「チェックメイト……僕の勝ちだね、爆くんv」
「うぅぅぅぅぅ………」
にこにこ笑顔の雹に対し、爆は苦虫の100匹でも噛み潰したような表情だ。同一空間にいるのにこうも表情が違えるのも珍しい。
「さて、約束だよ」
雹は対峙する爆の髪を、その細い指で絡め、
「僕の言う事、きいてもらうから………」
「………………」
うっとりと微笑む雹。
爆の髪にあった指は、衣服にかけられた。
「爆〜、”ポリス・アカデミー”のビデオ借りたから一緒に見ようぜ〜
……っていねぇのか」
キョロキョロと確認の為に視界を動かしても、爆の姿は認められなかった。
爆はリビングで居る事が結構多い。
爆の部屋にはまだテレビがない、というのもあるが、何だかんだで皆と居るのがいいのだろう。
「部屋かな……」
と、激が頭をぽりぽり掻きつつ、呟いた時!
『嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!』
その大音量の声におもわずコケそうになる!しかもその声は爆だ!
「な、何だ何だ何だ!?」
とりあえず激は声のしたほうへ向かう。慌てているのか、手にはビデオを持ったままだった。
「お、現郎!さすがのオメーも起きたのか」
声の発信源であろう爆の部屋に、すでに炎も現郎もチャラも来ていた。激はさらりと結構酷い事を言った。
4人はドアにへばり付いて中の様子を伺った。
『嫌だ!こんな格好ビデオに撮るなぁッ!』
ビデオ?
『だいたい撮ってどうするつもりだ!?』
『そりゃー、勿論僕が後で楽しむ……フフフフフフvv』
雹の台詞が途中で消え、かわりにボタボタと何かが落ちる音がした。鼻血に違いない。
「……一体何を撮ろうって話だ?……」
「……ですから、ナニでしょう?……」
「…………………」
今、彼らの脳裏には文章化したら裏行き確実な事が展開されている。
「雹!テメー爆に×××な事したあげくに映像収めようたぁ羨ましいじゃねーか、コノヤロー!俺も混ぜろ――――!!」
「激様、正直過ぎですよ」
横では炎が後ろを向いて顔を上に上げ、首の付け根をとんとんと叩いてたりしてた。こいつも正直だ。
『えぇい!もういいだろ!!顔洗って来る!!』
『あぁッ!爆くんせめて着替えてから……!!』
戸惑う4人の前でドアがガチャリと開く。
まさかみんなが集まってるとは知らない爆は、そのまま突進する勢いで飛び出し、真正面にいた炎にぶつかる。
「った!?」
「爆、大丈夫か………って、お、お前その格好―――――――ッッ!!?」
爆を抱き留めた炎ならず、全員が爆に視線を集中せざるを得なかった。
今の爆の格好……それは、まるで西洋の喪服みたいな衣服に贅沢にフリルを含ませた、いわゆるゴシックロリータな格好だ。
ご丁寧に化粧までしてある。化粧も服も白に近い水色と黒で統一されており、まるでそれこそ絵画の人物か人形のようであっった。それでも変わらない意志の強い瞳が、なんとも言えない魅力を醸し出している。
爆はぶつかったモノを見てぎょっとする。
「え、炎!?って、皆も……!!?」
どうにかしてこの姿を隠さなければ!とわたわたする爆に炎が手をかける。
「…………?」
「爆…………」
熱く濡れた炎の声が、爆に近づいて……
「……この話は炎爆じゃねぇんだ、よ!!!」
バギャギィ!!
激が中々的確な事を言い、炎の後頭部に回し蹴りを食らわせた。
「……オメー……」
やや呆然しながら、現郎は爆を……性格には爆の格好を指差す。
「あ、こ、これは………!!」
真っ赤になり、ロングなスカートの中あたりをぎゅう、と掴む。
可愛いぞ、畜生!!
「罰ゲームでね。チェスで僕が勝ったらこの格好してね、ってお願いしたのv」
何かえらい事でもしたかのように雹はえばりつつ言った。
「へぇ、オメーにしちゃ趣味いいな」
しげしげを爆を見て惚れ直す激である。
実際、爆の事は可愛い、と常々思っていた激.。それでも女の子じみた服は似合わないと思っていたのだが……
中々どうして。
「な、雹。もしかして、…………の服もあったりする?」
「バッチリ」
雹は耳打ちする激に親指グ☆
本当にこういう時は仲の良い二人だ。
雹の台詞を聞いて、激はににぃ、と妖しく笑い。
「爆。俺とチェスしようぜvんで俺が勝ったら……」
「……もう賭け事はこりごりだ!!」
爆は心からそう叫んだ。
(じゃ、寝ている隙にこっそり着せちまおうかな〜vv)
激はろくでもない事を考えた。
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