マインド・フール





「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッッ!!」
 思いっきり唐突に、激が悲鳴だか雄たけびだか解らない奇声を発した。
「………何だ」
 なるべく訊きたくはないのだが、放置すればもっとややこしくなるから、爆は仕方なく激に声を掛けた。
「…………爆」
 爆の方を向いた激は……何か大切な物を落としたような、ここ一番の試合に敗れたような、そんな表情だった。
「爆…………エイプリルフールに嘘つくの忘れた」
「………………………………………………………………」
 爆は訊いてしまった事を激しく後悔した。
「………オレは今、今までの人生でこれ以上ないくらい、貴様をアホだと思った」
「何を言う。イベント大好きアニバーサリーなこの俺がエイプリルフールに嘘つかないなんざ、由々しき事態だ。
 刀狩をしない秀吉みてぇなモンだ!!」
 さっぱり訳解らんと素直な感想を爆は持った。
「ちきしょー。折角、前からメモ取ってたのに……」
 と、胸ポケットから手帳を取り出し、とても残念そうにページを捲る。
 アホだ。こいつ、絶対アホだ。
 そう確信を繰り返しながら、ちょっと視界に入ったメモの内容を見て見ると、

 ”ハリーポッター、次の舞台は京都”
 ”ジャングルはいつもハレのちグウ、劇団四季でミュージカル”
 ”千と千尋の神隠しにどさくさに紛れてトトロが!”

 等。
 爆は頭痛薬が欲しくなった。
「まぁ……どうせ”爆なんか嫌いだー”とか、下らん嘘を言うつもりだったんだろうが、オレはそんなものに騙されないぞ……というか、動じんぞ」
「ほえ?何言ってんだ?」
 堂々と爆の部屋のど真ん中に居座り、持ってきたスナック菓子をパーティー開きにする。パーティー開きとは、袋の真ん中を裂いてそのままズアーと左右に広げたものだ(これっぽっちも要領を得ない説明)。
 むしゃむしゃとポップコーンを口に運びながら、言う。
「4月1日は嘘を付く日で、心にも無ねぇ事言う日じゃねーぞ?」
「…………」
「食う?」
「……貰う」
 ずい、と出されたポップコーンを、爆も取る。
 何故だか顔が綻んでしまいそうになるのを、必死に堪えながら。




エイプリルネタをまだ引きずっている朱涅さんです。
激ってこういうの好きそうだなー(笑)
で、爆に愛想つかれる、と(大笑)