鏡ノ瞳
「目。好きだな。オメーの」
何の脈絡も無く現郎が言う。
近づけるぎりぎりで言う。
「夜みてーな色」
オレは瞬きもしない。
「……大きいよなー」
現郎は目を細めた。
「ここ。に」
オレの頬に手を当てて、親指が目の直ぐ下を撫でた。
「……俺が映ってる。……全部」
見える所も見えない所も。
綺麗な所も穢れた所も。
他人を殺した手も、お前を好きな心も見えるのだという。
「……好きだな……」
夢の中にいるみたいに言う。
ふいに目の前が暗くなった。睫が何かの気配を感じて反射的に目を綴じる。其処に現郎の唇が触れた。
「夜色の瞳だ。……夜も俺は好きだな」
「眠れるからだろう」
最も、貴様は昼でも朝でも寝てるぞ。
そう言うと今度ははっきり笑った。
「現郎のは……」
少し離れた現郎に、今度はオレがぎりぎりまで近づく。
「深海の色だな」
オレは、空も好きだが海も好きだ。
だから。
「現郎の目、好きだ」
そうして、互いに映った自分をしばらく見ていた。
瞳は思いのほか詳細に物を映していて。
例えばオレは自分の夢を見る事が出来た。
かなり即興で作った話(というか限りなく詩に近いですね)ですが、結構気に入っちゃったりします。
相手の目にいる自分の姿を見る、というシーンが書きたくて、どういう話にしようかと思ったのですが、思い切ってそこだけ書いてみました。
おお!今回後書きが真面目っぽくてスゲー!!!(この一言で全て台無しですね、すみません)
ちなみに現郎にしたのは、現郎なら見詰め合って終われるだけの理性がありそうだから(笑)激や雹だったらこんな至近距離、絶対押し倒してるぜ?