)に瞬間移動した。
 ……良かった。習得しておいて。
「何だ、一体」
「寝るんですよ」
「何故だ」
 それは爆殿が酔っているからです。
 以前、酒を飲んだ時、寝込んでしまったのを覚えている。……覚えているというか、忘れようがないというか……
 いやぁ、あの時は熟睡してしまった爆殿を護るのに、今までした戦いの中で一番集中しました。
 ま、そんな訳でして。
 今は酔っている状態だけど、眠りに移るのも時間の問題だろうと寝具を整える。
 あとは、横にしておけば勝手に眠るだろう。
「はい、横になってください」
 手を取り、ぽすんとベットにまずは腰を降ろさせる。
「んー………」
 呟いたのか何なのか、爆殿が唸る。
「んー……ふ……ふふ、ふふふふふふふ」
 そしてそれはそのまま含み笑いに……ちょっと……いや、結構怖い。
「ふっふっふっふっふっふ」
「あ、あのー、爆殿……」
「……楽しいな」
「?」
 ふと、顔を見れば。
 爆殿は、幼い笑顔を惜しげも無く、晒していて。
「こうして、みんなで集まって、騒いで……
 うん、楽しい。すごく、いいな」
 そう言って、ころころと笑う。
 ……ぁ………
 爆殿も、そう思うんだ……
 いや、別に爆殿を事を無感動で冷めた人間だとは思っていないけど……少ししか。
 でも、その辺の子よりは早めに”大人”になってしまったのは確かで。
 だから。
 こういう面もあるんだ、て思ったら……なんか……
 なんか……
 惚れ直した、って感じですか。
「私も、楽しいです」
 貴方が楽しそうだと、特に。
「そうか」
「はい」
「ずっと、楽しいままがいいな」
「そう、ですね」
 爆殿が素直に胸の深い所を曝け出しているのが嬉しい。
 今はアルコールのせいだけど、そのうち、素のままで見せてくれるように。
 いつかはそうなる筈だ。望む事は叶うと、教えてくれたのが他ならぬ彼なのだから。
 一年の計は元旦にあり。
 最初の出だしがこんな感じで……結構、いい年になりそうな気がする。
 今年こそ、貴方に。
 貴方と。
 眠くなってきたのか、目を擦る爆殿。
「爆殿、あまり擦ると………っっ」
 目から手を離す為、腕を掴んだ途端、爆殿の体が倒れる。
 咄嗟の事で、そのままベットに乗りあがってしまった。
 下で、無防備に投げ出されている肢体。
「ぅ、わ……」
 これはひょっとしなくても……
 ……凄い美味しいシチュエーションなのでは……
 は!いかんいかん!
 寝込みの、しかも酔っている人間相手に、私は何て事を!
 これから私は何をすべきだ!?そう!爆殿に毛布を掛けてあげる!それだけだ!!
 離す為に、手に意識が移る。と、その時、爆殿の手首の細さに気づく。
 ……これくらいなら……片手で一括縛りに出来そう………
 って、だーかーらぁぁぁぁぁぁぁああ!!
 違うんだ---------!!しっかりしろ!自分!酔ってるのか!?
 まぁー、とっくに酔ってるかもしれませんねv爆殿にv
 って何を一人コントをしているのか!本気で酔っているのか、自分!!!
 はぁー……早くしなければ……何か違う自分が目覚めそうで怖い……
 ベットから降りて、毛布を取り出す。
 そうして、爆殿に掛ける。これらの一連の動作を、極めて機械的に行う。
 毛布を広げて、口元にまで引き上げる時に一瞬手が止まったけど、まぁ、無事終えて。
 ふぅ、任務終了。
 申年早々狼になりました、なんて、師匠のジョークより笑えない。
 爆殿、おやすみなさい、と、最後に顔を見る。
 そうしたら。
「ん………」
 爆殿がもぞりと動いて、

「カ、イ…………」

 舌足らずの寝言。聴きようによっては、行為中の甘い睦言の発音にも似ている。
 ………………
 よし。よしよしよし。
 いいか、カイ。自分が何をすべきか、ちゃんと解っているな?
 そう、そうだ。
 
ここで襲わずして何時襲う!!
 いや大丈夫!キスだけ!キスだけだから!!!
 これだけ無防備に寝ているんだ。爆殿も、きっと私の事を憎からずと思っているに違いない!!(残念な事に、この時の私の脳内には、”これから憎まれる可能性”というのがすっぽり抜け落ちていた)
 いざ!と、再びベットの上に乗り、爆殿に覆いかぶさる。
 ぅ……覚悟を決めたといえども、緊張するなぁ……
 私の下の爆殿は、そんな事は関せずと言った表情で寝息を零している。
 その唇に、近寄る。
 別にそうしたつもりではないのに、スローモーションのように、ゆっくりと。
 あと少し、あと少し………
 と。
 こんな風に集中していた私だから。
 ヒュッ。
 と、後ろで瞬間移動をした時の、特有の空気が摩擦した音に、気づかなかった。
「ちょっとカイ!アンタさては爆拉致っ………!!」
 さて。
 今、どんな姿勢かを考えよう。
 ベットに眠る爆殿。
 の、上に覆いかぶさる私。
 毛布は胸元まで引き降ろし済み。
「ピンク殿……くれぐれも誤解しなさずぐへぁ!!」
「弁論の余地ないわぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
 ボギュルゴゴゴゴゴ!!


 一年の計は、元旦にあり。
 最初の出だしがこんな感じで……一体、今年はどんな年になるんだろう……
 とりあえず、爆殿はピンク殿が連れて帰っちゃったし、私は殴られた衝撃で奥歯が折れてないかどうか、心配でもしていようかな…………


 最後になりましたが、新年明けまして、おめで……おめで………
 ……めでたいんですよ、ね?






皆、カイが本格的に壊れちゃったよ!!
いや、此処最近草原殿とのメールで「黒いカイのネタ」を頻りに送っていたから………!!
うーん、師弟似てきたな。きっとこれでよかったんだね、うんv

最初は……真ん中くらいまでは、ほのぼの路線でGO!☆とか思っていたんだけどなぁ……
新年出だしがこんな小説で、今年はどんな年になるんだろうね(そっと目頭にたまった涙をぬぐいつつ)