空の色、君の色 V




 ”そんな、貴方の事が”



 足は今にも此処から逃げたそうだが、心は、あるいはそれとも別な所だったかもしれないが、向き合いたいと願っている。
 有り得ないが、今にも身体が2分割してばらばらに行動しそうだった。
 問うべき事がありすぎて、困惑している爆に、炎の方から近づいた。
 元々、そんなに離れてはいなかったので、炎はすぐ側まで来るのに時間は要らなかった。
「忘れ物を、思い出して、な」
 ”何の為に来た”という質問を先回りしての言葉だった。
「忘れ物?」
「そうだ」
 訝る爆に、炎は気づかれないように軽く深呼吸をした。ならない訳がない、と思っていたが、やっぱり緊張しているらしい。
「言いたい事を、ずっと、自分の中に閉じ込めていた」
 炎は肺の中にあった空気を一旦全部出して、ゆっくりとまた息を吸い込んだ。
「お前をを見つけたのも、導いたのも、それは全部、爆が真の血を受け継いでいたからだ。
 ……これは、変えられない事実だ」
 ”真”という名前が炎から発せられた時、爆の身体は解るほどに強張った。



 ずっとずっと、今まで考えていた。
 ピンクやカイは、”炎の後継者”に会いに来た。
 他のGCは、”トラブル・キッズ”に会いに来た。
 自分の後ろにあるものだけを見られるのは、あまり気分が優れるものではなかった。まして、その者達と懇意になればなるほど、ある種の孤独感に似た感傷は強まっていた。
 それでも前に進んでこれたのは、炎は自分を認めてくれた、とう事が支えになってくれてたからだ。
 なのに。
 炎も自分の後ろを見ていて。
 足元が覚束無くなって。
 立っているのかすら解らなくなって。
 それでも自分は”進んでいる”と強靭な精神力で思い込み、進む事が出来た。

 しかしこれも限界が来ていた。

 もう、足が重くて、進めない。



  「それに関しては、もう何も言わない。
 ただ………」


  「爆が、真を受け継ぐ者で良かったと本当に思う」


「………」
「おかげで、お前に、多分早く出会えたんだと俺は思う。勝手だがな」
「炎…………」
 爆は呟くように言った。
「オレで、いいんだな………?」
 おそらく、本人にすら、そのセリフの意味を正しくは理解できない。
 けれど、炎はあぁ、と頷いて肯定した。
 爆は炎に自分を押し付けて、今まで溜めてた、零す事の出来なかった涙を。
 全部、出した。
 炎はそれを黙って受け止めて、少し時間が流れた。
 顔を上げて、跡は残るが零れるのは止まった顔を上げて、真っ直ぐに炎を見て言う。
「炎、オレは、炎の事が………」


 ----好き、



 空は青く澄み渡り、雲は白く通り過ぎ。
 絵に描いたようないい天気。晴れてないのは自分の心だけ。
「……………」
 未練がましくて眉間に皺が寄る。
 いいじゃねぇか、あいつのゴタゴタが済んだんだし。
 ち、と何に対してなのか激は舌打ちをし、ごろりと草原に寝転んだ姿勢を変えた。
「-----わ!」
「んわぁッ!!??」
 突如視界に入り込んだ爆に、それこそ心臓が飛び出る程驚いた。
「何………ッ!何ガキみてぇな事してんだよ!」
「ふん、オレがここまでしないと気がつかないなんて、さては貴様腕が落ちたか?」
 と、誰もが覗く爆のように、不敵に笑ってみせた。
 それを見て、激は爆の中の蟠りが本当に消えたのだと、確信した。
 安堵するのと同時に全く正反対の感情も沸き起こり、奇妙な心境になる。その激の横に、爆は腰を降ろした。
 激としては、あまり爆に側に居て欲しくないのだが。
 もしかしたら、今までの自分への意趣返しなのかもしれない。
「しばらく姿を見せないで、何処へ行ってたんだ?」
「さてね、その辺をぶらぶらと」
 にぃ、と笑う。
 人よりずっと長いだけ生きた甲斐あってか、こういう時の誤魔化しは出来る。
 爆はそうか、としか言わなかったから、果たして信じたのか見抜いたのかは解らなかった。
「……この前----」
 話を切り出したのは、爆。
「炎に会った」
「----そうか」
 ちゃんと返事を出来た自分にに賞賛を送りたい。
 爆はうん、と頷く。
「言いたい事を言った。すっきりした」
 さぁ、と風が流れて、爆の前髪を悪戯に巻き上げる。はっきりと見えるようになった爆は、とても自然に微笑んでいて、見惚れる程で。
 ついさっきまで”しなきゃよかった”という愚かな後悔を吹き飛ばした。
 そうだ。こんな表情を見れるのなら、あれくらいの事、いくらでもしてやるさ。
 腹を括れば楽になる。大概自分も単純だ。
「良かったな」
「あぁ」
 一見中身のない会話が続く。
 爆はゆっくりと、この前の事を反芻していた。



