人々は安息を求め眠りにつき、
そして夢を見る
現郎はソファの上では座らない。
けれど、ソファの上では眠る。
もしかしてこれを寝具だと思っているのでは。
なんて事を考え、席を取られた爆は起きている現郎のように、ソファを背もたれに床に座った。
ソファの上で眠る現郎は、とても器用に身体を縮めている。
窮屈かな、と最初は思ったがよく考えたら広いベットでもこの姿勢だった。
と、ソファが軋む。
「……現郎、起きたか?」
「……………」
現郎は何処を見てるか解らない顔で、けれどもそれははっきりと顰めていた。
「………?」
その理由が爆には解らなかった。
世の中には寝起きの悪い人が居るのは知っているが、現郎の寝起き直後の様子はどちらかと言えばぼけーっとしているだけだから。
こんな、不機嫌な顔は初めて。
「………………」
ぼりぼりと癖のついた髪を掻き回し、現郎は下にいた爆を引き上げた。
「?」
本当に何故だか解らない。
抱き締められて、額にキスされて。
頬にもされて。
唇にもされて。
首筋には痕をつけて。
衣服のボタンを外していく。
「現郎?何かあったか?」
暴かれた胸元に顔を埋める現郎の髪を優しく梳いた。
ややあって現郎が口を開く。
「……すげーヤな夢見た」
「どんな?」
「別に内容はどうって事ねぇ。いつもみてーに起きてメシ食って何処かへ出掛けて……」
ぎゅ、とさらに爆を抱き寄せて。
「なのに、オメーが居なかった」
「…………」
「……爆、が居なかった。
……あんな夢見た自分に腹立つ」
あぁ、だから不機嫌だったんだ、と爆は納得した。
「まぁ、夢なんてそんなもんだろ?」
「それでもだ」
何だか、悔しかった。
こうして自分達は身体も想いも重ねているのに。
何度も何度も何度も。
それでも一緒にはなれないという事を思い知らされたようで。
「目が覚めればオレはちゃんと居るんだから」
側に居ることは出来るだろう、と爆は説く。
と、眼下の金糸がもそり、と動き。蒼の双眸が自分を見る。
屈んでいた姿勢から普通の体勢に戻り。
そうしたなら今度は爆が下になる。
覆いかぶさるようにキスをした。
頭を抱えるように。
深く口付けた。
ソファから投げ出された足が不安定だった。
「ん…………」
そういえば殆ど半裸の状態だったから、熱くなった肌に空気が冷たく感じた。
現郎は息を上がらせてる爆を胸に抱き寄せ、そのまま横になった。
「……寝る」
現郎は一言だけ言って、本当に寝てしまった。
(オレはこんな格好なのに……)
けれど剥き出しの肩も晒された背中も、現郎に包み込まれてるから風邪にはならないだろう。
オレも現郎の夢を見れるといいな。
眠る直前まで現郎のことを考えて。
目を綴じてからも現郎のことを感じて。
そうして。
爆も夢を見る。
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