夏ノ陽ノ下




 夏。森の中。
 木々の影による、天然の日差し避けのおかげで此処は結構涼しい。
 ミーンミンミンミンミー………
 夏は求愛の季節だと思う。だってこんなに「俺にかまえ!」て虫が鳴いてんだもん。
「な、そう思うだろ?」
「何がだ」
 ジロリ。
 あぁん、もう。
 1人で寛いで居る所で悪かったって。だから睨むなよ〜。
 欲情しちゃうぞ☆何つってv
「何が”何っつって”だぁぁぁぁぁぁ!!」
 ぐぎゅぅぅぅぅッ!!!
「ちょ、爆、何故さっきは解らなかった俺のモノローグをぐへぇぇぇぇぇぇぇぇ」
 2人とも大きな岩の上に座っていて、身長差という壁が無くなったのがマズかった。
 爆のヘッドロックはそれはもう、ステキに決まって、俺は1番最初の弟子が手を振ってるのが見えた気がしたよ(かなりヤバい)。
 俺が死をリアルに覚悟した時、爆の腕も離れた。
 空っぽだった肺に即座に入る、濃い緑の夏の空気。
 首(まだちょっと痛い)を摩りながら、爆に言う。
「サーに来たんだったら声かけてくれりゃーいいじゃん。
 俺来なかったら、まーた素通りしたな?」
「………………」
 沈黙が返る。
 うーん……実はさっきからこの状態だ。
 いつもの不機嫌さ……ではないような気がする。
 爆が怒ると厄介なのは、その理由を絶対の絶対に言わない事だ。
 怒ってしまった自分に怒り、それをこれまた自分の中で消化しようとする。
 しかしそれでも”爆が怒っている”と解る態度を取るだけでも、凄い事だ。
 前はそれさえ気づかせてくれなくて。
 でも俺は知ってるから。
 お前でも悲しければ泣くんだろ。知ってんだろ、だから隠すなよ、て我ながら無神経なセリフだったなぁ。
 んで、あの後爆は俺のボディに体重と加速のかかったスクリューパンチをまず決め、思わず前のめりになった所で顔面に膝、その反動で上がった頭に上からうーん、この辺の事はもういいや(冷や汗を浮かべながら)。
 ともあれ、そんな瀕死になりながらの俺の告白に心を動かさせたのか。
 爆はそれからしばらく経って、カイも居ない時にふらりと寄って。
 俺に”お前なんかキライだ”と言った。
 爆は俺の事、キライなんだって
 お前のせいで、お前が居るから、其処だけどうしても強くなれないって。
 どーも俺に泣き顔見られたのは、爆の人生最大の汚点であり恥部らしい。
 それなら、爆が弱いなら俺も弱いよ、て。
 何でだ、て聞いたから、素直〜にだって俺爆が好きだし。
 と言った。
 その後の事は……一生忘れらんねーな……
 俺、脊髄心配したよ☆
 ………それもいいとして。
 んでまぁ、俺が何を言いたいか、つーとだね。
 爆が目に見えて怒ってくれているのは嬉しいけど、やっぱり仲良しな雰囲気になりたい訳です。
 仲良しどころか深い仲になりたいし。
 ついで言うと自分の血を見ないで済ませたい(切実)。
「……爆ー?」
 呼べば、フン!てすごいそっぽを向く。
 あ……今のなんか可愛いかもv
「何が可愛いだぁぁぁぁぁぁぁッッ!」
「だから、爆、どうして心の中が、て首の頚動脈はだめー!そこ堰き止めちゃだめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 ぜーはーぜーは………
 普通に年取るようになって、いきなり死ぬかもしれん、俺は………
「ふん、何かされるに決まってるんだから、黙っていればいいものを」
 へぇ……決まってるんだ……(遠い目)
 地べたに座り込んで、あさってを見る俺に、爆が言う。
「俺が来なかったら素通りしてたなんて……何で貴様に解るんだ」
 憮然として吐いたこのセリフは、拗ねているようにも聞き取れた。
 いや、拗ねていた。
 ……て事は、何?
 爆の不機嫌の理由は、爆の方から行こうとしたのに、俺が先に爆の所に来ちゃったから?
「じゃあな!」
 普段は滅多に使わない、瞬間移動で去ろうとする爆。
 させるかい、と咄嗟に腕を掴む。触ってしまえばこっちの物だ。移動したって付いて行っちゃう訳だし。
「離………」
「待つよ」
 爆の反対の手が拳を作ったので、慌ててセリフを言う。
「爆が俺の所に来てくれるの、待ってるよ」
「……………」
 何事もストレートな爆は、それ故なのか、やっぱりストレートな物言いに弱いのだった。
 の、割には好きとか愛してるラビューンて言うとパンチとキックが来るのだが。
「…………待ってろ」
 何秒かの沈黙の後、爆はそう言ってくれた。
 嬉しくて、顔を寄せる。
 皮膚の触れた俺達の上で、蝉達がやかましい。
 7年も土の下だったもんな。
 そりゃ、上にでてはしゃぎたいだろう。
 俺だってそうだよ。
 何百年も待ってて、やっとの恋だもん。


 ちょっとくらい、はしゃいだって、いいよな?





 …………だから、手頃な岩石で俺の頭、殴打するのはどうかと思うのです……(しかも4回くらい連打)
 でも、最期、もとい最後に見た爆の顔が、赤かったのは。
 日に焼けたせいでも、この気温の為でも、夏の見せた幻影でも。
 俺の鮮血のせいでも無いと、思いたい。







夏だ!恋だ!鮮血だ!!!(えー!)

いやね、本当はもっと、「どーして俺に全部見せてくれないのさ」「俺は爆が俺に会ってからより、爆に会うまでが長いんだよ?」
とかいう話なのですが……
金田一連十郎の”チキンパーティー”を読んで……

やたらコミカルな鮮血劇が書きたくなったのです!!

で、こうなった!
実際に蓋を開けてみれば、鮮血より首絞めが目だってしまい、己の筆の甘さを悔いるばかりです……!!
今度こそ、レッツ・鮮血☆!
いいよね、「浄化」の術あるし!!(そーゆー問題じゃねぇー/激)