世界倒錯劇場 〜狼と七匹の子山羊〜


<キャスティング>
 狼→激
 末っ子山羊→爆
 お母さん山羊→天
 その他子山羊→GCを適当に
 語り→チャラ


「それじゃぁ、皆」
 この森一番の肝っ玉母さんの天は自分の子供たちをぐるりと見渡して言いました。
「これから私は買い物に行くけど、その間誰が来ても絶ッッッッッッ対開けちゃだめよ」
『は〜い!』
 7匹の我が子は声を揃えて返事をしました。何故天がここまで用心深く執拗に言うというと、最近何処かの街から追いやられた性質の悪い狼がこの森に向かっているという情報をキャッチしたからで。
 そんなに心配なら出掛けなければいいじゃんとかツッコミが入りそうですが、それでは話にならないのでお買い物に行ってもらいます。
 母親が行った後、子山羊達はそれぞれ思い思いに仲良く遊びました。
「さ、爆殿の番ですよ」
「う〜……」
 カイと爆はトランプをしているようですね。カイの手には2枚しかなく、接戦です。そこにピンクが通りかかりました。
「あ、トランプやってるの?あたしも次入れて!」
「あっはっは、ピンク殿。これババ抜きですよ」
 ボギュリ。
 いらん事を言ったカイのこめかみにピンクの踵がヒットしました。カイがそのまま撃沈してしまったので、ババ抜きはお流れです。ゲームの相手がいなくなった爆は手持ち無沙汰です。そこへ。
「爆く〜んvv」
 昼間っから花の蜜より甘い声で雹が爆に抱きつきます。
「だぁぁぁぁ!何をする!」
「こんな所抜け出して僕と愛を深めよう!」
「外に出ちゃいけないんだぞ!!」
「じゃ、ここでしよう♪」
『やめんかい!!』
 服を脱ぎながら爆に圧し掛かる雹を、その他の山羊キックやパンチで轟沈させました。
「爆♪だったら僕の歌を聞いてよ♪」
「貴方の好きな曲でいいですよ……」
 と、ライブとデッドが爆の両方の手を引きます。
「え〜、爆ぅ、あたしと遊びましょうよ」
「ウチとババ抜きの第2回戦やらへん?」
 その前でアリババとルーシーが言います。どうやら皆は末っ子山羊の爆が可愛くて仕様が無いようですね♪
 爆とカイとピンクと雹とライブとデッドとルーシとアリババの7匹……あれ?8匹?……まぁ、それはいいとして、の山羊達はこんな具合に、いつも通りちょっとスリリングも交えた日常を送っていました。
 しかしそんな幼けな子山羊達に魔の手が!
 そう!例の狼が事もあろうにこの家へ向かって来たのです!
「あ〜……腹減ったい、畜生……」
「あ!狼だ!」
 いの一番に見つけたライブがギターでジャラーン!とかき鳴らしながら言いました。
「え?どれどれ?」「ホンマに狼や」「やだぁ〜こっち向かってる〜」「うわぁ、見るからに品が無いね」「何か目が血走ってますね……」「どうしましょう、爆殿」「何でもかんでもオレに訊くな」
 口々に言う中で、カイと爆が何処かで言ったような会話をしてました。
 狼は近づいてきます。
「やっぱあれかしら。チョーク食べたりして声を変えるのかな」
「さぁ、どうでしょう」
「そもそもチョークを食べると声質が変わるというのは何処から出たんだろうな」
 と、いうピンクとカイと爆の予想を裏切って。
 狼はドアをぶち破って中に入ると言う暴挙に出ました。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
 バキバキィィィィ!!
『どぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!』
 子山羊達はあまりの事に蜘蛛の子を散らすように逃げました。そして室内には誰もいなくなった。
「……ち。人の姿見て逃げ出すたぁ親からどんな教育されてんだ」
 人の家のドア突き破って不法侵入するあんたの方こそどんな教育受けたんだ。
「くっそ。また食い逃した……」
 自分の計画性の無さは棚に上げて愚痴る狼です。
「ん……?」
 くん、と彼の鼻が何かの匂いを感じ取ったようです。導かれるまま、狼が柱時計の前までいくと……
「……ビンゴv」
 柱時計の中で小さくなっている爆を見つけました。ふるふると髪を震わさせて、でも気丈に狼を睨んで。
(何か……スッゲー……)
 スッゲー?
(可愛いぃぃぃぃvv)
 狼は餓死寸前の空腹すら忘れてトリップしました。……爆はそんな狼にこれまでの人生最大級の危機を覚えましたが、いかんせん狭い柱時計ではどうしようもありませんでした。
「さーて、出といで可愛い子山羊ちゃんv」
 ギギギギ……と扉を開けて無理やり引っ張り出し、その体躯を抱っこしました。
「オレを……食うのか?……」
 何でもなさを装って爆が訊きます。
「そりゃぁな。だって俺は狼だもん」
 何が”だもん”なんだか。狼にそう告げられた爆は見ていて痛くなるほど涙を溜めて慄きます。
「どこから食ってやろうかな……」
