セピアの香りに包まれて


 一体誰が運んでくれたのか、何時の間にかオレはベットに横になってて。
 気配で側にピンクとカイがいるのは解った。
 ……さすがに、一晩瞬きしないのはキツい……
 起きようと思っても身体が全然言う事をきいてくれない。眠くて起きれないというのがあるが、それがずっと酷くなった感じだ。
 もうそろそろ起きたいのに……
 意識が何度も浮上してはその度に沈んでいく。
 何回かそれを繰り返し、その何度目かで。
 誰か。
 いる――

 起きないと。
 ピンクもカイも眠っている。
 ――目の前にいるコイツは誰なんだ?
 もしかして、炎?違うな。
「爆」
 そいつは何故かオレの名前を知っていた。
 手を取り、何かをしているらしかった。
 何をしたかは解らないが、親鳥の嘴に散々突付かれた手の甲の痛みがすぅっと消えうせた。
「技、覚えたな……よく頑張ったじゃねーか」
 その上ふてぶてしかった。別にオレは貴様なんかのために頑張った訳じゃない。
 というかコイツはどうしてオレが技を会得した事を知ってるんだ?
 何もかもが謎だ。
「……大丈夫、お前は強くなる」
 頬を撫でる掌。……温かい。
「炎なんかよりも強くなるぜ」
 ……本当に?……

 ……ひょっとして、オレが泣いた事も知ってるのか……?

 その前に、オレはコイツの声を知ってる気がする……

 どこだったっけ……最近?……何て言った?……

『夢に、命を賭けるヤツは本物だ』

 でもこれを言ったのは炎で……

 ……それ以外だと……

 ……あの時の……?

 撫でる手の感覚がとても心地よいから、オレはそのまま眠ってしまった。


「貴様だったんだな」
 むすっとした顔で爆は言う。
「何が」
 それに対し、激はきょとんとした。
「コロビダルマの後、オレが眠ってた時……貴様何か言ってただろ」
「あ、起きてたの?」
 参ったねー、と苦笑して頭に手を乗せる。
「気に食わんな。何故起きてる時に言わない」
「なんつーかさ、俺だけの秘密が欲しくてなぁ」
 ごろん、と横になる。爆の膝の上に。
「重い」
「オメーが軽いの」
「理由になってないぞ」
 と、言いつつも激の好きにさせる。
「……あのな」
 言葉をよく選びながら、手探りに言う。
「励ましたい……なんておこがましい事じゃなくてよ、何て言うのかなー。ただ……俺が個人的に話したくなった」
「訳が解らんな」
 明らかに誤魔化しだと思うから容赦なく否定する。
 爆の目の下、激は眉間に皺を寄せて、
「オメーが泣いてたりしてたから、だからなぁ……」

「俺、炎の事で泣いてるオメーは見たくねぇんだよ」

 やっと、本音を言った。
「ただの嫉妬か」
「……そう言われるのが嫌だから俺は」
 しゃべってる口を爆の手が塞いだ。
「……人が隠れて泣いているところを勝手に見て……でもこれであいこだな」
 口は塞がれてても目は見えてるから。
 
 爆が眩しいのは後ろに太陽があるからだけじゃないだろう

実はTears Of Clearの続きだったりします……その後の二人という事で。なんかぎこちないですねー。珍しいな。いつもはやりたがりの激が!膝枕で済ますとは!
iいや、コロビダルマの話の後、爆をどうしたのかなーと気になったもので。ワタシなりの講釈(妄想)を。
しかもこの話……激爆で初めてギャグを挟まない話です!スッゲー!
たぶんこの後しばらく激爆はギャグだな(断言)

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