Sing,sing a song
時間には煩くないものの、遅れた事の無い彼が何故か今はまだ来ない。
こんないい天気の日にいらいらしながら待つのも何だから、
歌を歌って待ちましょう。
人が休めるくらいの影を作るその樹に、小鳥が一匹、また一匹と集まる。
まるで、その声が生み出す音色に導かれるまま。
「――ゆるやかな坂道 駆け登ったら
少し休めばいい 丘に腰かけて
広がる大空 はばたきながら 歌をうたう小鳥達も
ホラ 羽を休ませて眠ってる
急がないで 焦らないで 歩きましょう
”ひらめき”とか おこる偶然に導かれて
みんな シャラララ ララ
それぞれ旅を続ける 同じ太陽の下で
未来(あした)が用意してる たくさんの幸福(しあわせ)と 巡り合うため……に……」
ふと、その響きが明らかにそうでないと解る程に旋律を崩した。
……その原因は自分のせいだと気づいたから、自ら現れる。
「あの……爆殿……」
「……カイ……いつからそこにいた……?」
その声はいまだかつて無い程動揺に満ちていた。
「え、と……”ホラ 羽を休ませて”の所からくらいです」
「――ッなら、何故来たと言わん!」
「それは……」
理由を言ったら絶対後で殴られるかもしれない……が、爆の反応が見たくて言ってしまう。
「爆殿が、とても気持ち良さそうに歌っていらしたもので」
「!!!」
ぼっと瞬間湯沸し機並の早さで爆の顔が赤く湧き、抱えた膝に顔を埋める。
……まさかこんなになるとは思わなかったカイは、少し罪悪感に悩まされる。
「爆殿〜……?」
顔も合わせたくないとでも言われてるようでもの悲しい。自分が原因なのだが。
「……いか……」
「はい?」
「オレが歌を歌っちゃ悪いか!」
ギッと睨まれた双眸には涙がうっすらと浮かんでいた。
そこまで照れなくてもいいのに、などと思う。おそらくこういう事に免疫がないのだ。
「いえ、全然。寧ろ上手でしたよ」
また赤くなる。
……自分の一言一言に振り回される爆にいつもとは違った愛しさすら覚えて。
ついつい、また意地悪な事を。
「あの、爆殿」
「……何だ」
必死に照れているのをひた隠した顔で、それは却って怒っているように見えた。
「歌の続きは?」
「な……ッ!……ぅ……」
思ってもみない事を言われて一時言語障害になる爆。
「聞きたいです。是非」
ふんわりと微笑んで言う。
……実は知っている。爆は自分のこんな表情に弱い。
弱いというよりは、あまり向けられた事がないので対処に困るという所か。
「……そんなに聞きたいのか」
「はい」
う〜と爆が唸った。
優しく抱き締めてお願いします。と言った。
そうしたら。
「……あまり上手ではないぞ……」
そんな前置きで、爆はまた歌い始めた。
カイは爆の肩に頭を預け、その旋律に聞惚れた。
自分の為だけの楽の音に――
悲しい時とか うれしい時に
こぼれ落ちる涙は とてもキレイです…
自分の心が 素直に出した答えを受け入れてしまえば
もう 何も悩む事なんてない
神秘的に降る雪も つめたい風も
そっと 自然が伝える 大切なメッセージ
いつか シャララ ララ
内緒で耳うちしたい 隠されてる秘密を
ずっと離れないで僕は見守っています あなたの後ろで
みんな シャララ ララ
それぞれ旅を続ける 同じ太陽の下で
ずっと離れないで僕は見守っています あなたの後ろで
いつか シャララ ララ
内緒で耳うちしたい 隠されてる秘密を
ずっと離れないで僕は見守っています あなたの後ろで―――
と、いう訳で歌を歌う爆くん。カイに歌わせようかと悩んだのですが。だって歌詞を見るからにはカイ→爆っぽくないかい?
でもカイにおちょくられる爆も見てみたいので、爆に♪爆ってさり気なく歌上手そうだし♪
で。文中の歌詞ですが。
ワタシが考えましたーとかだったらかっちょいいんでしょうが、思いっきり抜粋です。
と言ってもたぶん知ってる人……結構いるかもしれんが……
某アニメのサントラのキャラクターソングなんですよね。
そのアニメのヒント↓
ドラまた。
よし!バレバレ!!(ガッツポーズ)
タイトルはカーペンターズの「SIGN」の一説を拝借。はからずともこの歌詞がこの歌にマッチしていてビックリ!!こっちにしよーかなーと思いましたが初志貫徹で。でも他に使えないんで、下に歌詞載せときます。
歌いましょう 大きな声で 力強く
悪いことじゃなくて 良いことを
悲しい歌じゃなくて 幸せな歌を
歌いましょう
一生歌い続けたれるように 簡単にして
人に聞かせるほど上手くないなんて 余計な心配はせずに
さぁ、歌いましょう
歌いましょう
世界中の声を合わせて 歌に愛をこめて
あなたのために 私のために
元はもちろん英語です。
しかし今回の話……歌詞ばっかりだ。