secretly

間の前にいるのは自分にとことん纏わり付いてくる男の使い魔だ。
「やぁ、こんにちわv」
 チャラがとてもにこやかに挨拶する。
「爆ちゃんv」
「誰が爆ちゃんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 ちゃん付けされた爆は絶叫した。
「そんな事言われましてもねぇ、爆君って呼ぶと雹様が怒るんですよ。「爆くんって言っていいのは僕だけだぁぁぁ!」って」
「だからってちゃんをつけるな。女じゃないんだから」
「呼び捨てにすると更に怒り狂うんです」
 ……何なんだ……アイツは……
 今更のように爆は雹という存在の不可解さに思い煩らった。
「まぁいい……それで、今日は何の用だ」
「ハイv雹様がちょっと爆くん拉致って来いとの事で」
[引き受けて来るな!そんな事!犯罪だぞ!」
「バレなきゃオッケー★」
「よくないわぁぁぁあぁぁぁ!!」
 ぜーはー、ぜーはー……
「爆君……」
 台詞の殆どを叫びっぱなしで荒い呼吸をし、上下に動く肩をぽん、と叩き、
「あんまり大声出すと、ポリープになりますよ」
「貴様がそうさせてるんだ。貴様がぁぁぁ〜〜!」
 爆はチャラの胸座を引っつかみ、ガクガクと上下に揺さぶったが、身長差のせいで全然苦しく無さそうだった。笑ってるし(←いつも)。
「……だったら、逃げちゃいましょうか」
「は?」
 唐突なチャラの申し出に、一瞬怒りも何もかも忘れる爆。チャラは相変わらずニコニコしたままで。
「同じ人物に虐げられる者同士、親睦を深めましょうv」
「おい……」
 決して強くもないのに、捕まれた腕を何故か解けず、引き摺られるように付いて行った。

 ファスタの中心都市の、一人では入るのに大きいデパート。そこを適当にぶらついてから、今はカフェテラスでおやつ。チャラが「爆君はこれでいいですか?」と訊いてきたのが、、まさに自分の好きな物どんぴしゃりだったのが引っかかるが。
「おいしいですかv」
 爆は言葉に出さずにこくんと頷いた。アイスがあるから急がないと溶けてしまうのだ。
「それは何よりv」
 チャラはゆったりとした動作でコーヒーを一口飲んだ。

 そろそろ空に赤みがかかってきた。白い雲にも色が付く。
「今日は楽しかったですか?」
「まあな」
 これは本心だ。チャラの連れて行く所は、何処も自分の興味を引くものばかりで、退屈なんて全くしなかった。
 爆がそう答えると、チャラの笑みの質が変わったような気がした。
「では、気をつけて帰って下さいね。僕も今日は楽しかったですよv」 
「……ちょっと待て」
 引き止められるとは思ってなかったのか、チャラの双眸が薄く開く。
「今日の行動はどういうつもりなんだ?」
「……最初に言った通りですよ。あのまま僕が帰ったら、まず僕がボコボコにされて、改めて自分から貴方に赴くでしょうからね」
「だったら貴様が帰らなければいいだけの話だろうが」
「僕があっちこっちに行かせてなかったら、絶対に雹様は貴方を見つけてますよ」
「…………」
「他には……?」
「……ない」
 チャラの言う事は、いちいち尤もだと思えた。他には何もないみたいに。
「爆君」
 ふわりと包み込むような声だった。
「今の質問で、僕に何を言わせたいかが解れば、僕も答えてちゃんとあげますよ」
「どういう意味だ?」
「……解らないのなら、まだその時ではないという事です」
 一歩二歩とチャラが近づく。チャラの顔を見るため、爆は上を向かなければならなかった。
「それに、次に会う口実になるでしょう?答えるために」
 自分nを真っ直ぐ見据えるその顔を、両手で挟んで固定し、額に素早く口唇を掠めた。まるで風のように過ぎていったため、爆は暫くきょとんとしていたが、キスされたと理解すると薄闇でもはっきりするくらい、頬を赤くした。
「き……!」
「あ、それから」
 紅潮したままでも何か文句言ってやろうと思ったが、人差し指で口唇を押さえられ何故か黙ってしまった。触れられている所がじんじんと熱くなっていく。
「今日の事は二人っきりの秘密、って事でよろしくお願いしますねv」
 頼まれたって誰が他人に言いふらすか、とせめてもの抵抗にそっぽ向いてやった。

「……遅かったなー、チャラ」
 ゆったりとしたソファに足を組んで優雅に座る雹様。何だか悪の秘密結社の親玉みたいだ。
「ハイ、爆く……爆ちゃん探してあっちこっち探し回ったんですが、見つかりませんでした」
 メチャクチャいけしゃあしゃあと言い放つチャラだ。
「ふーん……って、何なのさ、爆ちゃんて」
「この前爆君と言ったら怒り狂ったじゃないですか」
「そうだっけ?」
 ……わ、忘れてる……動かなくなるまで殴る蹴るしておいて……
 でも、今更だし、もういいんだv(←諦) 
「では、さっそく夕飯の支度に……」
「今日さぁ、窓辺で呑気にアフターヌーンティーを満喫してたら、デットとライブがやって来てね」
 チャラの台詞を遮って雹が話し出す。チャラは嫌な予感がまさに嫌と言うほどした。
「何かと思ったら非常に興味深い話を聞かせてくれたよ。……どっかの使い魔が事もあろうに主人の想い人とデートしてたって」
 …………
「……え゛。」
 チャラのスマイルがドライアイス並に凍りつく。
「くっくっくっく……お前……やって……よくもやってくれたじゃないか……僕なんかまだ手も握ってないっていうのにぃぃぃぃぃぃ!」
「それは単にあなたの信頼性の問題……」
「やっかまスィ!」
 ざしぐ。
 雹の日本刀で居抜かれたチャラ。しかしこれはまだ序章にしか、過ぎなかった……

 さらに場面転換。デッドとライブの会話。
「ところでさー、兄さん。なんでわざわざ雹に言うの? その場で本人たちにずばっと言っちゃえば良かったんじゃないの」
「甘いですね、ライブは。例えその場で言ったとしてもチャラさんがそれに大人しく従うはずもなく、爆君はもう会うまいとするでしょうがチャラさんがうまく丸め込みます。その点、雹さんに言えば、まあそれで諦めるとは思いませんが、少なくとも僕が思う以上の事はやってくれるでしょう。映画化されたら15禁にでもなりそうなくらい」
「さっすがアニキ!一人でうじうじナイナイに燻ってただけあって、いろいろ画策するのが得意!」
「あまり褒めないで下さい。ジュバクかけますよ」
 チャラの不幸の影に、こんな二人の姿があった。       
       END

チャラ爆初挑戦!そして初失敗!(ヲイ)だって爆あんまし出てないし!でもまーこの話はあと二三回ばかし続くから。伏線張ったし。それはいいが、果たして次爆に会うまでにチャラの怪我は完治するのか!一番の見所はここですね(真に受けない)
余談ですが、デッドとライブが出てるってことはこれはアニメベースなのだなぁ。って事は丸チャラはなしか……何気に使い魔になっちゃってるところは、ま、お愛嬌ってことでv(訳すと気にするな)by朱涅