嫌いなヤツには信用してないから言わない。
好きなヤツには心配して欲しく無いから言わない。
だから、どっちにしろ言わない。
「…………………」 しん、と辺りを包む沈黙が染みる。 カイの顔は目に見えて強張っていた。 ………そうだよな。ある意味、決別を言い渡したようなものだから……… けど、貴様だって薄々感づいてたんだろう?仮にもオレの事を好きだというのなら。 なのに、”でも”って思ってたんだろう? 自分の想像で、オレをそんな”寂しい人”にはしないと。 でも実は、”誰にも言わない”ってそんなに、本人にとっては別に寂しくも厳しくもないんだ。 慣れてさえしまえば。 誰かに理解してもらおうとするより、それを拒否するほうがずっと楽なんだ。 ……ズルいな。オレは。 自分の楽な方を選んで、お前を苦しめる。 「………どうしても……言ってくれないんですね?」 「あぁ」 「どんなに親身になった所で、所詮は他人だから、本当の理解なんか出来ないからなんですよね?」 「……あぁ」 いつかオレの言った事を、間違える事無くカイが言う。 ……一挙一動、言葉を間違える事無く欠ける事無く。 こいつは、本当にオレの事が好きなんだな、と思う。 好きなんだな、とは思うけど……… ………思うだけだ。 き、とオレを見据えるカイの視線は真っ直ぐ。 こいつ、気がついているのか? いや、きっと気づいて無いな。 もう、とっくに強い。 オレが、いつまでも捕らえてる訳には、いかないんだ……… 「でしたら、爆殿。 私とセックスしましょう」 ………………… 「……は?」 今……カイの口からとんでもない単語が出たような…… 気のせい……じゃないな。 思わず目が点になったオレに、叩きつけるように矢継ぎ早に言った。 「そうしたら、私は爆殿の中に入れますよ?繋がれますよ? そうしたらもう”他人”じゃありませんよね?1つですよね?でしたら言ってくれますよね?」 「カ……カイ?」 セリフの勢いに合わせるように、無意識なのか、カイはオレに詰め寄る。 オレも無意識なのか、後ろへ仰け反って、背後の樹に当たる。 言いたい事を言い終えたのか、カイは押し黙る。 ややあって。 「……だって、仕方ないじゃないですか……知りたいですよ…… ……貴方が苦しんでいるなら、私も一緒に悩みたいですよ…… ……悲しいのなら……涙したい」 だから、カイ。 オレはそれが嫌なんだ。 それに、無理なんだ。 「……好き……だからっ………」 何処まで行っても、他人は他人なんだ。”自分”じゃない。 自分じゃない以上、全て他人なんだから…… ぱたぱたと間断なく雫が落ちる。 ……これは、掬い取ってあげるべきなんだろうか? そう思って上げかけた手が、そこで止まる。 ……相手がオレでなかったら…… お前はきっと、こんな事で泣いたりする必要もなかったんだろうな。 そう考えると、胸の置くがツキンと痛む。
お前がこんなに泣いてるのにな。オレからは一滴も涙は零れない。 お前が死んでも、 オレからは血も流れないんだ………
「………爆殿?」 その呼びかけに、ふと我に返ると視界にはカイではなく、地面だけが映されていた。 慌てて顔を上げると-----ポタッ、と何かが落ちた。 「……………」 手で、其処を探ると、頬に冷たい筋があった。更に辿ると、行き着いた先は目で…… 「爆殿?どうかしたんですか?」 何処か痛めたのだろうか、とカイの心配した声。 「……違……う……… お前が、泣いてるから………… ……オレ……も………?」 カイの手がためらう事無く、オレからの涙を掬い取っていく。 頭の端で、今の状況に関係なく、にカイにキスして欲しいな、なんて思ってたら。 不思議な事に、カイの顔が近づいた。
嫌いなヤツには信用してないから言わない。
好きなヤツには心配して欲しく無いから言わない。
どんなに絆されても、これはきっと、もう変わらない。
だったら……
カイは、オレの中でどんなヤツなんだろう。
まぁ、いいか。
ゆっくり、考えよう………
「ところでカイ、何時するんだ?」 「?何をです?」 「セックス」 「!@#***△□○×ッッ!!?////」
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