温もりに包まれながら
とん、と肩に重さを感じた。ちょっと首を捻ればやっぱりカイだった。
まぁ仕方のない事だ。彼は修行中の身で、今日自分と会う為にと今までその分もこなしたのだろう。
無理に何処かへ出かけたりしないで正解だったと肩を気にしながら新聞に意識を戻す。
が。
「-------…………」
ずるずるとそのまま重力に逆らわないカイ。どうやら余程熟睡しているらしい。
このままでは床に倒れてしまうのも時間の問題だ。
爆は起こさないように気をつけながら、カイの頭を移動させた。
…………眩しい。その割には暑さを感じないのでこれは電気の明るさだ。
確かに自分は爆の家に招かれたのだから、それはいいとして何故こんなに明るさを感じるのか------
瞼を透けてくる光に目を細め、何度も目を擦っていると。
「カイ?起きたのか?」
唐突に視界に爆が入り込んだ。
「……………………」
自分の状態----爆に膝枕してもらっている----を把握すると、カイはバネ仕掛けのオモチャのように勢いよく起き上がった。
「す、すみません!!」
「……何故謝る」
「あ、いえ……」
半ば条件反射みたくつい謝ってしまったが。
(……って、それはそうと、私はずっと爆殿に------?)
かぁぁぁぁぁぁ!と一気に顔の表面温度が上昇し、下を俯いてしまう。
それにより、目の前に来たカイの頭の天辺を爆はペシ、と軽く叩いた。
「爆殿…………?」
「たかがこれくらいでこっちが恥かしくなるほど顔を赤らめるな、馬鹿者」
と、言う爆の顔も赤い。
「……もう、いいのか?」
「はい?」
「だから、もう寝なくていいのかと聞いている」
「……………」
中途半端に起きたせいか、身体に纏わりつく怠惰感は水を吸った綿のように重い。このまま寝てしまいたいのが本音なのだが……
「いいえ……」
寝てしまうには、あまりにも勿体無い。……折角、近くに爆が居るのに。
そうカイが答えると、
「嘘を付くな」
きっぱりと爆に言われ、カイの目が点になる。
「そんな眠そうな顔と声で言われても説得力がまるでないぞ。それに、疲れを溜めたまま修行して強くなれると思っているのか?」
だから休める時にはしっかり休めと爆は言う。
「ですが……」
爆の言う事は解る。
自分を気遣ってくれてとても嬉しい。
けれど。
何かいい理由が付けれないかと、カイは必死になって頭を巡らせた。が、爆に腕を引かれ遮られる。
天と地が逆になり、カイはまた爆の膝に落ち着いた。
「あ、あの……」
「今日はずっとこうしている……ずっと、貴様の側に居る」
だからそんなに愁いなくてもいいと、カイを覗き込んで言う。
「……………」
自分は、爆に会って何がしたかったのだろうか。
互いの近況を報告し合う為か。それともその姿を網膜に焼き付けたかったのか。
……違う。それもあるだろうけど……
優しく髪を梳く手。時々頬に触れる指先。
いたる所から感じる爆の温もりこそ。
……それが自分の最も欲しい、求めるものだから。
ならばこの状況に何の不満があるだろうか。
そうしてカイは、ゆっくり目を閉じた。
身体の芯、心の奥まで爆を感じながら-------
○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「爆殿すみません!本当ぉぉぉぉぉにすみません!!」
「もういいって……オレの方がやったんだから」
「すみませんでした!」
さっきから何をカイが平謝りしているかというと……
安心しきったカイはそのまま本格的に寝込み、起きたときには太陽も沈もうかという時刻で。
爆はその間もカイに膝枕していた訳で。
足が酷く痺れてしまったのだ。立つことも出来ない。
「私とした事が……」
「だからもういいと言ってるだろうが。それ以上謝ったら怒るぞ」
「はい、すみませ……あ。」
ぎりぎりの所で言い止めたカイだった。
その様子を見て、爆は苦笑とも溜息ともつかないものを吐いた。
「よし、だったら今日の夕食は貴様が作れ。それで貸し借りなしだ」
「え、あ……は、はい!」
さっきまで意気消沈していた表情がぱぁっと明るくなった。つられて爆も少し笑う。
「ついでに泊まっていけ。どうせそこから帰ってもサーに着く頃には真夜中になってしまうぞ」
「はい!喜んで!!」
「……こういう事は即座に返事するんだな」
と、言えばカイが目に見えて固まる。面白いが放って置くのも可哀相なので直ぐに冗談だ、と言ってやったが。
しかしカイもやられっぱなしではなかった。
痺れて思うように動かない爆に。
口唇を軽く重ね、今度は硬直した爆にカイが笑った。
久しぶりにカイ爆書いたらあっま-------------!!超甘!何だお前ら!!
その最たる要因はまず爆がカイに優しいからでしょうねー。特に今回。普段カイに優しくしてもらっているからそのお礼?
ワタシが書くなかで一番優しいのはカイ……というか、激のは見えにくいし現は隠してるし雹は解りにくいしで、優しさを全身込めて爆に接しているのはカイだけですね。炎は……歪んでる!!(キッパリ!!)
いやーしかし久しぶりに激爆以外のカップリ書きました。
やはり玉子焼き取られた恨みが……(朱涅さんは爆に作ってもらった玉子焼きを激に取られたというナイスな夢を見ましたとさ)