そこに ”在る”という点のみを重視するなら
それが 嘘だろうと本当だろうと一向に構わない訳で
精巧に出来たギミック
素晴らしいフェイク
本物でもいいし、そうでなくてもいい
今日も今日とて雹は爆の元へ来ていた。 相変わらず爆は雹を無視して、雹は好き勝手に喋っている。 「ねぇ、爆君、僕の事好きって言ってよ」 「嫌だ」 勘違いする隙も無いくらいの即答だ。 それでめげていては恋は出来ない。 「お願い、言って。嘘でもいいから」 「……嘘だったら意味がないだろうが」 「いいんだよ、それでも」 雹が見ているのは爆の後ろ姿。 本当は顔が見たい、瞳が見たい。 その唇が音を奏でる所を見届けたい。
「僕は、君がその言葉を響かせるのを聞きたいだけだから」
キスしない時のニコチンみたいに
「……………」 「他のヤツに向けてでも構わないよ、ねぇ、だから……」 「だったら……」 と、爆が呟く。
「貴様が嘘で、オレの事を嫌いだと言ったら、オレも言ってやる」
「…………いいよ」 等価交換だね、と雹は言った。 「僕は、君の事が、きら…………」 そこで一旦唇は止まり、開いた口は閉ざされた。 「…………… ごめん、言えそうな気がしたけど、やっぱりだめだったよ」 気まずそうに肩を竦める。 「本当じゃない事も言うのは難しいね。 ……そういう事なの?爆君。 君は嘘でも好きと言えない程、僕の事、嫌い?」 (仕方ないよね、酷い事一杯しちゃったから) ふいに爆が振り向く。 まるでスローモーションがかかったみたいに、ゆっくり。 それは自分の視界だけが産み出した幻想だけども。 ああ、この双眸この表情。 ずっと側に在ったなら、自分はそれ以外に何を感じれば良いだろう。 でもそれは、この想い人の最も望まない事だから。 ……だったらせめて、飢えが暴走しない程度に、優しい偽りで潤してくれはしないだろうか。 好きになった、代償に。 「オレが、言いたいのは、だ。 すべからく言葉には力がある。軽はずみな事は何も言えない、という事だ」 「爆君にも言えない事ってあるのかい」 「ある」 「それが大切な事だったら」 「尚更だ」 「…………そう」
だったら僕は待つけど、出来る限り早く言ってね
でないと、言葉ごと君を食べちゃうからね
耳に直接吹き込めば、爆の顔が赤く染まった。
やっぱり本当がいいのかな でも嘘でもいいよ
……どっちでもいいよ 君からならね
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