 自分はゆっくりと顔を上げて、言う。自分の胸だけに溜まっていた事。
「オレは、炎の事が、好き----だったんだ」
 炎は、その言葉を知っていたように穏やかに聞いた。
「好きだった、と言っても、嫌いという訳じゃないぞ。何て言うか……そう、違ったんだ」
 爆は間違えないように、よく確かめながら言う。
「最初は、そういう風に好きだと思っていたんだけどな、しばらくして、少し違うなって。どちらかというと、ピンクがオババに向けるのと似ているのかもしれん」
 爆はまだ自分たちの本当の繋がりを知らないはずだが、それも血の成せる業だろうか。
「違う----と解った、という事は、他に見つけたんだな?」
 と、炎が言うと、爆ははにかむに笑う。その様はまるっきり子供のもので、炎は何だか嬉しくなる。
「まぁな」
「良かったら、教えてくれないか?」
「…………もう、感づいているんだろう?」
 それなのに、何で言わせようとするんだ、と今度は剥れた。声や顔に出してしまわないように、最善の注意をして笑みを噛み殺す。
 それでも、と頼むと爆は仕方ない、というように溜息をつく。本当は言いたいのだ、というのは隠して。
「オレの好きなヤツは、な-----」



「あーあ、何か食い物持って来りゃ良かったかな。こんなにいい天気だ」
 激は改めて草の上に寝転がった。


 オレの好きなヤツは、
 いっつもふらふらしているかと思えば、いつの間にか側に居て
 人の話を全く聞いていないように見えて、それなのに欲しい言葉をちゃんとくれて、



 ふと、横からの視線に気づく。
「………何人の顔じっと見てんの?」


 孤独には強いのに、独りでいるのが嫌で、


「俺の顔、何か付いてる?」


 自分勝手なくせに、人の事ばかり気にかけて、


「別に」


 そういう


「ただ、」



 おかしなヤツなんだ。


「激はおかしなヤツだな、と思ってただけだ」
「………どうしてそんな事思うんだよ。しかも少し笑いながら」
「さぁな」



 今日は空が青いし、もし明日は青くなくても、

 またきっと、青くなるのでしょう。




はぁぁぁぁぁ〜、100だ!とうとう100だ!!
もう他の何かに合わせて小説を勘定すんのしねぇ!!やっぱ書きたい時に書く!これ鉄則!!

まぁ、この後の2人はまったりまったりして、特に告白もしないけど、なんとなく両想いなんだ、と感じてずっと一緒に居る。
そんな感じ。
わざわざ好きと言わなくても済む関係。実は自分の理想だったりv
だって面倒臭いじゃん。好きだの嫌いだの、それを確かめ合ったり疑ったり。
そういうのは似合う人がやれば良いのです。ワタシにゃ合わん……

さーて、思うが侭に小説書くぞーvvもうホントやめよ、他合わせ……