 爆を抱っこしたままその場に座ります。可哀想な爆は何か言おうとしても声が震えてしまうのが解っているのであえて沈黙していました。
 と、狼が頬にキスをします。
「……!」
「この頬っぺたとか……ぷにぷにしてて美味しそうだな?」
 離れる時ゆっくりと舐めて離れました。。
「ん〜でも太腿とかもやーらかそうでいいかも♪」
「やぁ……!」
 足を持ち上げ、裏側の日に焼けていない白い肌を舐めました。今までそんな事をされた事のない爆は恐怖しか感じません。
「オ、オレを食うんだろう!だったらさっさと食え!」
「だ〜からこうして何処が一番美味いか、味見してんじゃんよ」
 そうして耳をかぷぅと甘噛みしました。その途端ぞわぞわぞわぁ!と何かが背中を駆け登り、爆の動きはピタッと止みました。
(う〜ん、こんなに可愛いんじゃ、ただ食べるだけじゃ勿体ねぇな)
 どうやらここに来て狼は食欲の他に性欲まで出てきたようですね。
 すっかり硬直しきった爆を抱え、近くのソファに横たわらしました。そして上に覆い被さり、爆の衣服のボタンをぷちぷちと取っていきます。
「なっ……!」
「食うのにこんな布切れ、邪魔だろ?」
 いよいよ本格的に捕食される、と解った爆は一層その大きな目に怯えの色を濃くしました。それに可虐心を擽られた狼は、ボタンを外すのは片手だけにし、空いた方の手で手触りの良い内股を摩って。。
「あ……ぁ……あ!」
 ビクビクと爆の身体が撓り、喉から言葉にならなかった声が漏れます。そのいずれも狼の情欲を煽るには十分で、恐怖で抵抗も出来ない爆の無垢な肢体にあんな事やらそんな事やら、ああ、そんな風にしたら爆が壊れちゃうじゃないですか!!この鬼!悪魔!外道!下種!
「うっせーな!まだそこまで行ってねーよ!」
 どうせするんでしょうが。
 と、その時。
「……ふ、ぅ……う……っく……ひぃっく……」
 爆の小さな嗚咽が狼の下から聞こえてきます。
「…………」
 泣く爆に毒気を抜けれたかのように狼の動きがぴたりと止みます。
(何……か……俺ってすげー悪い人?)
 ものすごく今更に思いました。
 ぼろぼろと涙を流す爆に、先程の可逆心とは全く逆のものが芽生えました。それは多分罪悪感で。
「……怖がらせて悪かったよ。もうしねーから、泣くな」
 出来るだけ優しく聞こえるよう言って、ぽん、と軽く爆の頭に手を乗せます。
 爆は涙の溜まった瞳をぱちぱちさせて。
「……腹が空いてるんじゃないのか……?」
「そりゃな」
「……食べないと死ぬぞ?」
「オメー泣かせるくらいなら死ぬ方がマシだ」
「…………」
 打って変わって和やかな雰囲気が漂い、二人だけの空間で何かが起ころうとしました。
 そう。
 二人だけなら。
『爆ぅぅぅ〜〜〜〜!!』
 一目散に逃げた山羊達が爆を置いていってしまったという事に気づき、慌てて引き返して来ました。
「爆!無事!?……って、ちっとも無事じゃないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
 ピンクは室内に戻るやいなや叫びました。まぁ、爆は衣服を脱がされるし泣いているしで。
 どう見ても襲われてるしか思えない(というか実際途中までそうでしたし)。
「テッメー!よりによって僕の爆君になにしやがる!!」
 雹(様)は早速刀を鞘から抜き出しました。
「身の程ってモンを知らねーのか!!」
 アリババは男言葉が出てしまってます。
「フクロや!フクロにしてまえ!!」
 ルーシーは過激ですね。
「ちょ……オメーら一人相手に7匹がかりで、それはあまりに卑怯……!」
「……問答無用です」
 一番静かなデッドがある意味一番怖かったりします。
「まぁ、レクイエムぐらいは歌ってあげるから♪」
 早い話がお前死ね、ですね。
「爆殿、大丈夫ですか!?」
 カイは着替えをいち早く持って来て、ピンクと一緒に爆の介抱に当たります。
「おい、貴様ら……」
 爆が止める間もなく、狼はルーシーの宣言通りにフクロにされてましたとさ♪

 で、その後。
 狼は絶対に悪さをしませんと百回くらい誓わさせられてこの森に棲み付く事を許されて。
 その狼の元へ爆は自分のおやつを持って行くのが日課になったそうです♪
「俺、やっぱオメー食べたいなーv」
「じゃあもうおやつ持ってきてやらんぞ」
「う……それは困る……」
 今日も森は平和ですv

という訳で世界倒錯劇場です。オフでは「赤ずきん」と「アラジンと魔法のランプ」を描きました(やっぱり激爆で)♪
小さい頃初めて「七匹の子山羊」を読んだ時、母山羊が狼の腹裁いて子山羊を取り出して変わりに石を詰める場面で「う、うわ!」とか思いましたねー(しみじみ)
「七匹の子山羊」って作者は誰だったかな……グリム童話の頃はドイツ全体が暗かったらしいので必然的に出来る話も暗くなったんだそうで。
実はちょびっと「本当は怖いグリム童話」読みました(笑)